2018年1月14日日曜日

教師(教える)という素晴らしい仕事


 2018年の滑り出しはいかがですか?
 年始早々から『In the Middle』という本の翻訳作業をしています。この本は、読み書きの教え方に革命を起こした本★です。訳しているのは、第3版ですが、その初版は数十万部売れ、その印税で著者は自分の学校をつくってしまったぐらいですから。それも素晴らしいのは、Center for Teaching and Learningという名称にしたことです。生徒たちにとってはもちろん、教師たちも学び続けるセンターにしたことです。まさに、PLC。ここでいう教師は、自分の学校の先生だけでなく、全国(全世界)からワークショップの教え方を学びたい、体験したい先生方を意味し、1週間を単位として受け入れています。
 はたして、日本にそういう発想をもった学校があるでしょうか?

 この本は、次の文章ではじまります。

40年間の国語教師としての人生を振り返って、私はこの仕事がとても素晴らしい仕事の一つだと確信しています。もちろん、時間と労力はかかります。けれど、充実していて、やりがいがあって、何より刺激的です。毎朝教室に入る時、私は確信しています。きっと今日も、若い書き手や読み手たちの言うこと、行うことに目を見張るだろう。(『In the Middle』 の第1章「教えることを学ぶ」の3ページ)

 「この仕事はとても素晴らしい仕事」、まったくその通りだと思います。
 日本の国語教師はもちろんのこと、すべての教師に同じ思いをもってほしくて、この本を訳しています。
 次のページで、アトウェルは次のように書いています。

ビセックスの才気あふれる著書『GNYS AT WRK★★(ことばを学ぶ天才)』は、彼女の子どもポールの幼少期のことばの学習、特に、就学前に彼が独自に考えだした綴りに注目しています。この本が出版されるまでは「書くためには、まず読めないといけない」という考え方が一般的でした。しかし、ポールは、読めるようになる前に、ありとあらゆるメッセージを書き散らしていたのです。ビセックスの観察は、子どもが実際に学ぶ方法と教師が教える方法との間にはギャップがあることを伝えてくれます。そこから、「私たちが教える論理が、子どもたちが学ぶ論理と同じとは限らない」という彼女の言葉は、私の座右の銘となりました(この章の冒頭にも引用しています)。この言葉を目にするたびに、私は立ち戻ります。生徒を観察すること、現状維持に疑問を抱くこと、そして、教室で起きていることを理解しようとすることに。(原書、4ページ)

 日本では、いまでも濃厚に「書くためには、まず読めないといけない」という捉え方があるのではないでしょうか? 実は、聞いたり、見たり、真似したりしながら、子どもたちは「読めるようになる前に、ありとあらゆるメッセージを書き散らしてい」るのに。

 しかし、ここで指摘したいのは(それも、大文字で!)、アトウェルが座右の銘にしているという、次の部分です。
 「子どもが実際に学ぶ方法と教師が教える方法との間にはギャップがある」ことを発見し、「私たちが教える論理が、子どもたちが学ぶ論理と同じとは限らない」と言い切ったことです。

 それに対して、日本の授業は、「教師が教えること=子どもたちが学ぶこと」という成立するはずのない前提で行われ続けています。
http://projectbetterschool.blogspot.jp/2017/12/blog-post_31.html で紹介した(というか、反面教師にしてほしい)『授業の見方』もその発想で書かれている本です。
しかし、それは大人の都合でしかありません。子ども一人ひとりには自分の都合というか、学ぶ論理がありますから。
当然のことながら、どちらの立場に立つかで、まったく違った授業をすることになります。
同じではなく、違うと思えたら、アトウェルが次に書いている「生徒を観察すること、現状維持に疑問を抱くこと、そして、教室で起きていることを理解しようとすること」の価値が見出せます。★★★
でも、思えないと『授業の見方』(=指導案、一斉授業)のアプローチが続くことが約束されています。
 どちらを選ぶか、あなたには選択があります!


★ ある意味で真に革命を起こした本は、彼女のこの本に先行すること4年前に出たドナルド・グレイヴス(Donald H. Graves)著の『Writing: Teachers and Children at Work(書くこと~学習中の教師と子ども)』です。こちらは書くことに焦点を当てています。それをアトウェルは読むことにも応用し、両方を中学校レベルで実践した本として紹介しました。私の中では、『「考える力」はこうしてつける』『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』『「学びの責任」は誰にあるのか』の3冊で書かれている内容がすべて押さえられているというか、実践されている本です。『In the Middle』は今夏に、三省堂から翻訳出版される予定です。http://wwletter.blogspot.jp/search?q=in+the+middleIn the Middle』関連の記事がたくさん読めます。

★★英語圏の子どもは、英語の音を聞いて自分なりの英語の単語の綴りをつくりだす時期があります。英語の原題『GNYS AT WRK』は、Genius at Workを、自分なりの英語の綴りで表現していることを象徴的に表しています。


★★★ 違うと捉えると、必然的に『「考える力」はこうしてつける』『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』『「学びの責任」は誰にあるのか』や、ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップ関連の実践になります。これは、この本の第1章のタイトルとも関連します。それは、「教えることを学ぶ」というか、「教えることを学び続ける」か、それとも固定的な教え方で満足してしまうかの分かれ道です。繰り返しますが、教師は誰もが選択をもっています。

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