2017年2月12日日曜日

質問とフィードバックの効果~学びを継続するための鍵~


 5週間前のPLC便り「振り返りこそが学び/成長の鍵~年間を通して振り返る」http://projectbetterschool.blogspot.jp/2017/01/blog-post_8.htmlでは、子どもたちや保護者も巻き込んでの「振り返り」=「形成的評価」の重要性とその効果について、手紙形式やアンケートによるものなど具体的な方法論と共に紹介されていました。ぜひ、実践していただきたいと思います。 

 「振り返りこそが学び/成長の鍵」であると同時に、学ぶことに対しての興味・関心を高め、学び続けることを可能にするためには、学習者自身(子どもたちや先生方)が、「質問(問い)」をもつことと重要な他者(教師や親・家族、友人、メンターなど)からの「フィードバック」がなされることの二つが、重要ではないかと考えるようになりました。 

その一つのきっかけは、『たった一つを変えるだけ~クラスも教師も自立する「質問づくり」』Dan Rothstein & Luz Santana(著),吉田新一郎(訳)2015年[新評論]や 、『最高の結果を引き出す質問力』茂木健一郎(著)2016年[河出書房新社]、『GRIT~やり抜く力』Angela Duckworth(著),神崎朗子(訳)2016年[ダイヤモンド社]の3冊を読む機会があったからです。 

『たった一つを変えるだけ~クラスも教師も自立する「質問づくり」』では、「生徒たちが輝く授業」=「ワクワクする授業、生徒が主役になる授業、教科書を結果的にカバーする授業」→「テストを過剰に意識しない授業、自分たちの質問に焦点を当てた授業」→「楽しい探求=自分の質問を解き明かす学び」→「テストが終わっても残る、身につく」、そんな子どもたち自身による主体的な学びが実現できるようにするための「質問づくり」の実際について、具体的に紹介されている魅力的な本です。★ 

『最高の結果を引き出す質問力』は、学生や一般社会人を対象に書かれたものです。質問とは、「自分自身との対話」であり、組織や社会・世界・自分の人生を変えるためには、他人に言われたことをやるのではなく、どんなに小さなことでもよいから、自分自身の頭で考えて行動することが大切である。そのためには「質問力」を高めることが必要であり、そのための重要なステップは、「感情力」:モヤモヤとした違和感を感じる力 →「メタ認知力」:自分の感情や状態に気づく力 →「論理力」:論理的にものごとを考える力 の3つである。自分の置かれた現状や生き方・人生を変えるための「いい質問」や「質問力を高めるための具体的な方法・アクション」について書かれています。 

 3冊目の『GRIT~やり抜く力』では、ビジネスパーソンやアーティスト、アスリート、ジャーナリスト、学者、医師、弁護士、大学生、士官候補生、グリーンベレーなど、様々な人々を対象にしたインタビュー調査やアンケート調査、心理学的実験の結果に基づいて、「やり抜く力」について述べています。パート1で「やり抜く力」とは何か?なぜそれが重要なのか?、パート2で「やり抜く力」を内側から伸ばすこと、パート3で「やり抜く力」を外側から伸ばすことについて、エビデンスとともに具体的な方法が、わかりやすく紹介されています。 

 この本の中で印象的だったのが、第10章「「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法」で紹介されているデイヴィッド・イェガーとジェフリー・コーエンという二人の心理学者が行った実験です。実験の目的は、「高い期待を伝えるメッセージと」と「惜しみない支援」を組み合わせた場合の効果を検証することでした。 

 実験では、中学校1年生を受け持っている教師たちが、生徒たちの作文に対して、「フィードバック」の言葉を書くように指示されました。「ここをこうしたら、さらによくなる」という提案とともに、いつも書いているような「励ましの言葉」を書くのです。それらの作文は回収され、無作為に半分ずつに分けられました。そして、半分ずつの作文には、それぞれ次のようなメッセージの書かれた付箋が貼られたのです。 

A:「あなたの作文へのフィードバックとして、いろいろコメントを書き入れました。」

B:「あなたなら、もっと作文が上手になると思うので、いろいろコメントを書き入れました。期待しています。」 

 もちろん、どちらの付箋が貼られているか生徒たちにはわからないようにするため、作文はフォルダーに入れたまま生徒に返されました。そして、生徒たちには「作文を手直ししたい人は、ぜひ翌週に再提出してください。」と伝えられたのです。 

 その結果は、Aの内容のメッセージを受け取った生徒の再提出率は40%であったのに対して、Bの内容のメッセージを受け取った生徒の再提出率は80%を超えていたのです。 

 つまり、生徒にとって「重要な他者(教師や親・家族、友人など)」から「高い期待」を込めたプラスのフィードバック、ストローク・はたらきかけを行うことによって、学びに対する意欲を高めることができるのです。このことは、子どもたちだけではなく、私たち大人・教師にとっても同じことがいえるはずです。 

 最後に、「質問」と「フィードバック」の二つを効果的に行うための具体的な方法は、これまでに何回も紹介されてきている「大切な友だち」のやり方です。授業だけでなく様々な学びの場で実践してみてください。http://projectbetterschool.blogspot.jp/2012/08/blog-post_19.html 


★ この本の第4章「生徒たちが質問をつくる」では、中学校や高校の理科における「質問づくり」の実際と問題への対処法について、事例を挙げてわかりやすく紹介されていて参考になります。また、「振り返る」ことの重要性についても、第8章「学んだことについて振り返る」を設け、「学びを促進するためのメタ認知思考」を高めることについて述べられています。

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