2017年12月10日日曜日

AI時代、読む力を養え


今日は、上記の新聞記事を紹介し、その感想・コメントを募集します。
何でも、感じたこと、いいと思ったこと、おかしいと思ったこと、疑問・質問などを
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タイトルは、上のとおりです。
書いたのは、日経の論説委員長の原田亮介さん。
サブタイトルは、「無償化より教育の質向上」

私が読んだのは、
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24153540R01C17A2TCR000/
(核心 2017/12/4 2:30 日本経済新聞 電子版)です。

 先の総選挙をはさんで政府が実現に動いている教育の無償化には、疑問点が多い。貧しい世帯の学ぶ機会の確保をいうなら、経済力のある家庭までタダにする必要はなく、待機児童対策にお金を回した方が有益だろう。
 政府の「人生100年時代構想会議」という看板が泣く。人生100年というなら、人工知能(AI)に代替されるのでなく使う側の人材をどう育てるか考えたらどうか。
 「最初のテストで子どもたちの5割くらいしか正答できない問題があって、がくぜんとしました」。埼玉県戸田市教育委員会の渡部剛士教育政策室長はこう振り返る。
 同市の教育目標の一つは「すべての生徒が中学校卒業段階で教科書を正しく読めるようにする」。簡単にみえて「全員」が「正しく読める」のは難しい。最新の学力調査で戸田市が小中とも県内ほぼトップの成績であってもだ。
 教科書を正しく読む力がないと自学自習ができない。大学生や社会人になって、新しい能力を獲得したり、能力を高めたりする土台がない。それではAIに負けない人材にはなれないだろう。
 戸田市の小中生が受けたのはリーディング・スキル(RS)テストである。RSは教科書や新聞、契約書などを正確に迅速に読み取る能力のことだ。例をあげよう。
 【問題1】
 左記の文を読みなさい。
 幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
 右記の文が表す内容と左記の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。
 1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
 答えは「異なる」だが、全国平均の正答率は中学生で57%、高校生でも71%だ。受け身形を見逃すと間違える。
 【問題2】
 左記の文を読みなさい。
 Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
 この文脈において、左記の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
 Alexandraの愛称は(  )である。
 (1)Alex(2)Alexander(3)男性(4)女性
 答えは(1)。正答率は中学生38%、高校生65%だった。愛称を聞く質問なのに、性別を答える勘違いが意外に多い。
 【問題3】
 もっと正答率が低いのが、図に掲げたメジャーリーグ選手の出身国の問題だ。正答率は中学生でわずか12%、高校生でも28%だ。集合の内数になじみがないのだろうか。
 「7~8割正答できないと、これからホワイトカラーとして働くには厳しいだろう」。こう話すのは国立情報学研究所の新井紀子教授だ。「2021年には18歳人口もがくっと減る。企業社会の実務を担うボリュームゾーンが瓦解すると影響は大きい」
 他の学者や企業、学校などと組んでRSを研究してきた。テストは今年夏までに、全国で中高生ら2万5千人以上が受けた。
 新井教授は、東大入試を突破するのを目標に人工知能の「東ロボくん」を開発したことで知られる。東ロボくんは16年度のセンター試験模試で偏差値57.1を獲得し、私立大の88%で合格する可能性が80%以上という判定だった。
 それでも非定型的な仕事では文意を読み取る人間にかなわない。「読む力を測り、向上させる」。それがRSテストを開発した目的なのだ。
 これまでの分析でテストの結果の良しあしは、高校では入試偏差値と強い相関関係がみられるという。中学生など年が若いうちに読解力をつける努力をすると、正答率も向上することがわかった。
 予算の確保など課題は多いが、新井教授は「全国の中学1年全員に受けてもらい、弱点を見つけ出し、読む力を向上させたい」と意気込んでいる。大学や会社などが、就職指導や入社試験などに採用することも考えられるという。
 冒頭に紹介した戸田市では12の小学校、6つの中学校に勤める教師の4分の1がボランティアで集まり、RSの問題づくりや対策を練っている。「今まで、日本語を正しく読み取れないことと学力とを結びつけて考えていなかった」(新井宏和指導主事)
 指導法も変わってきた。問題文を音読して文意を考えさせる、図を描くよう指導する、省略された主語を考えさせるといった試みが続く。普段の学力向上にもつながるとの手応えも感じ始めている。
 教育現場では新指導要領でプログラミングなど新しい授業も始まり、RSが入り込む余地は小さいように見える。それでいいのだろうか。
 学歴社会の変遷に詳しい、関西大東京センター長の竹内洋氏は「必要な知識や技能が不足しているのが大半(の学生)なのに、『古い学力はいらない』というような議論が幅をきかせ、それに迎合する風潮がある。教育ポピュリズムを警戒すべきだ」という。
 19世紀初頭の英国では機織りに自動機械が導入され、職を失った労働者が機械を打ち壊す「ラッダイト運動」が起こった。米国でいま深刻な社会の分裂が広がるのも、IT(情報技術)の普及でホワイトカラーの雇用が揺らいでいる影響が大きいといわれる。
 AI時代の到来によって、日本も同じ道をたどる恐れがある。社会の安定を保つには、教育の質を高めることが、遠回りに見えて一番の早道ではないだろうか。


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