2015年9月13日日曜日

『ポジティブ心理学の挑戦』



夏休みに読んだ本の紹介の第2弾は、
『ポジティブ心理学の挑戦』(マーティン・セリグマン著)です。

著者は、「学習性無力感」★で一躍有名になった人で、ポジティブ心理学の「父」とも言われています。
そのポジティブ心理学とは・・・(上記の本からの引用、数字はページ数)

25 私が意図するポジティブ心理学とは、人間がそのもののよさのために何を選ぶか、ということに尽きる。
   前著(『世界でひとつだけの幸せ』だが、著者は『ポジティブ心理学』としたかった。 でも、「幸せ」とか「幸福」の方が売れるので、出版社に押し切られた)における理論とは、幸せを3つの異なる要素に分けて分析できるものだった。その3つの要素とは、「ポジティブ感情」「エンゲージメント」「意味・意義」であり、いずれもそのもののよさのために選ばれる要素である。

   「ポジティブ感情」だが、これは、楽しみ、歓喜、恍惚感、温もり、心地よさなど、自分が「感じるもの」のことだ。→「快の人生」
   「エンゲージメント」とは「フロー」に関することだ。フローとは、音楽との一体感や、時が止まる感覚や、無我夢中になる行為の最中での没我の感覚のことだ。→「充実した人生」
26 フローの状態を得るために重要なのは、自分の最高の強みを見つけて、それらの強みを頻繁に活用することを学ぶことだ。
   「意味・意義」→人間はどうしても人生に意味や目的をほしがるものなのだ。→「有意義な人生」(自分よりも大きいと信じるものに属して、そこに仕えるという生き方)

 それから10年、彼の理論は進化して、幸福理論からウェルビーイング理論(持続的幸福度)へ進化しました。表にすると(29ページ)

 そして、持続的幸福を実現する特徴は(54ページ)は、
  社会ではもちろんですが、学校や授業でも必要だと思いませんか?
 このあと、これらの特徴を調べるための方法や、強化するためのエキササイズが紹介されています。

 そして、 ポジティブ心理学とコーチングの相性のよさについても(128~131ページに)書いてあります。

 さらに、143ページ以降には「ウェルビーイングを学校で教えるべきか?」に答える形で、具体的に導入している学校の紹介もされています。

 そういえば、ここで紹介されていたプログラムを導入していたのはオーストラリアの中等学校だったのですが、アメリカで導入している学校の紹介は『成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか』ポール・タフ著に書いてありました。
 内容的には、前回紹介した『クオリティ・スクール』とかぶるところもあると思います。要するに、質の確保をいかにはかるか、です。


★「学習性無力感」とは、セリグマンが1967年に発表した概念で、抵抗することも回避することも困難なストレスに長期間さらされ続けると、そうした不快な状況下から逃れようとする自発的な行動すら起こらなくなる現象をいいます。
ちなみに、日本では佐藤学さんの『「学び」から逃走する子どもたち』がありますが、この現象は学校および教室で「学習性無力感」の状況に置かれ続ける子どもたちが必然的に起こしている結果と捉えられます。

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