2016年7月3日日曜日

理科におけるアクティブ・ラーニング ~子どもたちの自ら学ぶ意欲・主体的な学びを育てるための要因とプロセス~


    PLC便りでは、619日と前回の26日の2回にわたって「アクティブ・ラーニング」=「子どもたちが主役の学び」について取り上げられています。65日にも、理科におけるアクティブ・ラーニングの例として、『発展研究』(単元の学習終了後に行う「課題設定学習」と「課題選択学習」)について紹介しました。


今回は、その『発展研究』が子どもたちに及ぼす効果・影響について、生徒の理科学習に対する「イメージ調査」と発展研究に対する「自己評価」(自己評価票については、65日のPLC便りを参照)の結果に基づいて、説明します。

さらに、これらの結果と子どもたちの『発展研究』に対する感想などから、『発展研究』における、子どもたち自身による主体的で、能動的、協同的な学びを促進する要因、およびそれぞれの関連やプロセスについて、考えてみました。



『発展研究』に対するイメージ調査の結果より( 別添図1)

理科の学習に対するイメージ調査は、単元「植物の生活と種類」の学習終了後と『発展研究』の終了後の2回実施しました。結果は、イメージ調査の項目において、「おもしろい」「やりたい」「価値がある」「良い」「身についた」「興味のある」「わかる」「積極的な」「目的のある」「自分からやった」「努力した」「好き」「満足な」などを中心に、すべての項目が、『発展研究』を行った後の方が行う前よりもプラス方向に変容しています。

特に、大きな伸びを示した項目は、「おもしろい」「やりたい」「興味のある」「わかる」「積極的な」「目的のある」「自分からやった」「努力した」「好き」の9項目です。


つまり、子どもたちが『発展研究』に対して《面白さ・楽しさ》や《学ぶ価値》を強く感じ、その探究のプロセスを通して《自ら学ぶ意欲》が向上し、《主体的・能動的な学び》になっているということが読み取れます。

■ 『発展研究』に対する生徒の自己評価の結果より(★★ 別添図2)

(1)「学習内容」に対する自己評価の項目では、「今までよりよくわかった」「今までよりおもしろかった」「いつもより満足な授業だ」の評価が、高いものとなりました。

すなわち、『発展研究』において、「学習課題を自分自身で立てる」、あるいは「自分で選択する」、そして、その「自分たちの学習課題を解決するための観察・実験計画を仲間と協同しながら作成する」ことを通して、単元の学習で学んだ知識・情報が再構成・精緻化され、子どもたちの学習内容の理解が促進され、さらに、学習内容に対する興味・関心も高まったと考えられます。

つまり、『発展研究』に取り組んだことによって、子どもたち自身が《充実感》や《満足感》を感じているということがわかります。

(2)「自分の学習活動」に対する自己評価の項目では、「一所懸命やった」「いつもより考えさせられた」「今までより実験に多く参加した」「目的がいつもよりわかっていた」「自分の考えを多く生かせた」「もっと深く学習したい」の評価が、高くなりました。

すなわち、『発展研究』という探究活動を通して、子どもたちの《自ら学ぶ意欲》が向上し、《主体的・能動的な学び》が促進されるとともに、《充実感》や《達成感》、《有能感》が高まり、探究活動に対する新たな動機付けになることがわかります。


  
『発展研究』における生徒の自ら学ぶ意欲・主体的な学びを育てるプロセスモデル

先に述べた生徒の「イメージ調査」や「自己評価」の結果、さらに「自己評価票」や「発展研究レポート」、研究発表会の「プレゼン資料」などに書かれた生徒の感想を基にして、『発展研究』として単元の学習終了後に行う「課題設定学習」「課題選択学習」について、子どもたちの主体的で、能動的、協同的な学び・探究活動(理科におけるアクティブ・ラーニング)を促進する要因を考えてみました。


そして、それらの要因の関連とプロセスについて、櫻井茂男(2009)の「自ら学ぶ意欲のプロセスモデル」を参考にしながら、「『発展研究』における生徒の自ら学ぶ意欲・主体的な学びを育てるプロセスモデル」として図にまとめてみました(★★★ 別添図3)。なお、櫻井のモデルとの違いは、<学習行動レベル>の中に、「課題解決の見通し」と「他者との相互作用・連携」を新たに加えた点です。


 子どもたちの主体的な学びを支える土台は、2つあります。その一つは、この図の最も下にある【安心して学べる人的環境】すなわちクラスの仲間や教師との信頼関係・温かな人間関係です。もう一つは、発展研究・探究活動を進めていくための【情報】つまり知識や観察・実験を行ったり、ICTを活用したりするための技能です。


 下から2番目の<欲求・動機レベル>では、やはり【動機(目標の設定)】:自分なりの目標・問題がもてること、すなわち、自分自身で課題を設定したり、選択したりすることが、最も重要なことです。この意味で、子どもたちの主体的な学びを育てるための出発点は、子ども自身が、自分であるいは自分たちで問い・問題・課題をもつことだといえます。


 3番目の<学習行動レベル>では、クラスの仲間や教師など【他者との相互作用・連携】を通して、【課題解決の見通し】をもち、【情報収集】【深い思考】【挑戦行動・試行錯誤】を繰り返しながら、【独立達成・協同達成】:自分たちの手で課題解決を目指すのです。


そして、最も高次の<認知・感情レベル>にある【有能感】や【充実感・達成感】、探究活動の【面白さと楽しさ】を感じることができ、心のエネルギーが満たされ、次の新たな探究活動へつながっていくのです。


[参考]

櫻井茂男(2009)「自ら学ぶ意欲のプロセスモデル」『自ら学ぶ意欲の心理学』pp.21-36,有斐閣






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