2018年11月18日日曜日

フィードバックは与えて終わり?


以前のPLC便りで「学力向上に効果的なフィードバックとは?」では、フィードバックがカンファランス場面(個別指導)において、生徒の学びに効果が高いことをお伝えしました。

今回は、フィードバックをしたその後についてです。フィードバックは与えて終わりではないということです。

教員初任者の頃、先輩教師に「見とどけ」が大切だと何度も繰り返し指導されました。子ども同士のケンカや下校班でのトラブルなどでは、1週間後にもう一度子ども達を集めてその後の様子を聞いてみる、問題となっていないか確かめ、「見とどけ」ることでした。
つまり、問題が起こったときに、教師のフィードバックしたことが、相手にとってどのように受け取られたか、またどのような効果があったのかを確かめることです。
これは生徒の学びの質を高めるためにおけるフィードバックでも同様に重要なことです。★
フィードバックというと、教師から一方的に与えるものと捉えられがちですが、相手の反応があってこそのフィードバックです。これは、決して教師からの一方的なフィードバック量を増やすことではありません。ですが、一方的にその量を与える授業はよくみられがちです。
体育の授業では1コマあたり、100回以上の教師からの声かけで授業の雰囲気が変わり、その中でも矯正的なフィードバックが効果的であるといった研究授業もあります。ここでは、その矯正的なフィードバック(例えば、バスケットボールをパスするときは一歩足を前に出して投げ、手首のスナップを使おう)が、学習者にどう受け取られ、学習者がどう試みようとされているのか、フィードバックのその後の質が問われているにもかかわらず、与えることに集中してしまうのです。

教師によって与えられるフィードバックの多くは、学級全体に向けられており、そのほとんどをどの学習者も受け取っていません。なぜなら、どの学習者もそのフィードバックが自分に関係あると考えていないからです(カーレス、2006★★)。

一斉講義型の授業において、教師による一方的な全体への説明だけでは、やはり個々の生徒へは届いていません。自分のこととして受け取ってくれていない事実がここにあります。これはワークショップ授業におけるミニレッスンにおいても同じ問題をはらんでいます。だからこそ、個別カンファランスでていねいに見とどけることが必要です。

一般的に教師はいかに効果的にフィードバックを与えるのかという視点では★★★、よく考えています。しかし、それが学習者にどう伝わっているかについてまでは、及んでいないことも多くありそうです。フィードバックは与えて決して終わりではなく、「相手にとって」どう受け取られたのかまでしっかり最後まで見とどけることなのです。

フィードバックとは、学習者が初心者から有能に進歩していく過程で与えられるものです。教師は、学習者の今を見て、フィードバックを効果的に与え、見とどけをするところまで求められます。これはたんにテストの点数を上げるための学力向上ではない、本来の学びの質そのもの上げるために必要なことです。教師が学習者にフィードバックし関わり続けること、支援し続けることこそが、形成的評価に支えられ、学習の質を高めるのです。



★「教師は、学習の中で生徒が今いるポイントに適切にフィードバックを与え、フィードバックが適切に受けとられたことを示すエビデンスを求めている。」『学習に何が最も効果的か メタ分析による学習の可視化教師編』ジョン・ハッティ P.185
より

★★
Carless, D. 2006. Differing perceptions in the feedback process. Studies in Higher Education 31, no. 2: 219–33.

★★★
認知面を伸ばすには、学習の3つのレベル向けてフィードバックすることです。
レベル1 浅い学びとしての基本的な知識・技能(かけ算九九の仕組みを理解しているか、覚えているか)
レベル2 深い学びとしての考え方や学び方(かけ算九九とこれまでの筆算の形式をつかって、2桁×2桁の筆算を自分でつくろうと、問題解決しているか)
レベル3 自分をふりかえるメタ認知(自分の問題解決をふりかえり、取り組み初めの気持ちや自信、どこで解法のアイデアがひらめいたかなど)
目指すべきフィードバックは、レベル1の知識・技能からレベル2の考え方・思考法へ、さらにはレベル3のメタ認知へと、より高度なレベルへと適切に与えていきます。
①「今、どんなかんじかな?(What?)」とその学習の現状の進み具合を確かめます。
②「何ができるといいの?(So what?)」とその学習の目的や到達度を問いかけ、現状とのギャップを見つけます。
③「じゃぁ、何をしようか?(Now what?)」とそのギャップを埋めるために、具体的に次の行動目標を示すことです。この際、レベル1〜3に応じて、知識・技能を理解するためのアドバイスや、問題解決のプロセスの仕方への援助、ふりかえりの視点をフィードバックしていきます。

0 件のコメント:

コメントを投稿