2012年3月11日日曜日

PLCの評価基準表・その2

すでに、2回目のPLCの評価基準表として「子どもたちの学びに焦点を当てて授業がされている度合いはどれくらいか?」を用意していたのですが、“いま人事評価の真っ最中”というメールをある校長先生からもらい、急きょ5番目の項目の「結果志向の度合いはどれくらいか?」の評価基準表づくりに変更しました。

今はまさに「評価/成績の季節」です。
先生たちは生徒たちの、管理職は先生たちの。
相当の時間を費やしますが、果たしてその努力のどれだけが、生徒や先生たちの学びにつながっているのでしょうか?
答えは、学校のPLC度と同じ、だと思います。(両者は、切っても切れない関係にあるからです。)
もちろん、学びにつながる率が低いのは先生たちや管理職のせいではありません。
費やす努力や時間が足りないのではなく、意味のないことをやらせる制度がおかしいのですから。

今の時期に評価をされても、その結果をもらう側は、どうしようもありません。修正・改善する時間も方法も提供されないのですから。従って、結果を活かせる人は1~2%もいたら、「めっけもん」です。「なんとか次はがんばるぞ~」と思う人も1~2割はいるかもしれませんが、春休みの間に忘れてしまいます。(タイミングの問題も大きいです!)
私自身も、学期末や学年末の評価を活かせたためしがありません。それは、「もらうもの」以外の何物でもありませんでした。その結果から何かを始めるものではありませんでした。
要するには、結果的に記録に残るもの(=単なる副産物にすぎないもの)が、いつのまにか目的化して、本来の目的である「生徒や教師の学びをよくするため」の方は完全にどこかに吹き飛んでしまっています。生徒たちの評価に関しては、その状態が、もう何十年も続いています。ということは、「評価とは何ぞや」がそもそも理解されていないし、実践もされていないことを意味してしまいます。

日本でも、「アカウンタビリティ」という言葉が「説明責任」に訳されて結構普及してからもう10年ぐらいにはなるでしょうか? アカウンタビリティには確かに説明責任の部分もありますが、より大きなウェイトは「結果責任」のほうにあります。日本では、そのより重要な部分が丸ごと無視され続けています。
学期末や年度末に先生たちや管理職が成績をつけることを「結果責任」と捉えると、今しているような評価はできなくなってしまいます。
教師は生徒たちの学力/能力★を伸ばす役割を、管理職は教職員の能力・資質★を伸ばすことで、生徒たちの学力/能力を伸ばす役割を担っています。今のままでは、ほとんどの教師と管理職は責任を放棄しているとしか言いようがありません。生徒たちも教師たちも、能力や資質をしっかり伸ばせるような仕組みになっていないのですから。

それでは、「結果志向の度合いはどれくらいか?」の評価基準表はどんなものになるか考えてみましょう。今回は、表の形で提示しますが、A(初歩的な段階)とD(目指すべき段階)だけで、間のBとCは省きます。(表をクリックすると、拡大して見られます。)



結果志向のイメージ、つかめたでしょうか?
詳しく知りたい方は、『テストだけでは測れない! ~ 人を伸ばす「評価」とは』(NHK生活人新書)と『効果10倍の学びの技法 ~ シンプルな方法で学校が変わる』(PHP新書、特に第4章の「評価が変わると授業が変わる、学校が変わる!」)を参照ください。
疑問や質問がありましたら、ぜひ聞いてください。

   <以下、メルマガの続き>

★身につけないといけない学力や能力・資質

学校の教育目標は、「考える子、思いやる子、鍛える子」に象徴されます。
しかし、残念ながらそれを忠実に実践している学校は、ほとんどないのが現状です。

「考える子」だけをとっても、思考の6段階がすでに50年以上前に提示されているのですが(下の表を参照)、日本の授業で大切にされ続けているのは、いいところ最初の2段階です。最近は、「習得」だけでなく、「活用」「探究」と言われ始めていますが、総合的な学習が散り去ってしまったように、先生たちの中にそれらを取り込める授業のイメージがついている人は一握りもいません。右側の、「理解するとは?」のレベルで実践ができている人も、どれほどいるでしょうか? 教育や、学力や能力には、そういうものも含んだものであるはずなのに。(常に、テストで測れる学力や能力のみに流されています。)

表: 思考力の6段階(ブルームの思考力)
  ・ 暗記力
  ・ 理解   ⇒  理解するとは?
  ・ 応用力       ① 説明する
  ・ 分析力       ② 解釈する
  ・ 統合力       ③ 応用する
  ・ 判断力       ④ 自分なりの視点をもつ
               ⑤ 他者の立場に立てる
               ⑥ 自分を知る
                  (出典: Understanding by Design)
→ さらに刺激的なリストをお求めの方は、To Understand, by Ellin Keeneを参照ください。

以上は、知識の獲得を中心にした思考力について見ましたが、残りの2つの「思いやる子、鍛える子」も似たような状況にあります。
たとえば広い意味での「思いやる子」や「鍛える子」ともオーバーラップするところのあるEQ、ライフスキル、社会人基礎力といった資質や態度は、いったいいつ磨いたり、練習されたりしているのでしょうか? ちなみに、これらは子どもたちが身につけることを求められているだけでなく、教師や管理職にも不可欠なスキルや資質です。
結果志向という観点から、小学校低学年段階でも2年ぐらい取り組めばEQとライフスキルのほとんどが身についてしまう方法はあるのです


★★SMARTなゴール(目標)とは、
S = Specific 明確である
M = Measurable測れる ~ 評価の基準が示されている(大切なのは、最終評価ではなく、継続的なモニタリングと修正・改善をすることによって、目標を達成できること)
A = Attainable 努力すれば実現できる
R = Result-oriented 結果志向である
T = Time-bound スケジュールが示されている
      (出典: 『校長先生という仕事』平凡社新書、154ページ)

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