先週『「学びの責任」は誰にあるのか』(吉田新一郎訳、新評論)が取り上げられましたが、私も2年ほど前にこの本を読みました。そのとき、この本は多くの教師の役に立つに違いないと思った記憶があります。
この本で紹介されている「責任の移行モデル」は確か、読みの指導の分野で功績のあるピアソンらによって開発された手法ですが、子供を「教師に教えてもらう存在」から「自立した学び手」に変えていくという点において、他の分野でも有効なことが示されています。
今話題の「主体的、対話的な深い学び」も、掛け声だけはいいのですが、いざ日々の具体の授業の中でどう実現すればよいのか、様々な解説本や実践を紹介した本が次々に出版されても、「今一つピンとこない」と感じている先生方も少なくないと思います。
そんな思いを抱いている方は、ぜひ本書を手に取ることをお薦めします。
この本の中で紹介されている「責任の移行モデル」の4段階はとても大切であるにもかかわらず、これまではそれぞれが有機的につながっていませんでした。
その4段階とは次のことです。
①教師が焦点を絞った講義をしたり、見本を示したりする。(焦点を絞った指導)
②教師がサポートしながら生徒たちは練習する。(教師がガイドする指導)
③生徒たちが協力しながら問題解決や話し合いをする。(協働学習)
④生徒は個別に自分が分かっていることやできることを示す。(個別学習)
この4つの段階がつながって行われれば、先ほどの「主体的、対話的で深い学び」が自ずと実現するものと思います。①の教師による講義もこれまでは、ほとんどこれが授業の中心という状況でしたが、肝心の内容が焦点化されていないことが問題でした。しかも、自分たちとは全くかかわりのないような話を突然持ち出されて、「はい、これを覚えましょう」では興味が湧くはずもありません。
また、②から④に進むにつれて、子供たちが担う責任を徐々に重いものにしていくというのは、実に理にかなった話です。これまでは①②がなくて、③④に取り掛かるというようなことが当たり前に行われていたように思います。それではうまくいかないのは当然です。
この本にはまだまだたくさん学べることがありますが、特に、若い先生方には、これからいろいろな場面でグループワークを効果的に行うために、第4章「協働学習」のところを読んでもらいたいと思います。グループワークに関係するところは、とても参考になります。話し合い活動に注目が集まりますが、形だけの話し合いでは時間の無駄ですから。
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