2015年7月19日日曜日

アドバイザー制について


「効果10倍の学びの技法」(吉田新一郎・岩瀬直樹2007/PHP新書)p.224に次のような文章があります。

 ■ホームルーム制からアドバイザー制へ

日本の中学・高校でいつからホームルーム制が導入されたのかを、私(吉田)は知りません。しかし、それが全国の中学・高校に浸透し、確実に毎日実施されていることは知っています。その「当たり前」と思って行っていることは、どれほど機能しているのでしょうか?

ホームルーム制はいじめや不登校の問題をはじめ、学校が抱える様々な問題を引き起こしている一つの要因だとして、アドバイザー制度を導入したのは、ホームルーム制を始めたアメリカでした。

 アメリカの場合は、中学や高校において教科選択制が日本よりも進んでおり、朝や帰りに5~10分程度ホームルームとして顔を合わせたら、あとは生徒たちは自分の取っている教科の先生がいるクラスを歩いて回ります。したがって、選択制の中でのホームルームでは生徒同士や教師と生徒のコミュニケーションが図られず、そのことが様々な問題を生み出す引き金になっていると考えられ始めたわけです。生徒の中には「この学校で自分のことを知っている先生は一人でもいるのか?」「自分のことを気にしてくれている先生や生徒はいるのか?」と疑問を持つ子どもも出てきて、それが様々な問題を引き起こしているというわけです。この悲しい状況は、クラス単位での移動がアメリカよりは多い日本でも、生じてきているようです。・・・・

 この話を取り上げたのは、また悲惨な事件が起きたからです。岩手県の中学校2年生が鉄道自殺をしました。まだ、事件の詳細はわかりませんが、これまでの報道で知る限りでは、防ぐことができた事件だと思います。

 担任にSOSを出しているにもかかわらず、そこで解決の糸口が見えなければ絶望的です。

 たとえ、アドバイザー制を実施していたとしても、そのアドバイザー役の先生の感性が鈍っていれば、助けにはならないでしょう。しかし、担任以外に相談できる存在が校内にいることは校内で疎外されている子どもたちにとっては大きな存在だと思います。

    かつて、私が最初に教頭として赴任した中学校で、実験的にこの「アドバイザー制」に取り組んだことがあります。校長を始めとして、「教員」と名のつく人すべてをアドバイザーにして、教員一人当たり20名前後の生徒を担当することにしました。今思うと、かなり強引なやり方だったと思います。幸いにして、その学校の職員の人間関係はとても良好でしたので、どの先生も前向きに協力してくれました。

 結果として、管理職もそれまで全く関わりのなかった生徒たちとも交流することができ、彼らもまた担任以外の先生と話をする機会が増えて、校内はそれまで以上に活気に満ちたものになりました。当然のこととして、学校全体が風通しの良い環境になり、いじめや不登校の件数もそれまでより減少しました。このシステムは残念ながら、3年で終わってしまいましたが、「アドバイザー制」の効果は十分に検証できたと思います。

 教員定数が増えそうもない(それどころか財務省は4万人削減する計画を発表しました)現状でも、何とか知恵を出して「自分のことを気にしてくれている先生や生徒はいるのか?」と思うような生徒を少しでも減らしていくようにしたいものです。

 

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