2017年10月14日土曜日

学びの可能性をひらく授業づくり


先月末のブログには、「教科の本質を追究する授業づくりとは」を書かせてもらいました。

 今回はこれに関連する本を紹介したいと思います。
     

 最近発売された『PBL 学びの可能性をひらく授業づくり』(伊藤通子・定村誠・吉田新一郎訳/北大路書房)です。

 PBLとはProblem Based Learningの略称で、「現実的な問題に基づく学習」とよばれるものです。同じPBLでも、Project Based Leaningもありますが、今回取り上げるのはProblem Based Learningです。

 このPBLの定義は、同書によると次の通りです。(同書p.18)
 
複雑な現実の問題に対する探究とその解決を中心に据えて集中して取り組む、体験的な(身も心も使った)学びです。PBLは、カリキュラム編成と指導法という補い合う二つのプロセスからなり、次の三つの大きな特徴をもっています。




・学習者は、問題をはらむ状況の中で、利害関係者として問題を解決する。
   
・教師は、学習者が自分と問題のつながりを感じながら学べるように、適切な方法を用い 
 て包括的な問題を中心に据えてカリキュラムを編成する。
   
・教師は、学びの環境を整え、学習者の思考をコーチし、探究活動をガイドして、深い理
 解へと促す。
   
先月のブログで紹介したワシントン州ウォータービル小学校での3センチの角をもつトカゲ(学名・サバクツノトカゲ)を研究対象とした理科授業の実践のように、教室内にとどまらず、本物の学びを展開することができます。「その分野の専門家」のように、教科の本質を子供とともに深め合う授業が可能になる手法です。


このPBL1960年代にカナダのマクマスター大学医学部で、大学での学びが医療の臨床現場での実践にうまく結び付かないという課題を克服するために考え出されたのがその出発点のようです。ですから、当然のようにその手法は「構成主義的なアプローチ」を取ることになります。その特徴には次のようなものがあります。(前掲書p.44)
    ・学習者にとって意味のある広範な役割や問題を学びの中心に据えること


・学習者が事前にもっている知識の周辺に新たな学びを構築すること
   
・複雑で現実的な状況の中で学習者の学びを支援すること

・学習者の視点を探り、把握すること  ( 以下略 )

このように見てくると、このPBLは、次期学習指導要領において求められている「主体的で対話的な深い学び」を実現するためにかなり効果的な手法であると言えます。

この本には、PBLを実践した現場の先生の声が次のように紹介されています。(同書p.32)


生徒たちから質問されたときは、すぐに答えを返そうとするのではなく、むしろその質問をじっくりと振り返り、生徒たちにそれをまっすぐに投げ返すことに慣れなければなりません。そして、それはそんなに簡単なことではありません。 (ドッズ先生)

 
    これから「深い学び」をどうやって実現していこうかと考えておられる先生方に、ぜひこの本をお薦めしたいと思います。           

 

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