2018年8月12日日曜日

ボーナス(外発的動機付け)で学力はあがるのか?形成的評価と見通しについて



先日、大阪市吉村洋文市長が、学力テスト結果を教員の人事評価に反映させ、ボーナスの分配を示唆しました。
大阪市の教員と話をする機会があり、その後の様子を聞かせてもらいました。「ぼくらは評価や給与のためにやってまへんで。なんか、バカにされてるし、やる気なんておこりまへんで。隣の学校ではすでに二人の教員が退職願を出しましたし」と憤りを聞かせてくれました。
人事評価やボーナスで人を動かそうとする外発的動機付け(行動の要因が評価・賞罰・強制などの人為的な刺激によるもの)に頼ることは、全くの知識の不調としかいいようがありません。★
人がどういうときに、学び、行動するのか、長いスパンをもって考えてほしいものです。人の行動を即時的な賞罰(ボーナスや人事評価)でつるのではなく、「かかわりつづけること・支援し続けること」で学校現場を変えていくこと、市長をはじめ管理職ひとりひとりがその学習モデルを見せていかなければなりません。現場の教員を関わり続ける形成的評価で、安心して働けるように支援し続けてもらえる策を提案してほしいものです。

一方、別の研修でのこと。特別支援教育の世界では、「形成的評価することは外発的動機付けであり、ご褒美のようなもの。扱い方は十分に気をつけなければ」という話も聞きました。ここでは、子ども達に、褒め言葉やアドバイスで動機づけようとすることにはやや慎重なようですが、形成的評価とはごほうびのようなものなのでしょうか
その場かぎり、または、その日かぎりの行動変容を願ってのかかわりでしたらきっと、教師からの褒め言葉やアドバイスといったフィードバックは、外発的動機付けとして機能してしまうことでしょう。子ども達の教師へ依存がいっそう増し、その教師からの支援・かかわりがもらえないときには学習へと向かえないようになってしまいかねません。
しかし、その形成的評価は一回性のかかわりにおいていえることです。長い時間軸で見直してみれば、やはり教師が関わり続けること、つまり、形成的評価で支援し続けることは、ゆくゆくは子どもの中に自己評価できる力を育てていくものです。次第に教師からのフィードバックといったかかわりを減らしていき、学習者自身が自律して行動できるような足場を外していく、そんな見通しがなければいけません。★★

大阪市に見られるボーナスも長い視野で考えたとき、本当に学校現場の教員に必要な支援でしょうか。ここにも、これまで指摘し続けてきた「一回性」の研修と同じように、長いスパンで見通しを持って現場を支援し続ける形成的評価の時間軸が抜け落ちていています。
自己評価できる自律している子を育てていくこと。そのためにも見通しを持った形成的評価が必要なのです。

★人がどういうときに内発的動機(行動要因が内面に湧き起こった興味・関心や意欲によるもの)から行動するのか、この本がぜひおすすめです。それは、決してエサで釣るようなものではありません。「人を伸ばす力内発と自律のすすめ」著エドワード・L・デシ他
★★学習者に対して、形成的評価の目指すところは「成績をハックする評価を学びにいかす10の方法」著:スター・サックシュタイン 訳:高瀬裕人・吉田新一郎がおすすめです。
8章「振り返ることを教えるーメタ認知能力をもった学習者になれるように生徒をサポートする」と、
9章「生徒に、自分で成績がつけられるように教えるー成績をつける権限を生徒に譲り渡す」に具体的な案が載っているので、必読です。

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