2011年10月9日日曜日

Professional Learning Community について


 私(白鳥)がこのPLCという言葉に出会ったのは、2006年のアメリカ・ジョージア州でした。そのstudy tripで、郡の教育委員会、小中高校を見学させてもらいましたが、その行く先々でこの言葉に出会いました。


 それ以前に、吉田さんの著書の中で紹介されていた本の1冊に「Professional Learning Community at Work」(R.DuFour & R.Eaker)がありました。


この本の至るところに学校改善につながるヒントが散りばめられているのですが、特に第10章「Teaching in a Professional Learning Community」の要約の部分がお薦めです。


教員認定・評価にかかわる団体が「プロの教師として認められる条件」として次の項目を紹介しています。



教えることよりも、学ぶことを重視している


意味のある学習内容に子どもが主体的にかかわっていくようなカリキュラムや指導法をデザインする


カリキュラムや評価法を改善していくために、子どもたちのすることや作り出すものに焦点を当てる


学校規模の問題と同様に教室での指導や学びについて同僚と協力している


自分が教えることから学んでいて、教育研究の成果も使いこなしている  など


・・・・・        (参考: 『校長先生という仕事』193〜194ページ)



 私の教員経験からすると、「教えることよりも学ぶことを重視する」ことは難しいことだという実感があります。教員になって5年もすれば、一通りのことはこなせる状態になっています。「教える」ことには慣れてきても、自分自身が「学び続ける」ことは難しいことです。なぜなら、そんな苦労はしなくても、「教える授業」はできてしまうからです。


 ただそんな授業が受け入れられる学校ばかりではありません。中学校では、当然のように生徒の実態を無視した「教える授業」を押し付けている学校は、間違いなく「荒れた学校」になります。私も以前指導主事をしていたときに、「荒れた学校」の授業を参観した経験があります。そのときの授業は、まさに「これでは生徒が荒れるのも無理はない」という、生徒にとって魅力のない授業ばかりでした。


 その後、その学校も「教えることよりも学ぶことを重視する」教員が増えたので、「生徒にとって魅力のある授業」が増えました。もちろん、それだけで学校がよくなったわけではありませんが、教職員が「学び続けること」の大切さをしみじみと感じました。


 また、2番目に掲げられている「意味のある学習内容」は、カリキュラムづくりの大切さを意識する項目です。アメリカの教育学者であるキャサリン・ルイスさんがその研究の中で指摘しているように、日本の教員は「カリキュラムづくり」に関しては概して意識が低いという事実があります。(出典;Lewis,Catherine C,Lesson Study:A Handbook of


Teacher-Led Instructional Change Research for Better Schools,2002


 それは、ナショナル・スタンダードとして「学習指導要領」があり、さらに教科書会社の作成した計画・指導内容の詳細なプランが用意されているという事情があるので、特に工夫しなくてもそれらを利用すれば一応授業はできてしまうということがあると思います。


 それに対して、アメリカの場合は連邦や州の履修基準はあっても、具体的な授業はその学校に任されており、現場の教師は日々の授業の内容を工夫することに熱心だということです。


 ただ、今の子どもたちの持っている情報量は昔の子どものそれとは比較にならないほど多いと思います。それを前提にした上で、その知識を再構築する(いわゆる構成主義の考え方)ことが求められていると思います。それには、「意味のある学習内容」をどのようにして作り上げていけばよいか、ここがポイントです。


 そのためには、やはり「教師が学び続ける学校」をどうやって作り出し、維持していくかが重要です。この目標を達成するには、いろいろな方法が考えられますが、まず手を付けるところは「校内研修」です。



  


(以下、メルマガの続き)



「校内研修」というとだれもがすぐに頭に浮かぶのは、「研究授業 / 授業研究」です。ただ、ここではそれについては触れません。



それでは、どのように研修を進めればいいのでしょうか。



具体的には、以下のようなやり方を考えました。



【具体的な手法】


1 研修形態   2~8人程度までのグループ


        この人数だと「学年教師集団」が最適かもしれな 


        い。学年主任又はそれに代わるリーダーがその学 


        年の中心になることも考えられる。


        年度初めと終わりに全体での研修会をもつ。


        (オープニングとクロージングのワークショップ)



2 活動内容  ・読書会   ・メーリングリスト


        ・メンタリング・ケーススタディ


        ・ジャーナル ・アクションリサーチ


        ・相互授業参観・他校訪問  などから選択



3 進め方   ・自己研修計画に基づいて進める


        ・年3回の定期面談の際に進捗状況を管理職が確認 


         する


        ・年度末に自己評価を行う(できればA4・1枚程度 


         に研修報告をまとめて、提出する。係りはそれ 


         をまとめて印刷して、全員に配布する)



1~2は現在私の勤務校で進行中ですが、3はまだプランのみです。


もっとも、「研究授業/授業研究」が皆無ではなく、若手教員のために学校全体で年2回の全体研修の機会は作りました。


「こんなやり方で本当に大丈夫なのか」と疑問をお持ちになる方も多いと思いますが、前任校での経験をもとに、あえてこのような手法に挑戦することにしました。


学校「全体」という形にこだわるよりも、「学びの内容」で勝負するということでしょうか。


全国どこでも同じでしょうが、年々放課後のゆとりの時間がなくなっています。


また、放課後に研修をしていられる中学校ばかりではありません。生徒指導で走り回る忙しさの中で、学校全体の「研修」がいくら建前としては必要だと思っても、それを前面に出しにくい中学校もあります。


そうした状況下にあって、「全体」よりも「部分」での研修を活性化させるほうが、現実に即した合理的なやり方だと思います。


 吉田さんの著書「校長先生という仕事」のp.183にこういう件があります。


 


 「信頼・協力関係は、何も教職員が一丸となって築く必要はないのである。信頼・協力関係に不可欠な「自分の言いたいことが言える」ことや「自分をさらけ出す」ことを可能にしてくれる二名から数名のチームで、いろいろなプロジェクトや活動に取り組む方がいい。」



 この文章に初めて接したのが、ちょうど校内研修のあり方について悩んでいたときでしたから、まさに「これだ」という気持ちになった覚えがあります。



 それまでは、「研究授業/授業研究」路線しか知りませんでしたので、その取組だけでずっとやってきました。もちろん「研究授業/授業研究」の意味は十分に理解できるのですが、それだけでいいのかというのが私の偽らざる思いです。



チームによる学びあいが校内で日常的に行われることが私の学校経営の目標です。さきほどの吉田さんの文章には続きがあります。



「こうしたチームを機能させる際に大切なことは、お互いを大切にし合う文化というか習慣を学校に根付かせることで、これこそが校長のもっとも大切な役割の一つといえる。」



このような文化を組織に根づかせるために「校長は何をすべきか」については次回触れたいと思います。


 



2 件のコメント:

  1. 小グループでの研究というのはいいですね
    最小単位を二人にして、それがあつまってグループなんかもいいんじゃないかとも思います
    まあ、わたしはそういう立場にないので何とも言えませんが。

    時間がないのは事実ですが
    わたしの小学校の場合、学びたいと思っている人はたくさんいます
    特に若い先生を中心に
    いろいろなことを吸収していきたいという向上心の高い方達は多いです
    発信こそが最大の学習であることをしっかりと共有できれば
    よいチームができるような気がします

    学校の先生は本来
    チームになれるポテンシャルをもっている人が多いのかもしれませんね

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  2. 2活動内容で紹介している日本でもすでに行われている「研究授業+研究協議」「相互授業参観」「他校訪問」などと同じか、それ以上に効果的な方法がたくさんあります。

    それも一人でできるもの、二人でするもの、チームでするもの、そして学校全体でするものまで。

    具体的な方法については、『「学び」で組織は成長する』(光文社新書)と『効果10倍のの技法 ~ シンプルな方法で学校が変わる』(PHP新書)をご覧ください。

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