2024年6月16日日曜日

教師の働き方(あり方・生き方)を変える2冊の本を読み比べて

 以前は国語教師で、いまは仙台市で管理職をしている飯村先生が書いてくれた2冊の本の「読み比べ」を紹介します。

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 読んだのは、『学校がしんどい先生たちへ それでも教員をあきらめたくない私の心を守る働き方』と『教師の生き方、今こそチェック! あなたが変われば学校が変わる』でした。

 「学校がしんどい」というフレーズに、「わかる、わかる」とうなずく先生は全国に数多いのではないでしょうか。世の中の「働き方改革」の始まりと時期を同じくして、学校の多忙が問題として扱われるようになり、既に数年が経ちます。それでも、こうした本が昨年出版され、そして多くの読者を得ています。つまり、学校の多忙の問題をなかなか変えることができず、そして今なお先生方の心身の健康を削っているということです。

 そんな現状に対して、私たち教員はどうすればいいのか。そのヒントを与えてくれるのが、本書です。「働き方」、「教室」、「職員室」、「保護者」、「プライベート」の5つの分野で、その「しんどい」状況を語り、著者のゆきこ先生がどのようにそれを受け止め、しのいだのか、ということを説明しています。挙げられた話題は、日本の先生ならどれも「あるある」と思い当たる内容です。読者はゆきこ先生のしのぎ方、かわし方をヒントに、自分の身の処し方を考えることができるでしょう。

 一方、一昨年に出版された『教師の生き方、今こそチェック!』は、教師としてバーンアウト(燃え尽き)に陥った人が再生するまでの手引き書です。海外でも教師の「燃え尽き」は大きな問題となっています。もちろん、海外の学校・教育事情と日本のそれとは異なる点がありますが、学校や教育に対して情熱を持っていたはずの人が燃え尽き、疲れてしまっている点は共通のものです。教師としての自分の生き方を見つめ直し、この先、再び疲れてしまっても再スタートできるような手順が紹介されているので、読者はステップを踏みながら再生の道筋を考えることができるでしょう。

 いずれも、教師として学校に疲れている先生方を対象とした本です。この2冊を私なりに解釈し、いくつかの点で比較し、表にまとめてみました。

 このようにみると、『学校がしんどい先生たちへ』は、今現在、学校が辛いと感じている人がひとまず難を逃れ、身を守るために有効だと思いました。実際、紹介されている状況は、多くの先生が体験し、感じている事柄だと思います。日本の現状がすぐ変わるわけではないでしょうから、これらの問題に対する具体的なかわし方はとても参考になることでしょう。

 しかし、ひとまずその場をしのいだとしても、その後、充実した教師人生を送ることができるのか、という疑問が残ります。この本に則って、不要な仕事を減らし、授業での手間も省き、ストレスになるあれこれをかわし、プライベートを確保する、というやり方を採用したとして、本当に納得のいく学校生活、人生になるのでしょうか。もちろん、プライベートは人それぞれ。空いた時間で何をするかは自由ですから、そこまで指図する必要はないでしょう。しかし、その部分のケアも必要な先生はいるのではないでしょうか。

 そうなると、『教師の生き方、今こそチェック!』が生きてくると思います。この本では、ステップを踏んで、自分の問題を把握し、価値観を見つめ直し、自分がどういう人生を歩みたいか、というところまで踏み込んでワークが準備されています。この手順に沿っていけば、自分がどんな人間で、どんな強みがあって、どのような教師人生を送りたいかが見えてくると思います。もう一度、立ち上がるための部分が充実しているのがこちらの本の特長です。

 スティーブン・コヴィーの『七つの習慣』を読まれた方は多いと思います。自己啓発本の最たるものとして有名であり、そこに書かれているのは、まさに自分自身を変えることで環境の捉え方、関わり方を変えていくことです。『教師の生き方、今こそチェック!』も同様です。おそらく著者アンバー・ハーパーは『七つの習慣』の影響を受けており、燃え尽きて疲れた教師を変化させることを使命と感じている人です。この本を読めば、きっと自分の人生を変えることができるでしょう。

 まとめると、現状に疲れて、ひとまず難を逃れ、一息つきたい人は、まず『学校がしんどい先生たちへ』を読むとよいと思います。そして、その後、『教師の生き方、今こそチェック!』を読んで、具体的なワークを通して、充実した人生を目指していくのがよいのではないでしょうか。

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