2016年3月20日日曜日

多様な教師のニーズに応える教員研修を!

いま、子どもたちの能力差というか、多様性に応じた教え方の本を訳しています。
この本は、2000年ごろに出版社数社に翻訳のアプローチを持ちかけましたが、まったく興味をもってもらえなかったので、時期が来るのを待つことにし、15年間も置いたままにしたものを、昨年の暮れにある出版社にアプローチしたところ、企画として通りました。(原書の第2版が2014年に出たので、いいタイミングでした。もちろん、訳しているのはこちら。)

その本の最後に、子どもたちの能力差/多様性に対応する教え方を求めるなら、まずは教員研修でそれをしない限りは無理、というのが出てきます。
まったくです!!
子どもたちのもっている「体験、レディネス、興味・関心、知能、学び方、学ぶ動機づけ、得られるサポート」などが一人ひとりみな違うのと同じように、教師たちのもっている「体験、レディネス、興味・関心、知能、学び方(や教え方のアプローチ)、学ぶ動機づけ、得られるサポート」なども一人ひとりみな違います。★

そういう状況であるにもかかわらず、(一つの方法で誰もが同じように成長するという幻想のもとに、)教員研修を実施し続けたところで、効果的であろうはずがありません。従って、圧倒的多数の教師は、研修を「時間の無駄」と捉えています。学べるものや活かせるものが極限的に少ないのです。★★そんな時間に呼び集められるなら、他により意味のあることを過ごせる時間をいくらでもあげられるのです。

でも、これは、子どもたちが日々の授業を受けながら考えていることと同じではないでしょうか?

ということで、まずは教員研修を改善するためのアイディアです。

1.まずはレディネスを重視する
 しっかり扱うテーマに関するレディネスを把握した上で、プログラムを練るのです。そうすることで、どういうグループがいいのかもわかります。講義などで新しい情報を得る必要がある人たちもいる一方で、知識や情報はもう知っているので、それについての具体的な導入の仕方について突っ込んだ話し合いをしたい人たちもいることでしょう。
 (授業で、子どもたちのレディネスを把握した上での進め方やグループ活動などがどれだけできているでしょうか?)

2.各参加者の興味関心を活かす
 研修のほとんどは「上」から降ろされる形で行われます(授業も同じです!!)。まずは、個々の教師が何を改善したいのかこそが大事ではないでしょうか? 自分が取り組みたいテーマに取り組めるなら、より積極になれる人がほとんどではないでしょうか? それは、子どもたちも同じです!!(でも、「授業では教科書をカバーしなければならない」という言い訳が必ず出てきますが、その前提はどこまでが真実でしょうか?)

3.すでに取り組んでいる人や理解している人に指導者役になってもらう
 講師役がすべてを取り仕切る必要などはまったくありません。参加者の中に「すでに取り組んでいる人や理解している人」がいたら、その人たちに指導者役になってもらった方が、誰にとってもいいことです。(同じことは、授業でも成り立つと思われますか?)

4.大切なのは研修の時ではなくて、その後
 すでに、このブログでも繰り返し触れてきたように、より大切なのはフォローアップ、フィードバック、継続的なサポートです
 1回の話を聞いたり、ワークショップに参加してできるようになる人など10人に一人いるかいないかです。そういうイベント的な研修を続けていることが「役に立たない研修」というレッテルを貼られる最大の要因です。(ということは、授業も同じ??)
 ぜひ、最初からフォローアップ、フィードバック、継続的なサポートを組み込んだ形の教員研修プログラムを計画してください。★★★それ以外は、時間の無駄なので。

 教員研修は、教師に成長してもらいたくて行われるものです。授業と学校をよりよくするために。それを実現するためには、そのやり方を変えない限りは無理です。プロセスを教師が楽しみ、そして学べるようにしない限りは。


★ 文科省や各教育センターが当たり前のように実施している「ライフ・ステージ研修」は、このことを認識できれば、いかにおかしなことを行っているかが明らかです。同じ年齢の先生たちだからニーズも同じ、ないし近いだろうという前提は、まったく成り立ちません。(これは、子どもたちの「学年」にも言えそうです!?)単なる、管理のしやすさに過ぎません!

★★ 教員研修を講義形式でやられようものなら、悲惨ですが、ワークショップなどの参加型でも結果はそう変わりません。その時は、参加しましたから印象はいいのですが、各教師たちのもっている「体験、レディネス、興味・関心、知能、学び方(や教え方のアプローチ)、学ぶ動機づけ、得られるサポート」などを無視して行われていることでは、変わりがないからです。

★★★ このために参考になるのは、『「学び」で組織は成長する』(光文社新書)です。


参考:The Differentiated Classroom: Responding to the Needs of All Learners, 2nd Edition, Carol Ann Tomlinson, ASCD, 2014年、(特に第10章)と、



0 件のコメント:

コメントを投稿