2019年10月20日日曜日

「学校の学び vs 学校外の学び」


『教育のプロがすすめるイノベーション』が出版されてから、それを素材にしたブッククラブを展開しています。すでに15ぐらい行っています。参加者数は、それぞれ3~5人です。
参加者が、ハイライトとして挙げるものはたくさんありますが、その筆頭の一つは「学校 vs 学校外の学び」(下の表)です。

 一人は次のように言っていました。「左側から右側に移行しないといけないことは“アクティブ・ラーニング”の導入等でほとんどの教師は理解してきているが、実際の転換となると壁にぶち当たっている。」
表の左側をなぜやめられないのか、その理由を聞いたところ、次のようなものが挙がりました。
・教科書とテストの存在
・子どもに任せることができない
・自分が教えないと気が済まないという教師の体質(職業病)

 これら3つは、密接に結びついています。「テストのために、教科書を教えないといけない」という思い込みから解放されている教師を探すことは、いまの日本ではほとんど不可能なのでは、と思うぐらいです。
 すでにWW便り」の4月5日号、「教科書をカバーする教え方とアクティブ・ラーニングは、真っ向から対立しますから、最初から無理があったと言えます。問題は、それを言い出した人たちがそのことに気づいていないことでした」と書きましたが、まさにそういう現状が証明されたわけです。
「アクティブ・ラーニング=主体的・対話的で、深い学び」は、カバー(cover)することの極にあるuncoverdiscoverを求めます。
後者の意味は、自分ないし自分たちで「発見する、見いだす、明らかにする」ということです。それには必然的に主体的(対話的)で、深い学びが不可欠です。
それに対して前者の「教科書をカバーする授業」は、すでに明らかにされるべきもの/発見されるべきものすべてが教科書に書かれていますから、必要なのは単なる暗記だけです。そこに「主体的・対話的で深い学び」が入る余地はありません。

 教師が「教科書をカバーする授業」を続けるということは、『教育のプロがすすめるイノベーション』のもう一つのハイライトである、「従順・服従→夢中で取り組む(エンゲイジメント)→エンパワーメント」(同書の第6章)の「従順・服従・忖度のモデル」を生徒たちに見せ続けることを意味します★。
生徒たちは、教師が「仕方がないからカバーしている」ことをお見通しです!(結果的に、教科書をがんばってカバーし、テストが終わった数日後にはそのほとんどを忘れるというパターンの繰り返しをやり続けることになります。そんな誰もがわかっている無駄なことをいつまで続けるというのでしょうか?)

視点を変えて、結果的に学習指導要領と教科書の内容を押さえるアプローチを取れた場合に(のみ)、アクティブ・ラーニング=主体的・対話的で、深い学びがその有効性を発揮します。それを実現するための具体的な方法が、以下の本に書かれています。
 ・『読書家の時間』
 ・『作家の時間』
 ・『イン・ザ・ミドル』
 ・『誰でも科学者!―探究力を育む理科の授業―』(12月出版予定)
 ・『数学者の時間』(現在執筆中、来年度出版予定)
 ・『市民・歴史家の時間』(現在執筆中、来年度出版予定)
 ・『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』
 ・『たった一つを変えるだけ』
 ・『PBL 学びの可能性をひらく授業づくり』
 ・『成績をハックする』
 ・『宿題をハックする』
 ・『「考える力」はこうしてつける』


従順/服従/忖度のモデルは、教師が一番生徒たちにモデルとして示したくないものではないでしょうか? 残念ながら、構造的に校長は教師たちに、教育委員会は学校に対して、そして文科省は??に対して、モデルを示し続けています。
 そこから抜け出す方法が具体的に書いてあるのが、すでにhttp://wwletter.blogspot.com/2019/07/blog-post.htmlで紹介した、『教育のプロがすすめるイノベーション』と、その続編的な位置づけの『エンパワーメント』(来春出版予定)です。
 

1 件のコメント:

  1. このブログを読みブッククラブに初めて参加し昨日第1回を終えました.少々長文ですがその振り返りを彷徨したいと思います
    191106 発言は人の為ならず
    ブッククラブに参加することでただ読むのではなく深く読むことができとか、他者との交流で新しい気づきをすることを期待していました。けれどもそれよりも重たいのが対話のなかでの自分の発言であるということに気づきました。それは他者の発言も参考になるのですが、自分の発言を後から振り返ることが自分の考えを深めるということです。
    先日の交流の中で、私は「ブッククラブは手段で、それぞれの持っている課題を発見し、それを解決していくことが大事だ」というような発言をしたのですが、自分の課題は、自分たちが行っている取組みを多くの人に知ってもらうことだというこということにあの後自問自答をする中で気づいたのでした。
    教育はひとりではできません。学校の教員だけでももう限界です。「社会に開かれた教育課程」ということが新しい学習指導要領のキーコンセプトとなっていますが、教員にわかってもらうだけでも大変なことを、保護者やPTA、地域や教育委員会など学校をとりまく人々に知ってもらうことによってサポーターを増やしていくことが欠かせないのですが、今回のAグループのメンバーはそれを実行するのにぴったりの構成となっています。
    そこで、その取り組みの一つとして、この本と出合う前に友人から高校改革の視点から私の勤務校を紹介してほしいと依頼があって作成していたスライドを添付したいと思います。
    まだ、作成途中のモノで、しかもスライドだけなので、わかりにくいと思うのですが、勤務校で取り組んでいるイノベーションが皆さんをインスパイア―することを期待してファイルを添付します。
    また、私の個人的な課題としても、準備なしに話をするのが苦手で、限られた時間の中で自分の考えを言葉だけで伝える瞬発力が弱いということがあります 
    昨晩は興奮して寝付けなかったのですが、このふりかえりも夜中に目が覚めた時に思いついたことをメモって一晩寝かせたものをまとめたものです。
    これまでラーニングピラミッドを示しながら誰かに説明することが一番の勉強になるというようなことを生徒に話してきたのですが、自分のなかで、もやもやしていたことを言葉になおしたり、読むことによってその「ことば」と出合うことが思考を可視化させ、自分をエンパワーさせる。この後のブッククラブでは積極的に発言しようと考えました。

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