2023年11月25日土曜日

評価を考える(総括的評価)

 

ここ3回ほど評価について考えてきましたが、今回は総括的評価について取り上げたいと思います。 

『成績をハックする』(新評論・2018)6ページで、著者のスター・サックシュタインはスタンフォード大学のキャロル・ドゥエックがその著書『マインドセット―「やればできる!」―の研究』で述べている成長マインドセットを紹介し、それを踏まえることで、生徒は学び続ける学び手に成長していくと述べています。

 

生徒たちが「C」という成績を手にしたとき、彼らは一方的な評価を下されたこともあって、自分自身に「C」というレッテルを貼ってしまいがちです。もし、この一方的な評価をなくせば、生徒たちは自分に貼られた文字や記号などといったレッテルではなく、自分の内側にある学び手の意識に目を向けるようになるでしょう。(『成績をハックする』6ページ)

 

一般的に学期末に通知表・成績表を生徒に渡す学校が多いと思いますが、5段階評定で12の成績を付けられた生徒はまさに自分自身に「C」というレッテルを貼ってしまいます。この否定的な評価が続けば、学びから逃げ出したくなるのは当たり前です。これは自己肯定感の醸成とは真逆の方向です。そうしたことから、これまでの日本の学校制度は劣等感を抱いた子どもたちを多数生み出してきたと言っても、過言ではありません。

私が今かかわっている学習塾の生徒たちの中にも、こうした「C」というレッテルを貼り続けられて、自分にまったく自信のもてない生徒もいます。彼らの一方的につけられたレッテルをはがしていくのは並大抵ではないことです。必要なことは、まず「成績の考え方・見方」についてもう一度よく考え、できることから変えていくことです。この点については、先ほどの『成績をハックする』(新評論・2018)が参考になります。

 

さて、総括的評価に話を進めましょう。

『一人ひとりをいかす評価』(北大路書房・2018)では総括的評価を次のように定義しています。(135ページ)

 

 総括的評価は、診断的評価や形成的評価よりも、よりフォーマルで「公式」なものです。それは、中間試験、章の終わりの試験、ユニット末試験、期末試験、プロジェクト、レポートなどの形で、指導したことの結果を評価するものとして使われています。

 

この内容には、多くの先生方が同意されるものと思います。また、このような記述もあります。(同書136ページ)

 

一つの授業やユニットの中のいくつかの区切りが終了した時点で総括的評価を行うことは、これから先の授業をする際の基盤となる力を生徒たちが獲得したか否かを教師が把握する助けになります。

 

まとめると、総括的評価とは目標として設定した知識・理解・スキルなどを生徒が身に付けることができたかどうかを診断して、その証拠(エビデンス)を生徒と教師に提供するものであると言うことができるでしょう。教師にとっては、自身の指導が効果的であったのか否か、生徒にとっては自身の学びにおいてまだ何が足りないのか、どの部分が不充分だったのかを振り返る絶好の機会となるわけです。したがって、総括的評価を行って、その結果を数字で生徒に(通知表などの形態で)伝えて、「ハイ、おしまい」では教師と生徒それぞれの成長のチャンスをみすみす失っていることになります。これは若い先生方に、あるいは教職に就こうと教職課程で学んでいる学生たちに特に伝えたいことです。

 

最後に総括的評価の形態をまとめておきましょう。

それは次のようなものです。(『一人ひとりをいかす評価』137ページ)

 

     伝統的な筆記試験あるいは閉じた課題:多肢選択式、短答式、穴埋め式、正誤式、解釈式など

     パフォーマンスを重んじる評価(以下、パフォーマンス評価と略す): 小論文、プロジェクトないし成果物作成、ポートフォリオ、パフォーマンス課題など

 

    このように多種多様な形態があるので、学習目標や学習のねらいに応じて最もふさわしい課題を採用するかを考える必要があります。単元の学習計画を考える際には、その点を考慮して考えておくことがよいでしょう。どの形態を採用すると、そこから生徒の学習の様子について、どのような情報が得られるかという点については、『一人ひとりをいかす評価』の138139ページに一覧表がありますので、参考にしていただくとよいと思います。

 先ほど引用した『成績をハックする』の最後のところに次のような一文があります。(216ページ)

私たちが生徒を評価する方法は、彼らの学びの捉え方に影響を及ぼします。したがって、もし私たちが、生徒たちの体験から否定的なものや表面的には肯定的に見えるものを取り除くことができれば、より多くの生徒が数字や記号で示される成績以外の素晴らしさに目を向けることができるようになるでしょう。

 

このあたりをよく噛みしめて、評価についての実践で、変えられることは何かを考えることが「自分を成長させ続ける評価」の第一歩となることは間違いありません。

 

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