2018年7月15日日曜日

教育委員会と同じ問題を抱える学校現場にできることはサーバントリーダーから

本気で組織を変えようと思っていても、立場や役職がないと容易にはなかなか変えられず、知らず知らずのうちに服従していってしまう、そんな心理を前回は書きました。

http://projectbetterschool.blogspot.com/2018/06/blog-post_17.html 

先日、指導主事と話をする機会がありました。そこでは、市行事の後のゴミ拾い、台風への対応、研修受付への出張に加え、情報交換と称した度重なる飲み会など、今、学校現場で叫ばれている働き方改革とはほど遠いものでした。「できることから新しく、少しずつ何かを変えていく草の根からの改革も難しそうです。例年続けてきたことを、忖度しながらも維持することで精一杯といったところでしょうか。


これと同じようなことが学校現場の職員室においても当てはまってしまいます。「昨年度同様、例年通り」を合い言葉に、みんな右向け右の学年団は、職員室を見回すと見られます。


廊下の掲示物は特に学年での共通理解が顕著に現れてしまう良い例です。それぞれの教員のもつ願いや思いのある異なる掲示物が貼っている学年はここ数年、見たことがありません。驚いたことに、低学年の廊下に掲示されていた児童の自画像が、みんな同じ顔だったとうこともありました。鼻の位置も、顔の大きさも体の向きさえも!そこを深夜に通るとなんとも不気味な感じを醸し出していました。子ども達はどんな感想かといえば、「みんなとおんなじかおがかけて、うれしかったです」でした。何か、大事なことが抜け落ちてしまっています。


廊下の掲示物をそろえることに始まり、行事や授業をこなすことで精一杯。または、そろえることで安心してしまい、何のために取り組んでいるのか、どんな子ども達を育てたいのかが抜け落ちてしまっています。


困ったことに、そういう学年団こそが、どこか満足げで学校に大きく寄与していると勘違いしてしまっています。大人はそれでいいのかもしれませんが、子どもはたまったものではありません。本当は好きな絵を自分の思いをもって、好きなように描きたいのが子どもですから。


学校現場には団塊の世代がぬけて、希望を大いに持った若い先生たちが大量採用されました。しかしこのような学校組織では、新しい実践に取り組もうとしても、管理職や学年主任から目をつけられ、「学年の輪を乱すことはやめてほしい」「言っていることは分かるが、それができるとはとうてい思えない」「保護者からのクレームの対象となる」と、指導されてしまいます。「これまでやってきていない」という理由で、「例年通り」を継承する行政組織のように、教育現場では入れ子のように実践の自由さえも封印される若手教員の悲鳴が聞こえてきます。★


このような学校現場では「例年通り」がまかり通り、何か新しく変えていくことができないのでしょうか。思いのある(または、気の合う)学年主任や管理職と運良く出会えることを待つしか未来はないのでしょうか。または、自分がその立場や役職につくまで、ガマンしながらもひっそりとやり過ごすしかありえないのでしょうか。


学校現場をよりよく変えていける取り組みは、まだまだできることがたくさんあります。学年内でそろえようとすることは、不安の表れです。保護者からの指摘や管理職からの評価など、自分を守ろうし、身動きができない状態にいます。そこを情熱で押し切ろうとたり、正論で説得しても対立しか生まれません。学年主任や管理職の持つ不安やストレスを軽減できるよう、こちらからサポートすることから始めてみるのはどうでしょうか。


明日の授業を一緒に考えたり、単元の見通しやアイデアを提供したり、もちろん事務仕事も率先してやっていくこと。時にはその先生が得意とする実践を一緒にやってみる中で、その先生の持つ思いに触れるのも大きな支援となるはずです。よりよい関係を築いていく中で、次第に耳を傾けてくれるようになってくるはずです。このような支援的な関わりを、サーバントリーダーシップと言われています。


このようなリーダーシップをアメリカのロバート・グリーンリーフ博士は「サーバントリーダー」と呼びました。リーダーはまず相手に奉仕し(サーブし)、その後、相手を導くものであるという考え方に基づきます。このようなリーダーシップは立場に影響されずとも、発揮することが可能です。もちろん、子ども達と関わる際の授業のカンファランス(個別指導)でも、大いに役に立ちます。


“サーバントリーダーは、第一にサーバント(奉仕者)である。はじめに、奉仕したいという気持ちが自然に湧き起こる。次いで、意識的に行う選択によって、導きたいと強く望むようになる。(中略)しっかり奉仕できているかどうかを判断するには、次のように問うのが最もよい。奉仕を受ける人たちが、人として成長しているか。奉仕を受けている間に、より健康に、聡明に、自由に、自主的になり、みずからもサーバントになる可能性が高まっているか”
ロバート・K・グリーンリーフ著「サーバントであれ奉仕して導く、リーダーの生き方」(Kindleの位置No.63-69)★★


今、先生方はこういった高度なコミュニケーションのやりとりができなければ、本当に学年を、学校を変えていこうとする仕事にまでなかなかたどりつけません。しかし、学年の先生とつながり、学年主任や管理職の力になれること、支援し続けるはある意味、自分の学級だけではなくその学年の先生達の子ども達にも影響を与えています。そう考えると、サーバントリーダーシップは、役職を越えて学校を変える可能性があります。


★昨今では、「学校スタンダード(例えば、呼ばれたらハイッ!と返事する。授業の問題は定規を使って四角線で囲むなど)」という、各校の例年通り、どの学年でも同じ指導へとするルール作りが広がっています。たしかに、若い先生方にとっては、ある一定のやり方である「学校スタンダード」は必要でしょう。しかし、全てにおいてそのような上意下達のルールを押しつけることがよいのでしょうか。管理的でありすぎず、子ども達に出会う大人の1人として、先生こそが多様な存在であってほしいものです。


★★
サーバントリーダーを振り返る視点に以下の10個あります。①傾聴、②共感、③癒やし、④気づき、⑤説得、⑥概念化、⑦先見力、⑧執事役、⑨人々の成長への関与、⑩コミュニティづくりなど。興味のある方は「サーバントであれ奉仕して導く、リーダーの生き方」ロバート・K・グリーンリーフ著が参考になります。また、サーバントリーダーシップについて詳しく知りたい方は、グリーンリーフの「サーバンドリーダーシップ」が厚めの本ですが、参考になります。

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