2022年3月6日日曜日

新刊紹介『感情と社会性を育む学び(SEL)』

 二人の紹介文を載せます。

 一人は、翻訳協力者の佐野先生ので、もう一人は、訳者の一人の大内さんのです。

 

  佐野先生の紹介文

あなたのクラスの生徒は安心して教室の席に着けているでしょうか? 苦しいときに誰かに助けを求めることができているでしょうか? 私たち大人は学習活動に注目するばかりに、生徒たちの感情を置き去りにしてはいないでしょうか? そして自分自身の感情も。

教師は生徒の幸せを願って、多くの学びの場を提供しますが、それらは往々にして認知(知識)的なものに偏りがちで、感情的なものが取り扱われることはほとんどありません。認知的思考も感情的ふるまいも同じ一人の人間のなかで起こっていることで、それぞれが大きく影響し合っていることは、私たち大人が毎日のように体感していることです。

生徒によりよく学んでほしいと心から願うのであれば、目に見える現象だけでなく、生徒の背景にあるものや心の状態を理解することが大切になります。生徒は自分が安心できる居場所が確認できたとき、周囲の大人との良好な関係性が築けたときに、自ら学ぼうとする健全な心(成長マインドセット)を養っていきます。

とは言え、日常の教育活動にどのようにして「感情と社会性の学び(SEL)」を取り入れることができるのでしょうか? また、SELの観点を学習活動に取り入れるとき、教師自身は自らの感情にどのように向き合っていけば良いのでしょうか? 本書では、あなたの教室で明日から使える具体的なアイディアと豊富な実践例が紹介されています。さらに、SELの効果について脳科学の見地から述べられており、SELを実践するうえで、その有効性について同僚や保護者への説得力を添えています。子どもたちの主体性を育むうえでプロジェクト学習や探究的な活動に魅力を感じ、授業に取り入れてはみるものの、自身の想い描くような授業にはならず、悩まれている方にとっても大きな気づきやヒントをもたらしてくれることでしょう。       協力者・佐野和之(かえつ有明中・高等学校)

 

  訳者の大内さんの紹介文

 本書のテーマ、Social Emotional Learning (SEL)は、日本語に訳すと、感情に向き合い対応する力であるEQ(感情知性)と、社会性に関わる力のSQ(社会的知性)を育てるための学びです。本書では、この感情と社会性の学びをSELと呼び、そのスキルをSQEQと呼びます。(「EQ」と「SQ」で検索すると、たくさんの関連図書を見つけることができます。)

 SELには、社会認識と人間関係の構築、維持、修復などの社会性(SQ)と、共感する力、自己認識、自己管理能力などからなる自分と他者の感情と向き合い対応していく力(EQ)を学ぶことが含まれます。これらの力は、学校を越えて、社会で必要な力、学び続けるために鍵となる力です。子どもたちにとっての社会である学校では、子どもたちが日々の生活を通じて、SQEQを鍛えていくことが必要です。学習レベルが異なるように、EQSQも一人ひとり異なります。EQSQを子どもの特性や性格と捉えるのではなく、学力と同じように、現時点での子どものEQSQをふり返り、目標を立て、それに向かって学べる環境をつくることが必要です。基礎的な認知能力である読み書きや計算がその後の学びに必要不可欠なように、EQSQも学ぶために必要な基礎的なスキルとみなし、その発達に取り組んでいくことが大切です。

 アメリカでは、SELは、この二〇年間で大きな広がりを見せ、実践や実証研究が進んでおり、SQEQは学びと人生において鍵となるものだと考えられています。SELの実践により、学力が平均11%向上することや、子どもの向社会的行動を促し、鬱やストレスを軽減すると指摘する研究もあります(参考文献45)。現在、CASEL: Collaborative for Academic, Social and Emotional LearningEASEL: The Ecological Approaches to Social Emotional Learningなどの団体をはじめとして、SELに関する研究、実践、政策提言を行う機関やプログラムは数え切れません。日々の学びにSELの視点が重視されている学校が増え、教員向けのSELのトレーニングも普及し、SELに関連する本も数多く出版されています。そのなかで、EQSQは働きかけ伸ばしていくスキルの一つとして捉えられ、客観的に目標と指標を立て、成長が評価されるようになってきています。課題の多い子どもには、個別やグループでの対応がされているところもあります。 (中略)

  本書の文章で印象に残っているのは、「生徒たちは、カバンと教科書だけを持って教室に来るわけではありません。生徒一人ひとりが精神的・感情的・身体的に異なる状態で登校しており、学ぶことに対する準備や意欲も異なっています」(76ページ)という文章です。

子どもたち一人ひとりの状態を知ることは、日々の業務に追われる先生方にとっては、多大な努力を要することと思います。しかし、本書にある具体的な実践方法は、数分でできる小さな方法が多岐にわたって紹介されています。最初から一度にたくさんの方法を取り入れようとはせずに、自分のクラスの生徒に合った方法を一つ、二つと見つけて試し、徐々に増やし続けてほしいと思います。 (中略)

 より多くの子どもたちの日々の学びに、SEL(感情と社会性に関する学び)が取り入れられていくことを願っています。 (以上、訳者まえがきより)

    大内さんは、現在The Right Question Instituteにて、問いづくりのトレーニングと問いを立てることが学びや行動に及ぼす効果についての理論的研究に携わっています。日米の教育にふれるなかで得た知見(特に、学ぶ力を伸ばす取り組み)について広げていきたいとのことです。

 

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