2017年6月11日日曜日

健全な教室の学習環境とは


 ここでいう「健全な教室」とは、「精神的にも肉体的にも安心安全であり、適度のチャレンジがあり、サポートが受けられ、自分の価値を認められているところです。(より具体的には、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』の53ページの表3.1の左側に示されているような、人がなぜ、どう学ぶのかということについての私たちが知っていることを実現している教室のことです)」(以上、上記の本の59ページの訳注より)

 今回は、その『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』の第4章のブッククラブで4人のメンバーが出してくれたハイライトの中から主だったものを紹介します。

 その前に、この章のポイントの一つは、教師、生徒、学習内容の3点からなる正三角形が紹介されているところです(図を参照)。これは、「上手な指導」と言い換えることができます。しかし、それには、3つの要素が同じウェートで欠かせないことがポイントになります。教師だけが、がんばってもダメというわけです。(もちろん、教師も生徒も、学習内容=教科書にお付き合いしている状態では、残るものはありません!)

「ほんとうによい先生とは、生徒を教えることができるし、先生も学ぶことができることがわかっていて、自分を学習環境に一体化できる人のこと・・・生徒と関わり合うことを楽しみ、生徒から吸収します」(p.57)
教室の環境がはるかに大切・・・生徒と教師、そして教室は一緒になって、学びのための小宇宙をつくります」(p.59)→ このことについて興味を持たれた方は、『理解するってどういうこと?』(エリン・キーン著、新曜社)をぜひお読みください。

(リーダーシップは生徒と共有されたものでなくてはなりませんが、)リーダーシップを担うことのできる教師」(p.61)
 「安定感のある教師は毎日、一日じゅう学習者であろうとしますし、教師の役割がもつ曖昧さを楽しむもの」(p.61)
「知っていることをクジャクのように見せびらかす」(p.60)授業はしない。

「彼女は一人ひとりに敬意を払い、共通する性質ばかりでなく、違いについても敬意を払っていました」(p.63 ← 彼女は、「しなやかマインドセット」をもった教師でした。

●「内容―それを学習者にとって切実なものにする」(p.64)
 「(健全な教室で教えられ、学ばれる内容は)生徒にとって大事なものであり、…既知の世界と関連している」「その教科についての練習ではなくて、「ほんとうの」歴史や数学や美術を扱う」「~すぐ使うことのできるもの」(p.66)
 「p.64の下~p.65の上にかけての理科の授業の例が、とても分かり易かったです」

教えることは発見することであって、定式化された手順で問題解決していく営みではありません」(p.67)
 「健全な教室の教師は人間としての自分を生徒の前にさらすことをもおそれません。彼らは生徒を自分に「なつかせ」るリスクをおそれないのです」(p.68)

●「すべての生徒が夢中で取り組んで理解することができるように努力する」「楽しみとやりがいのある課題を欲している」(p.70)

教師が高い期待を設定する。そして多くの階段を提供する。どの生徒であっても、もっとも切実な内容を学ぶに値するのだから、一番優秀な生徒の興味を引いたり、やりがいを感じたりすることについて考えることから始める」(p.71)

「ほとんどの生徒は、どのようにすれば今日自分がいる地点を越えて成長できるのか、その方法を教師が見せるまで、わかりません」(p.71)
 「教師は一日一日と、自分の教える生徒の人生において次第に用なしになっていくべきなのです。解決策を提供する代わりに、生徒が自分自身で物事を明らかにできるようにしていくのです」(p.74)

●「教える営みを生徒と共有する・・・授業のルールやスケジュール、学びの手順について生徒に関わらせ(中略)一緒に評価する」(p.72)
 「自分たちがどのように授業を計画するのか(中略)、授業の進め方をどんなふうに考えているのか、ということを生徒に説明します」(p.73)

「教師のあらゆる仕事の中でもっとも難しいのは、そして生徒の成功にとってもっとも重要だと思われるのは、受容や肯定や挑戦やサポートを提供しながら、教室の住人である一人ひとりを日々学びにいざなう教室環境をつくり出すということなのです」(p.76)

私がこの章で一つのハイライトをあげるとしたら、章の最初に掲載されている高校生の引用(「ほんとうによい先生とは・・・」)です。子どもたちは、すでにお見通しです。それは高校生だからではありません。いい学校のつくり方を書いた『いい学校の選び方』(中公新書)には、小学校4年生が同じレベルのことを語っているのが収録されていますのでぜひご覧ください。(入手が難しいけど、ぜひ読んでみたいという方は、pro.workshop@gmail.comへご連絡を。4年生の引用部分をお送りします。)



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