2019年7月7日日曜日

コミュニケーションが人の心を動かす

コミュニケーションが人の心を動かす。

先日、米Apple社のWWDCというイベントがあった。世界開発者会議(World Wide Developer Conference)の略で、MacなどApple社のデバイスを使ってプログラミングをしている人たちを対象とした世界規模の会議だ。参加費はなんと20万円近くになるらしいが、すぐに満席になることでも有名だ。プログラマー向けのセミナーだけでなく、新製品の発表もあって、Appleファンなら楽しみしているイベントである。

私は、英語のプレゼンテーションの授業を担当していることもあって、Apple社のプレゼンはずっと追いかけてきている。職業的な関心とともに、Appleの一ファンとしても。

今年の基調講演(Keynote Presentation)の冒頭に流されたビデオ(タイトルは「おやすみ、プログラマーさん」"Good night developpers")が秀逸だった。

登場するのは、様々な環境でプログラミングに従事しているプログラマーの人たち。うまくいくことばかりではない。うまくコードが書けず、行き詰まり、わめきちらし、途方にくれる姿が描かれる。しかし、粘り強く書き続けることで、やがて完成をする。そして、Apple社からのメッセージがスクリーンに現れて終わる。

「世界が寝静まっているとき、あなたは夢見ている。」("While the world sleeps, you dream")

何万行にも及ぶプログラムを書き上げた人たちに対する、なんと素晴らしい賛辞であり、エールであろうか。彼らは、世界中の人々の生活を便利で、楽しく、素晴らしいものにするために、情熱を注ぎ続けてきたのだから。世界中のプログラマーが、勇気付けられるメッセージとなっている。





人はいくつになっても褒められることは嬉しいものだ。大人であっても、常に人からの評価が気になる。ネット上でのコミュニケーションの機会が増加した現代では、ますます他者からの評価に敏感になっている人が多いのかもしれない。

ビジネス・マネジメントでは、従業員を「褒める時は人前で、叱る時は一対一で。」("Praise in public, correct(criticize, scold) in private.")というのが一つの常識となっている。

個人を、人前で批判した場合、その人はやる気を無くす。職場の人間関係をも悪くすると言われている。次は、自分自身がターゲットになる危険性を感じるからだ。また、批判した本人も、感情のコントロールができない、リーダー失格の烙印を押されてしまうらしい。

一方、Appleの元CEO スティーブ・ジョブスのプレゼンテーションの技法を紹介した本がベスト・セラーになったカーマイン・ガロは、ジョブズはプレゼンテーションの天才だったが、プレゼンの中で、アップル社の従業員を褒めることを忘れなかったと述べている。仕事を成し遂げた従業員に対する謝辞を公的な場で述べることで、自分自身への信頼性も高まり、従業員の意欲も高まると。*

次のビデオは、俳優のデンゼル・ワシントンが、2017年の NAACP(全国有色人種向上協会)によって表彰された式で行なったスピーチである。圧倒的な存在感と語り口、そして、一緒に歩んでいる仲間たちへの賞賛の言葉が素晴らしい。心を動かすスピーチだ。




学校リーダーも、コミュニケーション力を磨いておきたいものだ。ジョン・F・ケネディ曰く、「スピーチをするたった一つの目的は、世界を変えることです。(The only reason to give a speech is to change the world"」。

あなたの言葉が、同僚を動かし、学校を変えていく。


カーマイン・ガロ著; 井口耕二訳 (2019)『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン : 人々を惹きつける18の法則 』 日経BP社
Carmine Gallo (2010) The Presentation Secrets of Steve Jobs, McGraw Hill, p.134.

 

0 件のコメント:

コメントを投稿