2014年8月24日日曜日

反転授業とは


最近、わが国でも注目され始めている教育手法の一つに「反転授業」があります。


これは、簡単に言えば、ビデオ授業を宿題として生徒は自宅で学習し、その後、授業で宿題の内容についてわからなかった点を確認したり、課題解決学習に取り組んだりするやり方が多いようです。従来の授業は「授業→宿題」であったのに対して、このやり方は「宿題→授業」と反対の順番になるので、反転授業と呼ばれるようになったとのことです。

 

最近、この授業にアメリカでも初期のところに取り組み始めたバーグマンとサムズの著書「Flip your classroom」の邦訳「反転授業」(上原裕美子 訳)が出版されました。

 

 この邦訳の表紙には、「基本を宿題で学んでから、授業で応用力を身につける」と書かれています。「基本を宿題で学ぶ」のは、教師が一方的に話すビデオ授業で学ぶことです。よいことばかりのようですが、課題もありそうです。

 

まず、課題の一つは、ビデオ授業を作るのに手間がかかるということです。このやり方が広まれば、地区の教師たちが共同で制作するとか、営利企業に任せるとか、いくつかの方策は考えられますが、ここは一つの問題点です。

次に、ビデオ授業のことはさておいても、問題は次の対面授業です。

基礎的なことはビデオで学んだとして、その補充や応用・発展をやることになるわけで、ここで、従来の一方通行の授業をやっていたのでは、その目的は達成できません。ワークショップ型授業のように子ども自身が問題を設定して、追究していくようなスタイルでなければ、応用・発展のいわゆる活用型授業の良さを活かすことはできないでしょう。つまり、このブログでも何回となく取り上げている教師の教え方が変わらなければ、この反転授業もうまくいかないでしょう。もちろん、繰り返しのドリル型学習という意味で使うことで、学力調査のようなペーパーテスト対策の授業としては効果があるのかもしれません。アメリカでこのやり方を利用している教師の中にも、もちろん統一テストの点数を上げる目的でやっている人も多いのではないかと思います。

 

反転授業のよさについて、この本の61ページにこんな記述があります。

「私たち教員は、学校で勉強を教えるだけではなく、生徒の背中を押したり、励ましたり、彼らの声に耳を傾けたり、進む方向を示したりする役割を担う。こうしたふれあいは人間関係という形を作って生じる。優れた教師は生徒と人間として絆を結ぶものではないだろうか。・・・(中略)・・・・・反転授業を始める前からそうした人間関係の構築に努めてきたが、反転授業にしたことで、さらに良好な関係を作れるようになった。」

その理由として、「教師と生徒のインタラクションが増えるからだ」と述べられています。

授業の中では、少なくとも一方通行のスタイルを止めたからですね。

しかし、インタラクションを増やすのは、何もビデオ授業を取り入れた反転スタイルでなくてもできることです。リーディングワークショップにしろ、ライティングワークショップ、サイエンスワークショップなどの授業でいくらでも実現できることです。

 

たしかに、ビデオ授業をタブレットPCで見たりすることで、ICT授業の先端を行くことに意味があるのかもしれませんが、要は子どもたちに「深く考えさせる授業」をどう作り上げていくが目標であり、それが本当に実現できるかどうかが最大の課題です。

 

ICTを活用することで、見た目の良さに気を取られて、本質を見失ってはいけないと思います。

 

1 件のコメント:

  1. 日本の場合、テスト(評価)の部分は、すでにベネッセ等の企業に大きく依存しているわけですが、もしこういう反転授業が普及してしまうと、授業前の映像づくりまで依存することになりますから、授業の前後がほぼ押さえられることで、その「間」ですることまで依存していくことを意味するのではないでしょうか?  
    そうなると、子どもたちにも、教師にも主体的な部分は限りなくゼロに近づくわけで・・・・ 
    とても恐いことですが、アメリカよりも、日本でこそ普及してしまいそうなアプローチな気がします。

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