2019年1月13日日曜日

一人ひとりをいかす教室づくり、小さくはじめよう


いよいよ3学期が始まりました。みなさんはどのような学習計画を準備していますか?
一、二学期の経験から、子ども達のつながりや助け合う学級文化が生まれてきた頃でしょうか。これまでの学習履歴から、一人ひとりにどのようなレディネスがあり、どんな興味関心があるのかもお互いがわかってきた頃だと思います。

教室にはまだまだ小さなトラブルはあるものの、学習環境は落ち着き、いよいよ学習にじっくりと目が向けられる時期。子どもたち一人ひとりの学習やその理解差に目が届くゆとりが生まれる三学期です。一斉に全員が同じスピードで理解ができるという幻想を一度脇に置いて、一人ひとりに焦点を絞った教え方にチャレンジしてみませんか。

でも、いきなり個々のペースにあわせた学習を管理するのはなかなか想像に難しい。そこで、これまですでに育ててきた学習環境をベースにして、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』★を参考にして、私たち教師が安心して子ども一人ひとりに焦点を絞った教え方を提案します。

第9章「一人ひとりをいかす授業を可能にするクラスづくり」には、まず「小さく始める」ことが紹介されています。

"一人ひとりをいかす取り組みは、意味のあることを各自が静かにおこなう「地固めの活動」を生徒全員にやらせることからはじめるのがいいでしょう"(P.182)

"生徒全員が完全に静かに一つ(あるいは複数)の地固めの活動に取り組めるようにすることは、個人や小グループの生徒を教師が選んで教えられるようにするための地固めになるのです。〜最初のうちは、一部の生徒には地固めの活動に取り組んで、他の生徒には話し合いや協力する必要のない異なる課題に取り組ませるといいでしょう。"(P.183)

学習活動中は、静かに取り組むことが基調となります。騒がしい中では集中できません。教師も安心して子どもたちに学習を任せることができません。これは教師からの規律で静かにするというよりは、お互いの課題に集中するために、お互いが静かな学習環境をつくる責任を一人ひとり子どもたちに渡していくことを意味します。

つまり、全員が同じ課題に取り組む経験を得て、それぞれの課題に沿った学習へ発展させていくのです。ふりかえりをジャーナルに記入する、一人ひとりが好きな本を読む、国語の漢字練習をする、算数の計算問題を解く、図工でスケッチを描くといった、全員が静かにそれぞれのペースでできることからはじめます。静かな学習環境が整ったとき、教師が個別に教えに介入できるからです。また、一人ひとりが異なった課題に少しずつ取り組むことで、全員が常に同じことをやらない意識づくりと、自分が取り組んでいる課題の大切さを知ることができます。

"例えば、小学校なら、国語の時間に生徒全員が同じ本箱から選んだ本をペアで読んでいる状態をつくります。読みのレディネスによって分けられた部屋の読書を10分間した後に、生徒全員を1カ所に集めて一つの話をみんなで聞き、クラス全員でそれについて話し合います。"(P.183)

まだ日本には、読みのレディネスによって分けられた本棚はきっと多くありません。教師があらかじめ難易度別(絵本から、簡単な本、文庫、さらには小説など)に分けた本を選書しておいて、一人ひとりと今読んでいる本や興味と照らし合わせて相談し、手渡していくことからはじめてみるのがおすすめです。

算数においても計算技能の習熟場面で一人ひとりをいかす教室づくりを「小さくはじめる」練習にはもってこいです。そんな算数実践を以下に紹介します。

ここでは、特に「何をいかす?」(内容・方法・成果物・感情・学習環境)★★をもとに「小さくはじめる」取り組みを紹介します。

一人ひとりをいかす計算学習では、学習内容の計算技能の習熟場面をいかします。そこでは、その取り組みの速さに差が生まれやすいものです。一斉指導のもとでは、習熟の早い子はどんどん進むことが許されず、遅い子は常にプレッシャーにさらされてしまいます。

そこで一人ひとりをいかす学習方法として小さくはじめるには、3つのコース別学習が考えられます。ホップ、ステップ、ジャンプコースと名づけられた3コースには、教科書やドリル教材からそれぞれ難易度別の4問ずつ用意します。例えば習熟にかけられる単元で5時間分を学習計画表にして、子ども達に配布し共有します。

子どもたち全員がまずは全てのホップコースの4問ずつからはじめる約束です。最初に全員が5時間分をカバーしてしまうことで、計算のやり方を学び、学習の見通しをもつことができます。習熟が遅い子にとっては、まるでパズルの全体像がわからずにつくっているようなものです。理解する前に、目の前の多くの練習問題につまずいてしまい、達成感を味わえずにやる気を失い、ずるずると停滞してしまう。ホップコースで見通しをもてるように少ない問題数で先に単元全体を学び、ステップコースでより一層の習熟へ時間を当てることは、学習の苦手な子にとっては安心して学べる環境づくりとなります。理解の仕方は様々ですから、子どもたち一人ひとりが異なる学習に慣れてきたら、進め方を各自が選択できるとよいでしょう。

一方、習熟の早い子にはホップ、ステップ、ジャンプコースを終えるだけでなく、基礎的な内容から、より発展的な課題へ取り組める機会が用意されています。これまでの「アハ!」とすいすい解ける楽しみから、虫食い算や問題づくりといった発展課題を用意しておくと、「う〜ん」と時間をかけて考える悩む楽しみへと算数の理解が変わっていきます。

学習の成果物はノートに現れます。計算を解いたら、まずは自分で採点します。最初の内は、そのノートを教師が一人ひとりをチェックします。そこで、早く進めようといい加減に採点しようとする子や理解が曖昧な子、子どもたち一人ひとりが正しく採点できているか、どこにつまずきをあるかを確かめ、補助問題をさらに渡したり、見とどけたりしていきます。

学習計画表に照らし合わせながら自分で学習を進めることによって、子どもたちは見通しがもて、やる気が高まります。終わった課題を計画表に塗りつぶすことから、自分で進める自信を持つことができます。できるようになった満足感と達成感で感情が満たされるようです。

学級の児童数が多い日本において、40人分の学習計画は用意できませんし、そもそもその必要はありません。教師1人で対処できる枠を遙かに超えているため不可能です。まずは、大まかにコース別にすることから練習しはじめ、ゆくゆくは6〜7コース(この本ではコーナーやセンターという実践が紹介されています)へと広げていけるようみてはどうでしょうか。

一人ひとりをいかす教え方を続けていくと、子どもたちの理解の早さは教師にとって問題にならなくなります。みんな違っていることが当たり前のようにわかってきます。すでに、一、二学期の経験から子どもたち一人ひとりには、それぞれ異なったレディネスがあり、誰にも一人ひとりの学習ペースや理解の仕方があり、教師から全員にその支援が必要なことが気づけることでしょう。一人ひとりをいかした学びは、子どもたちがじっくり理解しようと安心してゆっくり学んだり、意欲的にどんどん進めてみたり、学習を自分で管理し、自分で分かって進もうとするオーナーシップ(学習とは自分のものという意識)を育てていくのです。

新学期を迎え、新しい気持ちで、新しい学習環境づくり、授業づくりがスタートしたかと思います。それをぜひ一人一人をいかす形で具体的な実践に挑戦してみませんか?ぜひ取り組みを教えてください。


『ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方』キャロル・アン・トムリンソン (著)、山崎 敬人、山元 隆春、吉田 新一郎 (翻訳)
(それの一人ブッククラブの記録は、http://igasen.blog22.fc2.com/の2018年の年末から2019年の年始にかけて、アップされています。)

★★
P.107にある一人ひとりをいかすための三つの視点「何をいかす?」「どういかす?」「なぜいかす?」が参考にするとよいでしょう。詳しくはPLC便りを参考してください。ただし、これはすべての視点をすべての授業でいかすものではありません。

PLC便り「一人ひとりをいかす教え方」って、どういう教え方?」 
https://projectbetterschool.blogspot.com/2017/07/blog-post_23.html

0 件のコメント:

コメントを投稿