2024年11月23日土曜日

授業のあり方を見直す

 少し前になりますが、今年の923日付の『読売新聞』に、「デジタル教科書 巨額予算推進ありき」という記事が掲載されました。この記事は、「小中学校で英語を教える教員のうち、授業で紙の教材を使わず、「デジタル教科書」のみ使用している割合は3%にとどまることが財務省の調査でわかった。」で始まっています。続いて、「文部科学省はデジタル教科書の活用拡大を検討しているものの、多くの教員が紙の教科書を支持していることが浮かび上がった。」とあります。この記事の終わりは、「デジタル教科書をもっと活用していく」と文科省は前のめりで、中教審の作業部会も「デジタル推進」を鮮明にしたとまとめられています。★

 この記事はいろいろな受けとめ方があると思いますが、ICT活用は何も「デジタル教科書」を使うこととイコールではないはずです。「端末を一人一台」で整備したことは、何も紙の教科書をデジタル教科書に置き換えるためではないわけです。単に端末に置き換えるだけなら、「教科書をカバーする」これまでの授業と全く同じことになってしまいます。

 そこで、今回は9月に出版された『一人一台で授業をパワーアップ!』で原著から割愛した第9章の一部を紹介して、ICT教育のあり方を考えたいと思います。

 第9章のタイトルは「授業時間を考え直す」です。これまでは「ほとんどの授業は、対面している時間に学習内容を詰め込み(記憶し、理解する)、生徒を家に帰して自分だけで学んだことを練習する(応用する、分析する、評価する、創造する)ように設定されています。」(原著180ページ)という問題意識からスタートします。

「記憶」「理解」「応用」「分析」「評価」「創造」は、「ブルームの改訂された思考の分類法」で取り上げられた6つの思考です。これまでの授業では、思考レベルで言うと、低い方の「記憶」「理解」をもっぱら行い、それ以外の「より高いレベル」の学びを行う時間が確保できないことが多かったわけです。

そこで、「時間管理」の発想を大胆に転換して、「記憶」「理解」を映像コンテンツなどのその取扱い方を事前に指導した上で生徒に預け、家庭で学習してきてもらう方法が考え出されました。そして、家庭学習の翌日以降の授業では「応用」「分析」などの「より高いレベル」の思考を扱うという「反転授業」が生まれたわけです。

この点を『一人一台で授業をパワーアップ!』では次のような例とともに、紹介しています。

「国語の授業では、ライティングの指導をすべてオンラインで見られる動画などに移し、すべての作品づくりと編集(修正と校正)を授業の中心に置き換えました。教師がガイドする演習が授業時間内で行われ、指導の一部が宿題として課されるこの指導法は、反転授業またはブレンディッド学習★と呼ばれています。」(原著178ページ)

ライティングの指導に当たり、作品づくりやその編集作業を授業の中心にすえるために、「記憶」「理解」にあたる部分を「動画」の視聴で行ったわけです。これによって、「評価」「創造」まで含めた高次の思考を実現する授業となりました。その点を著者は次のように述べています。

「講義ベースの指導を教室の外に移したことによって、生徒が互いに協力し合い、学習を創造的に応用するダイナミックな活動を行う時間が増えます。その結果として、私の役割がよく言われる「舞台上の賢者」から、夢であった「脇役のガイド」という立場に明確に変わったことをとても好ましく思っています。」(原著178ページ)

 教師が「舞台上の賢者」として、授業の中心になってしまう従来の授業スタイルではなく、「脇役のガイド」という立場になり、まさに「生徒が主役の授業」が実現したわけです。さらに著者は次のように続けます。

「適切なタイミングで適切な指導を提供できる私の経験は、ブレンディッド指導の利点の一つであり、一人一台端末で得られる贈り物の一つです。私の授業計画は、授業時間の開始時と終了時のベルによって決まるのではなく、生徒のニーズに耳を傾け、それに応じて計画を立てられる自由がありました。このやり方は、これまでとは異なる新しい時間管理の方法です。」(原著179ページ)

 まさにここで述べられていることが「一人一台端末」の良さです。単に教科書の知識をドリルするための使い方ではなく、「記憶」「理解」レベルを超え、最も求められている高度な「思考力」を鍛える方法がここにあります。さらに著者はこう続けます。

「一人一台端末によって教室を変革できるようになると、過去に教えることと学ぶことを束縛していた同じ時間というルールに従う必要がなくなりました。単に一連の授業の次の時間だから、あるいは生徒と一日に五〇分しか会わないからという理由だけで、学習活動を計画するのに何日もかける必要はなくなったのです。むしろ、授業の内外で行う学習経験の種類を融合し、「学校の勉強」と「宿題(家庭での学習)」の境界をあいまいにすることで、限られた対面の時間を最大限に活用して本当に教師のサポートと仲間の協力を必要とする授業を行うことができます。」(原著179ページ)

コロナ禍を経験する中で、私たちは「対面授業」と「オンライン授業」のそれぞれの意義を確認しました。限られた「対面授業」の中に、何を指導内容として盛り込むのか、これをもう一度考える必要がありそうです。

また、反転授業にしろ、ブレンディッド学習にしろ、事前に動画などの学習題材を用意する必要があります。授業改善をしたくても、このような資料をつくる時間がないと言われるかもしれません。その問いに対する答えとして、著者は「徐々に」と書いています。いきなりすべての単元の資料を用意することは不可能ですが、最初は一つ、次の学期は一つと増やしていくことは可能です。同時に、校内の同僚や地区の先生方と協働で作成していくことも考えられます。こうした学びのネットワークの大切さは、このブログでもたびたび強調されているところですので、ぜひそうしたつながりを積極的につくっていくことが大切です。

教職を志望する学生が減少し、さまざまな困難が押し寄せている学校において、こうした取組が一筋の光明になるものと思います。

★今年度は小学5年から中学3年までの英語と算数・数学の一部で本格導入が始まりました。

★★集団と個別、オンラインとオフライン、インプットとアウトプットなどの形式から、あるいはテキストや動画などのコンテンツまで、さまざまな学習要素を組み合わせて行う学習です。

2024年11月17日日曜日

先生方の変革

 先日のとある職員室での風景。何やら若手の先生方が、2人で相談しながら作っている。よくよく見ると先日終えたばかりのメンター/メンティー研修で使用した資料だった。何かお願いしたか、その時の記憶を呼び起こすが、そんな記憶はどこにもない。恐る恐る何をしているのか尋ねてみた。

 「こないだの研修の時間では取り上げきれない相談や悩みがあったので、こんな方法があるよリストを作ってます!!」3・4年目とは思えないほどの行動力。そして何も言わずともメンティーのことを考え、動こうとする、その姿勢。やってきたことが報われてきている。そんなことを感じた瞬間だった。

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 私が学び、考え、実行してきた本校における研修もいよいよ一番大切な時期に入ってきた。そもそもこの研修は様々な段階を考え、計画したところから始めたのだ。

   出会い:理論と実践の往還

    

   拡充:2年目を巻き込んだ研修

    

   成熟:メンターチームの組織づくり

    

   深化: 学校風土として根付き

①は、当時現職大学院生だった私の立場を活かして、大学院での学びを実践してみるという形で初任者教諭2人と時間をもった。当時を今振り返ると、2人には満足したものを提供できなかった。しかし、このなかで大切だと感じた要素があった。

「勤務時間内に行う」「メンターをメンティーが選べるようにする」「お互いに自分事で必要感のあるものにする」

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 次の日。校内を私が巡回していると、職員室で話した4年目の先生が、初任者のクラスを後ろからじっと見つめていた。放課後、声をかけてみた。「何をしてたの?」と。

「この間の研修で出た悩みが実際どのレベルなのか、子どもたちの様子をみてみたくて。実態が分かれば、自分だったら、ということも考えやすいし、他の先生にも相談できるかなと思いまして…。授業をのぞいてました。」

この4年目の先生は何を隠そう、①の時期に私とともに初めてメンター/メンティー研修を行った初任者だった先生である。心の中で、満足なものを提供できなかったことが残っていたので、自分がそこまでいつも考えて見てあげられなかったことや今のような研修が設定できなかったことなどを詫びると…

「こんな研修をやっている学校はないです。それもこれもあの年があったからかと思うとありがたいです。」お世辞でもそう思って、自主的に動き、考えてくれる先生が本当に頼もしい限りだった。

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②・③と毎年少しずつメンター/メンティー研修を繰り返し、研修を経験した先生方が次の年のメンターとなってくれることになった。メンター/メンティー研修のくくりとしてはその初任者がメンティーであり、若手の5年次まで、そして私がメンターとなる。私はここで、大きく考えを広げ、そもそも校内の初任者研修自体をメンター/メンティー・チーム化してしまおうと考えることにした。より多くのベテランからミドルリーダーの先生方に校内初任者研修の各研修担当になっていただき、それぞれの専門や分掌に合ったお話や指導をしていただいた。メンター/メンティー研修のなかでは、初任者と手立てや課題を考える際に、他の校内の先生方の実践や手立てを紹介したり、一緒に確認しにいったりすることも意識的に取り組むようにした。そうすることで、普段から初任者が職員室内になじみ、事案によって相談する相手を選べるように環境づくりを行った。少しずつ自分が描いた形が目の前にできてきている。あとはこの風土を根付かせること。今年度が始まる際、私の中で一番の課題として考えたことである。

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 今年度第2回のメンター/メンティー研修は、3年目の先生が中心に企画・運営をしてくれた。なぜその先生が中心に運営しているのか、気になった私。先生に直球で聞いてみた。

「今まで、自分は参加して、言いたいこと言ってきただけなので。こんなことがやったらいいんじゃないか。これが必要なんじゃないか。少し考えてみまして。先輩方(4年目の先生2人)に相談しました。」

この先生は、私が教務主任となり初めてみた初任者である。先日の運動会の打ち上げ。ふらっと傍によってきた先生がこんなことを聞いてきた。

「私、成長できていますかね?」

 初任者時代は「辞めないでくれ!」と願っていた先生だった。しかし、今となっては学校の中心となって様々な仕事を任されている。思ったことをそのまま伝え、労うと

「先生に言われるといろんな思いがこみ上げます。いつも話を聞いてくださり、相談にのってくださりありがとうございます」と返してきた。

いえいえ。ありがとうはこちらがですよ。今年度のはじめ、初任者が初めての授業参観を前に、悩み、遅くまで残っていたとき、最後まで初任者に寄り添い、共に流れを考えてくれた先生。

「自分のことで精いっぱいです。」

そんなことを常々口にしていた先生が、学校のためにそして初任者のために考え、動いてくれるようになった。その事実が私の力となり、次の手立てへの活力となっている。今、まさに、本校では「先生方の変革」が起こっている。私も負けていられない。次の一手を打てるように、広い視野をもって、今何が必要かを考え、よりよい学校風土を培えるように今日も、子どもたちそして先生方との対話を重ねていく。

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以上は、8月18日、9月21日、10月6日と続いている、埼玉で教務主任/初任者校内指導教諭をしている田所昂先生の第4弾です。

2024年11月10日日曜日

ICT活用で生徒の学びを支援!一人一台端末の効果と教育の可能性


2022年以降、日本の公立校では一人一台の端末が導入され、ICTによる学習が日常となりつつあります。なぜこのような学習環境が必要なのでしょうか。学校現場にICTを導入することの意義と課題とは何でしょうか。ICTを活用した学びが教員と生徒にどのような可能性を提供するのか考えてみました。

 

ICTデバイスが導入されている主な目的は、生徒に情報を適切に扱うスキルやクリティカルな思考力を身につけさせるためです。ダイアナ・ニービーとジェン・ロバーツの著書『11台で授業パワーアップ!』では、「情報をクリティカルに評価し、効果的に情報を収集・処理し、共同作業で高品質な作品を作るスキル」が必要とされています。このスキルは、将来の大学生活や職場での成功に不可欠なものです。一人一台の端末があることで、こうしたスキルを日常の学びを通じて体得する環境が整い、ICTを通じて効率的かつ豊かな学習が可能となります。ICTの利用は、生徒が多様な学習方法を選択できる点でも有用です。テキストを音声で聞くことができるオーディオブックや、手先が不自由な生徒向けのタッチペンなどのサポートツールが、学習体験を多様化してくれます。




 

ICTの導入にはメリットが多くありますが、一方で、その効果や影響についても議論が必要です。昨今のヨーロッパ一部の国では、ICTデバイスを小学校中学年で使わない方針をとる学校が増えており、デジタル機器の使用が子どもの心理的・健康的な面に与える影響が懸念されています。教育の現場では、ICTがもたらす学びのメリットとリスクの両方を認識し、慎重に活用していくことが求められます。

加えて、テクノロジーの使用に際しての重要な視点として、Googleの教育エバンジェリスト、ジェイミー・カサップ氏は「テクノロジーはあくまでツールであり、学びに焦点を当てるべきである」と本書で述べています。ICTは教師に代わるものではなく、教師とテクノロジーが相互に補完し合いながら学びの深まりを支援するべきだという考え方が根底にあります。

 

ICTの最大の利点は、生徒個々のニーズに合わせた学習支援ができる点です。たとえば、読むのが苦手な生徒には、音声での読み上げ機能を提供することでテキストの理解を助けることができます。また、授業のホワイトボードの内容をデバイスで記録したり、段階的なチェックリストを表示して自分のペースで取り組むことができるなど、学習過程の自己調整をサポートします。また、特別なニーズを持つ生徒には、学習内容を補完するためにデジタルツールを用いたサポートも重要です。例えば、視覚に障害がある生徒には音声読み上げアプリを、聴覚に障害がある生徒には視覚的な手がかりを増やした学習教材を提供するなど、生徒それぞれに適した学びを実現できます。

本書においては、その実践について著者の具体的な事例をもとに紹介されています。ICTを使うことで、生徒同士が学び合い、協力して課題に取り組む環境が整います。リアルタイムで共有されたテキストにコメントを残したり、ディスカッションスレッドで意見を交換する「いっしょ読み」など、双方向性の高い学びが可能となります。これにより、生徒は他者の意見を尊重しながら自己表現を磨くことができ、チームワークや協働力が育まれます。また、授業内でフィードバックを受ける際にもICTは役立ちます。Googleフォームを用いた相互評価や、音声コメントを活用したフィードバックなどにより、すぐに生徒に応じたサポートが提供できます。こうした工夫により、生徒は自分の成長を実感しやすくなります。

 

一人一台端末の活用に不安を感じる教師もいるかもしれませんが、まずはICTを積極的に活用している教師とのつながりを作り、実際の授業見学やオンラインでの情報交換から始めてみる提案がされています。これによってICTの活用方法は多様であり、まずは身近なところから少しずつ取り組むことで、ICTがもたらす可能性を実感できるはずです。

 

ICTは、教育の現場において生徒一人ひとりの学びを支え、学習を豊かにするための有用なツールです。しかし、テクノロジーはあくまで「学びのための道具」であり、教師の存在や指導の価値は変わりません。教師と生徒がICTを有効活用することで、生徒の学びを深め、将来に向けたスキルの基盤を築いていくことがこれからの教育において重要です。各教員が自らの授業に適したICT活用方法を模索し、柔軟な姿勢で取り組んでいくことによって、ICTはさらに有効な教育ツールとなるはずです。あるのに使わないなんてもったいない!

2024年11月3日日曜日

日本の学校はソフトスキルとどう向きあうのか?

先日、ある会合で、地域の高校の校長が次のようなことを言っていました。

「近年、「連帯」が不足しているのではないかと感じます。どういうことかというと、我々の時代には、体育祭のようなイベントの最後にフォークダンスを踊ったり、ファイアーストームをやったりしたものです。あのような人と人とをつなぐようなものが欠けてきているんじゃないかと。」

この校長は、一人一人の個性を尊重し、特性を理解して、個に応じた対応が不可欠だということは分かる。その一方で、人と人とが切り離されているように感じてしまうと言いたかったとのこと。その場に居合わせた私たちは、(同世代でもあり)フォークダンスやファイアーストームという言葉に、思わず微笑んでしまいましたが、同時に、今の若者が抱える深刻な状況が垣間見える気がしたのです。

その発言に対して、大学の事務局に勤める参加者からも、興味深い発言がありました。

「コロナ禍が始まったころ、感染者の感染源をたどるために、一人一人に丁寧に聞き取りをしていました。感染源としてもっとも多かったのが部活動関連。部活動仲間は一緒に行動していることが多いことが分かった。次に多かったのが、バイト先での感染。一方で、もっと驚いたのは、感染源をたどれない学生がかなりの数いたことでした。まったく、他人と接触していない若者です。」

コロナ禍で、人と人との接触が大幅に制限されていた時期ではありましたが、よくよく聞いてみると、普段から食事も1人で食べることが多く、人と一緒にいることが少ないという学生がかなり多くいたことに驚いていました。

濃密なコミュニケーションをもてている若者と個の中に埋没してしまっている若者の間に大きな格差が生まれてきているのではないかと思えました。人との良い関係を築ける若者がいる一方で、それがうまく築けない若者がかなりいるのではないか。日頃、10代、20代の若者と接している人たちは、ある程度、そのような感覚をもっているのかもしれません。

近年、ソフトスキルの重要性が注目されています。★1

ソフトスキルとは、仕事をする上でベースとなる個人の性格特性や行動に関わるスキルのことで、コミュニケーション力、リーダーシップ、問題解決力、柔軟性、協調性などが含まれています。一方で、ハードスキルとは、資格や技術、専門知識など、教育や訓練で獲得した能力のことを言います。

ソフトスキルが求められる背景として、1) 働き方改革の進行 2)AIの進化 3) エンゲージメントの低さがあると指摘しています。1)は、ソフトスキルが生産性を向上させ、働き方改革の実現につながるということ。2)は、AIが進化すればするほど、AIにはない、強調性や柔軟性、創造性など、人間ならではの能力が重要になるということ。3)のエンゲージメントは、ここでは会社や仕事に対しての愛情や思い入れのことを指しています。同サイトの説明によると、「エンゲージメントが低い会社では、業績や定着率、社員のモチベーションの低下、組織の衰退などが起きていると言います。ソフトスキルが高まることで、仕事に対するモチベーションやチャレンジ精神なども向上しやすくなると言われています。」と述べています。

世界最大のIT企業の一つであるグーグルの人材の採用基準について論じた、エリカ・アンダーソンさんの記事は、この問題と大きく関連しているように思います。★2 この記事があげている、グーグルの採用基準のトップ5は次のとおりです。

5  専門知識(Expertise)
4  自分事として捉えられる/取り組もうとする姿勢、マインドセット(Ownership)
3  謙虚さ(Humility)
2  リーダーシップ(Leadership)
1  学ぶ能力(Ability to Learn)

このリストは、例えば、謙虚さといった項目が意外性もあり面白いですが(自分よりも素晴らしい考えをもっている人がいたら、率直にそれを認めるようにしようという意味のようです)、あげられた項目よりも、その順序がとても興味深く感じます。

プログラミングなどの専門知識がもっとも求められそうな企業において、主体性や謙虚さ、リーダーシップなどの方が上位にきているのです。そして、もっとも重視しているのが「学ぶ能力」。その説明の中に、ここで言う「学ぶ能力」をよく言い表している一節があるので引用しておきます。

すべての会社は、好奇心にあふれ、間違えたり、危険を犯すことをおそれず、バカバカしい質問でも平気で聞く、そうやって新しい能力を磨き、新しい解決策を見出していくことができる人材を求めているのです。そして、そうやって組織は成長し、未来に向けて伸びていいけるのです。」

(原文 Every company needs employees who are curious, who are willing to make mistakes and go out on a limb and ask dumb questions in order to develop new capabilities and new solutions - that's how organizations will thrive and grow into the future.)

我が国の学校教育は、長年に渡り、ハードスキルを追い求めてきたように思えます。ハードスキル一辺倒であったと言えなくもない。もちろん、授業以外の場面、例えば、部活動や学校行事などでは、ソフトスキルを育むことのできる場面はあったと思います。

このソフトスキルをどうとらえ、どう学校教育の中に組み込んでいくのか。これが、今後の重要なテーマの一つになるように思えます。


★1 ソフトスキルとは? 具体例一覧と鍛え方、ハードスキルとの違い, カオナビ

https://www.kaonavi.jp/dictionary/soft-skill/

★2 「Googleの人材採用基準とは?」

Erika Andersen, How Google Picks New Employees (Hint: It's Not About Your Degree), Apr 07, 2014.

https://www.forbes.com/sites/erikaandersen/2014/04/07/how-google-picks-new-employees-hint-its-not-about-your-degree/?sh=6ae1775f25e4