2020年1月12日日曜日

NHKのプロフェッショナル仕事の流儀 数学教師の井本さんの授業を考える


先日、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀をご覧なりましたか? 数学教師の井本さんの紹介でした。
プロフェッショナル 仕事の流儀 答えは、子どもの中に~数学教師・井本陽久~
見逃してしまった方は、再放送 114日火曜日 午前020分〜NHKでご覧ください。

生徒たちが夢中になって学ぶ姿がとても魅力的でしたね。考えることそのこと自体が「自分たちのもの」になっていました。生徒たちは教室内を自由に歩き回り、井本先生がまるでいなかったかのように、問題について夢中になって話し合い、考え合っていました。そう、学習者中心の授業でした。

今回のPLC便りは、なぜあのような姿が生まれるのか? 井本さんの授業づくりについて予想してみます。

従来の一斉授業と比べてみると、その特徴がとてもわかりやすいため、下にリストを作ってみました。すでに放送をご覧になった方は、下のリストを読む前にペンをもって、一斉指導型の授業との違いについて考えてみてから、読んでください。
(リストは、前半は一斉授業にありがちなこと、後半が井本さんの授業でVTRから見取れることを/(スラッシュ)で分けています)

教師について
・教科書の問題を扱っている/先生が教えたい問題を扱っている
・たくさん問題をとく/一つだけ問題をとく
・教えることがいっぱいある/考えさせたいことをしぼりこんでいる
・答えのある問題しか扱わない/答えがない問題を多く扱う
・知識をカバーする/知識を少なくして学びのプロセスをつくっている
・間違いをできるだけ減らす/間違いを歓迎して活かそうとする
・正答を誰が発言するかを予想する準備している/間違えを予想して徹底して準備している
・分からないと進めないから教える/分からないことは夢中になれると考えている
・先生は教えることに忙しい/先生はひまなのでうろうろしている


生徒の様子
・教師に指名されて発表する/勝手に考えを共有しようとする
・自分の席で独りで学ぶしかない/教室内、自由に立ち歩き、どこで誰とでも学び合える
・言われたことをうつす/自分で必要なことを書き出す
・先生が満足/生徒がぷるぷるしている(幸せを感じている)

どうして井本さんのような授業が可能なのでしょうか? 教科書を使わないとこうなるのでしょうか? 多くの教師は教科書を使って(に頼って)よりよく教えようとしています。もし、その教科書をとっぱらって、あなたが本当に教えたいことを教えていいとしたら、一体何を教えますか? それを何で見取って、そのためにどんな教材を選択しますか? あの授業には、教科書はありませんでしたが、生徒の「学びのプロセス」をつくっていました。つまり、何をよりよく教えるのかではなく、人はどのように学ぶのかがよく理解されている授業でした。

この授業のしかけのひとつは、教師が配った問題にあります。一つの授業でたった一問だけ。そのぶん、じっくり考えさせるものです。難しいからこそ誤答をふり返り、修正し、一人では解けないことで仲間同士の交流が自然と生まれ、関係性を引き出し、さらに問題に夢中にさせてしまうんですね。これはうまいやり方です。この授業は何かを教える教師主導型の授業ではなく、生徒に考えさせたい学習者中心の授業なのです。

作家の時間、読書家の時間を算数授業に応用した「数学者の時間」に取り組んでいる先生たちは、このように生徒を夢中にさせてしまい、答えが一つに限らない問題を良問と呼んでいます。同じように1時間でたった1問だけを扱います。ときにはその問題だけに、4時間もかけることだってあります。それでも、子どもたちにとって挑戦しがいのある問題となっています。

きっと、問題を用意している井本先生自身がその問題を本当に好きなのでしょう。その熱量によって、生徒たちは誰もがついうっかりと問題へ誘い込まれてしまいます。だからこそ、井本先生は生徒たちがどのように解いたのか、また間違えたのか、その解答に夢中になれるんですね。VTRでは休日にもかかわらず、朝から晩まで夢中になって授業準備をしている姿がありました。その生徒たちの一見正答のような誤答例を使って、さらに深く考えられるように問題を準備していました。先生自身が自立した学び手であることがなによりも伝わってきます。

「間違えの中にこそ発見がある。その発見が面白い。面白いから生徒は考えることに夢中になれる。その夢中は、人を自然と試行錯誤する人へと高めてくれる」、問題はそんな井本先生の哲学があります。「自分で考えない限り、教師が教えたことは身につかない」と繰り返し訴えていました。言われたことや教えるべき事をカバーするのが先生の仕事と思っていません。生徒に考えさせることが教師の仕事だと、その矜持が伝わってきます。

教科書をカバーすることだけに縛られず、よりよい問題を扱っていくことはできないのでしょうか? 私たち多くの教師は、教科書をいきなり捨てることはできませんし、そう簡単に良問を用意もできそうにありません。どの教室でも、現行のカリキュラムを活かしつつ、よりよい学習者中心の授業を実践する算数ワークショップ「数学者の時間」を、今年中に提案する予定です。「数学者の時間」でも、同じように子どもたちは考えることをもがきながら、楽しんでいます。こういった授業をつくれるように、計画的なミニレッスンで短く教え、試行錯誤できるワークタイム、それを支える教師の個別カンファランス、考えの道筋を記録する数学者ノートを活かし、深く考え、学びを共有し合うことを目指します。今年の出版、期待していてお待ちください。



井本先生は、毎朝、学校で生徒たちに会えるのを楽しみにしていました。先生自身が教えたいことを教えたいように、自由に、ありのままに活きる姿が、生徒たちをもまた魅了しているのかもしれません。数学を通して、自分を信じ、認め合おうと輝こうとする生徒たちに、愛情を伝えているんですね。

皆さんはこの授業のハイライトはどこにあると予想しましたか? よい授業を紹介されると思考が刺激されますね。まだの方は今週の再放送があります。是非ご覧ください。よかったら、ご意見、ご感想をお聞かせください。

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