2019年12月13日金曜日

浅い理解と深い理解から新しい知識をつくるSOLOタキソノミー

SOLOタキソノミーという考え方の分類を聞いたことがありますか? Structure of Observe Learning Outcome :SOLOの略称、「観察学習結果の認知処理分類構造」と呼ばれるものです。1970年代から80年代にJohn BiggsKevin Collisという二人のオーストラリア学者が教育のエビデンス(科学的根拠)を元に提唱したものです。

SOLOタキソノミーとは、人の理解を4つの段階で分類した階層図(タキソノミー)のことです。人が知識を獲得する際に、浅い理解である【単純】な思考から【複雑】な多構造の思考へと発展します。そこから深い理解であるそれぞれの【関係性】から、他の領域への【拡張】へとしだいに複雑化して、新しい概念や世の中の成り立ちを理解していきます。




SOLOタキソノミーの4分類
⓪【Prestructual :知識前の状態】まだ何も知らない状態、または思い込みなどのまちがっている思考段階

物理的で具体的な浅い理解
①【Unistructual :一つの考え・単一構造】課題の1つの側面だけが取りあげられる思考の段階。例「太陽から最も遠い惑星はどれですか?」
②【Multistructual: 複数の考え・多構造】課題について2つ以上の側面で取り上げられ、対象とする量が増え複雑化している思考の段階。しかし、まだそれぞれは相互に関連していません。「地球に最も近い惑星はどれですか?3つ挙げましょう」

複雑化される深い理解
③【Relational :関連する考え・関係構造】全体に一貫した構造と意味を持つように、関係性をみつけて統合していく思考の段階。「太陽からの距離と惑星の温度関係を説明しましょう」
④【Extended/Abstract :拡張する考え・拡張・抽象化構造】一貫性のある関係構造は、より高いレベルに一般化されます。未経験な問題解決へと思考を活用する段階。「太陽に対する地球の位置を考えると、地球の気候と季節にどのような影響を与えますか?」



これを算数問題に適用すると以下のようになります。



①【一つの考え・単一構造】「図のようなマッチ棒3軒の家には、何本のマッチ棒が必要ですか?(答え13本)」図に示されているマッチ棒を直接数えることで簡単に解決することができてしまいます。

②【複数の考え・多構造】「それぞれ家に必要なマッチ棒の数はいくつですか?(答え5本)」ここでは、それぞれの家の棒を数える必要があります。ここでは家とマッチ棒の数の関係性を導き出すためにまだ情報を集めている段階です。

③【関連する考え・関係構造】「53つの家を作るにはマッチがいくつ必要ですか?(答え213本)」マッチの数が増えていくと、直接数えることが困難になります。そこでマッチの数にきまり(パターン)を見つけ、4本ずつ増加することに目をつけます。

④【拡張する考え・拡張・抽象化構造】「マッチの数を□で、家の数を○で関係を式に表しましょう(4○+1=□)」どんな場合でも当てはまるように式で表現します。これによりどんな家の数でも全ての場合において、問題解決できます。

このSOLOタキソノミーに当てはめて考えることを複雑化していく手順は、なかなかわかりやすいと思いませんか? この問題がもつ数学的な構造(パターンや特徴)を式で明らかにして数学的に一般化をするよい見本です。

しかし、実際の授業において、生徒は「浅い理解」をカバーすることが重要であると思っているけれど、教師自身は実は「深い理解」を教えているつもりになっています。教師の質問の60%が事実の再生、20%が作業手順を答えさせる「浅い理解」に関するものであり、生徒に思考を求めるものはたったの20%に過ぎませんでした。多くの教室ではこの「浅い理解」が教えられ、「深い理解」まで使って本当に教えられていないことが問題視されています。ペーパーテストの評価においては、30%の「浅い理解」と30%の「深い理解」をバランスよく取り入れて出題することも推奨しています★★★。

この分類表は、学習を次のステップへ進むための見通しを示しています。最初の「浅い理解」が土台となり「深い理解」を生み出します。深く考えるための浅い材料なくして思考は深まりません。この「浅い理解」と「深い理解」は、学習する文脈や学習者の知識体系に関連して理解する必要があります。より挑戦的な問題で難易度の高い思考を要求することによって、この「浅い理解」と「深い理解」を通して、新しい概念を自分の中に作り上げ、知識や現実世界への打倒な枠組みをよりよく構築していくことができるのです。

このSOLOタキソノミーを使うことで、あなたが教える学習目標を段階的に定めることができます。さらに、思考をより複雑にするために複数の資料を用いることもできるでしょう。この表を意識しながら授業づくりを見直してみるのはどうでしょうか?



★この資料は英文ですがThe SOLO TAXONOMY Abstract - e-asTTleで検索するとPDF資料で読めます。分かりやすいものとしては動画もあります。こちらも英語ですがテロップをつけて観るだけでもわかりやすいかと思います。

★★2001年に改訂版がAnderson, Krathwohlにより出されました。ブルームの6分類の2番目「知識」の次元を4段階(事実的知識、概念的知識、手続き的知識、メタ認知的知識、)に細分化され、SOLOモデルと類似した設定がみられます。ちなみに、ブルームの最初の2分類(記憶と知識=理解は低次の思考スキル、応用、分析、統合、評価は高次の思考スキルと言われています。授業で時間を費やしているのは、どのレベルでしょうか?

★★★この論文が出た当初はそれぞれのバランスが25%となっていましたが、最近では30%に落ち着いたようです。

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