子どもたちの学びのエンゲージメントを高めるためには、教師と学習者の信頼関係の構築が重要。そのための原則は何か。外国語学習者の心理やモチベーションの研究を長年続けてきた、二人の研究者の著書から考えてきました。★1 六つ目の原則は「教師の情熱を示す」です。
ChatGPTの登場以降、生成AIが、性能や機能も日々アップデートされていて、勢いは留まる気配はありません。私自身も大いに活用しています。また、私自身どちらかといえばデジタル派の人間なので、このような変革は、ワクワクするところがありますし、もう後戻りもできないと思っています。どう共存していくかが、次なるテーマかもしれません。
ただし、デジタルツールを使えば使うほど、やはり人間と人間のつながりの必要性を実感している人は多いのではないでしょうか。中でも、情熱(パッション)。教師の情熱は、学習者に伝染すると言われます。
学習者と教師の心理状態が表裏一体であることは、実感とも一致しますし、実際、これまでの多くの研究でも指摘されてきたようです。学習者のモチベーションを大きく動かすのは、教師の情熱とそれに基づいた学習者への関わりの深さであるということです。
これは、教職という仕事の一丁目一番地。改めて、心に刻んでおきたい。
ここで考えておきたいのは、教師のウエルビーイングということ。ウエルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良好で満たされた状態。すなわち、持続的に幸福感に満たされているかという問題です。
教師自身が、幸せや生きる喜びに満たされていなければ、情熱を維持し続けることは難しい。教師の多忙、バーンアウト。精神疾患による求職者の数は高い水準に留まっています。働き方改革の必要性は叫ばれ続けていますが、なかなか根本的な解決策は見出せず、教員志願者の減少を食い止めることはできていません。★2
マーサーとドルニュイは、教師が幸福を求めることは、「甘えでもわがままでもない。それは回復力(レジリアンス)と素晴らしい授業実践のための重要な鍵にほかならない。」という言葉でこのセクションを結んでいます(p.89)。
教師の情熱が枯渇しないためにも、教師が持続的に幸福感に満たされているためには、どうすればいいのか、考え続ける必要があると思います。
★1 サラ・マーサー/ゾルタン・ドルニュイ(2022)『外国語学習者のエンゲージメント』アルク.(原著 Mercer, Sarah and Dörnyei, Zoltán (2020) Engaging Language Learners in Contemporary Classrooms,Cambridge Professional Learning.),p.78.
「教師と学習者の信頼関係を構築するための6つの原則」
- 原則1 近づきやすさ
- 原則2 共感的態度で応じる
- 原則3 学習者の個性を尊重する
- 原則4 すべての学習者を信じる
- 原則5 学習者の自律(立)性を支援する
- 原則6 教師の情熱を示す
注)原則5の「自律性」は”autonomous”の訳語ですが、「自立性」を採用する方が本来の意味に近いと思われます。
★2 【情報ファイル】教員志望者減、採用倍率は過去最低 https://ippjapan.org/en_ichi/archives/307