2026年4月19日日曜日

教師の力を引き出すチームの5つの特徴

学校を変革へと導く力のあるリーダーシップチームを育てるヒントを紹介します

 

 私★★は最近、「学校の中でのよいチームとは何か」についてよく考えています。これから私自身の考えを少し共有しますが、ぜひあなたの意見も聞かせてほしいと思います。

正直に言うと、私が「チームの力」を信じられるようになるまでには、かなり時間がかかりました。つい最近まで、私はチームで良い経験をしてこなかったのです。一人でやったほうが、必要なものをより良く、より早く作れると感じていました。チームで仕事をすると、いつもプロセスが遅くて、面倒に思えてしまったのです。結局、自分が(任されるか、自分で引き受けるかして)仕事の大部分を担うことが多いと感じていました。そもそも、どんなチームが「よく機能するチーム」なのか、どう協働すればいいのか、そしてチームで働くことにどんな利点があるのか、よくわかっていなかったのです。

 しかしここ数年、いくつかの異なるチームでの経験が、私の考えを大きく変えました。今の私は、「よいチームをどうつくり、どう育てていくのか」、そしてその過程でコーチやファシリテーターがどんな具体的な働きかけをしているのかを明らかにしたいと思うようになっています。学校を変革できるような、力のあるチームをどう育てられるのかを探りたいのです。

なぜ力を生み出すチームが重要なのか

私たちが「よいチーム」についての考え方や実践を言語化する必要があると思う理由は、次のとおりです。

学校の中に「強いチーム」があることは、教師を定着させ、長く働き続けてもらうために欠かせない!

離職率の低い学校(たとえ都市部の厳しい環境であっても)では、教師たちは同僚とのつながりや支えを感じていると語ります。また、自分が「同じ使命を果たそうとしている仲間の一員だ」と感じられるとも言います。こうした文脈で生まれる感情こそ、困難な取り組みに長く関わり続ける力になります。今、公教育はとても厳しい状況にあります。だからこそ、私たちには、感情的なレジリエンスを育てる仕組み(強いチームなど)が必要なのです。

効果的に機能するチームであれば、メンバーは互いから学び合える。

一人では到底できないようなことを達成できます。互いに刺激を与え、挑戦し合うこともできます。個々の強みを最大限にいかすことができ、苦手なことを無理に一人で抱え込む必要もありません。これは、学校改革のような大きなプロジェクトに取り組むうえで、とても効率的なアプローチであり、何より気持ちがいいものです。

 

良いチームとは何か?

私が考える「良いチーム」の主な特徴をいくつか挙げます★。

1. 良いチームは、自分たちが「なぜ存在するのか」を知っている。

「私たちは6年生担当の教師チームです」と言うだけでは不十分です。それは単に属性(同じ学年を教えている)を示しているだけであって、チームが存在する理由ではありません。チームとしての存在目的の一例は、次のようなものかもしれません。
「私たちは互いを支え合い、学び合い、6年生の子どもたちのニーズによりよく応える方法を見つけるために集まっています。」それを「目的」と呼んでも「ミッション」と呼んでも構いません。大切なのは、参加する人が「また会議か」という義務感で集まるのではなく、その目的が自分にとって意味があり、価値があり、明確であると感じられることです。

2. 良いチームは、学びの場をつくる。

学校で働く私たちがチームとして集まる理由はさまざまですが、私はそのどれにも「互いに学び合う機会」が含まれているべきだと考えています。学びたくない教育者に、私はほとんど出会ったことがありません。私たちは本来とても好奇心が強く、教育について学ぶべきことは尽きません。だからこそ、よく機能するチームでは、安心できる文脈の中で学びが起こります。失敗してもいいし、リスクを取って挑戦してもいいし、どんな質問でも遠慮なく投げかけることができます。

3. 良いチームには、健全な対立がある。

もし私たちが一緒に学び、何かのプロジェクトに取り組んでいるのであれば、意見のぶつかり合いは避けられないし、むしろ不可欠です。アイディアについて異なる見方をし、建設的な対話や異議が交わされ、互いの思考が押し広げられていきます。

4. 良いチームのメンバーは、互いを信頼している。

信頼があるということは、避けられない対立が起きたときにも、それをきちんと扱えるということです。メンバー同士が互いをよく知り、耳を傾け合い、どのように関わり合うかについて合意をもち、その合意を大切にしながら活動します。また、ファシリテーターのように、場の安全性を確保する役割を担う人もいます。さらに、信頼を育むためには、強いチームの中で公平な参加意思決定の共有が見られることが重要です。そこには、社会に存在する不平等なパターン(たとえば、男性が発言を支配するような構造)が再現されることはありません。

5. 良いチームには、ファシリテーターやリーダー、またはリーダーシップを共有する仕組みがある。

チームには、舵を取る人――あるいは持ち回りでその役割を担う人――が存在します。そのおかげで、チームが高いレベルで機能するために欠かせない、意図的な運営・計画・その場でのファシリテーションが確保されます。

 

次に何をするのか?

この最後のポイントこそ、私がこの秋ずっと考えてきたテーマです。良いチームリーダーは何をするのか? 具体的にどのようにファシリテートするのか? リーダーシップはどのようにローテーションしたり、共有したりできるのか?

私は今、素晴らしいインストラクショナル・コーチのチームと一緒に働いており、私たちはこの問いについて共に考えています。このチームの存在には本当に感謝しています。

私たちは現在、コーチのための「ファシリテーション・ルーブリック」を作成しています。これは、学びにとって目的が明確で安全なチームを育て、私たちが支える子どもたちの成果や経験をより良くするために、コーチがどんな具体的な働きかけをしているのかを特定し、言語化するツールです。このツールが私たち自身の実践に役立つだけでなく、他の人にも有益なものになることを願っています。

 次の投稿では、私たちが行っているファシリテーションの具体的な工夫について紹介する予定です。その間に、ぜひコメント欄で、あなたが「よく機能するチーム」で働いた経験や、「良いチームとは何か」についての考えを共有してください。

 

★「良いチームの特徴」で思い出すのは、IT大手のグーグルが実施したプロジェクト・アリストテレスというプロジェクトを2012年に実施していたことです。そこでは、次の5つの条件が挙げられました。

  1. 心理的安全性(安心して発言・質問・失敗できる)
  2. 信頼性(メンバーが責任を果たす)
  3. 構造と明確さ(役割・目標・計画が明確)
  4. 仕事の意味(個人にとって意義がある)
  5. 仕事の影響(自分の仕事が価値を生んでいると感じる)

なお、グーグルはその前に「よいリーダーとはどんな特徴をもっているか」を明らかにするProject Oxygen(プロジェクト・オキシジェン)も行っており、次の8つが挙がっていました。

  1. よきコーチである。
  2. チームを後押し、細かいマネジメントはしない。
  3. チームのメンバーの成功や生活に対し、関心がある。
  4. 臆病にならない――生産的で結果主義である。
  5. よいコミュニケーター――とくに、よい聞き手である。
  6. 部下のキャリア形成を助ける。
  7. 明確なビジョンと戦略をもっている。
  8. チームにアドバイスできるだけの技術的な専門知識をもっている。(出典:『最高の授業~スパイダー討論が教室を変える』の20~24ページを参照)

 

★★=出典: https://www.edutopia.org/blog/5-characteristics-effective-school-team-elena-aguilar

 この記事は、『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーさんが2015年の6月22日に書いた記事です。SEL便りで紹介した「学校で『機能するチーム』をつくる鍵 ― 感情的知性(EQ)」https://selnewsletter.blogspot.com/2026/04/eq.html)も参考になりますので、ぜひご覧ください。

2026年4月12日日曜日

安心して『まちがえ』や『わからない』を出せるために よい聴き手を育てる前に大切な事

怒濤の新学期が始まり、ちょうど一週間が過ぎた頃ですね。多くの先生方が、少しずつ疲れを感じ始めている時期ではないでしょうか。僕もまったく同じです。学期の初めは、学級のルールを決めたり、子どもたち同士の関係づくりを進めたり、とても密度の濃い時間が続きます。その分、子どもたちとの関わりに、たくさんのエネルギーを使ってこられたことと思います。

学校生活はこれから一年間続いていきます。最初の頑張りをそのまま保ち続けるのは、なかなか難しいもの。だからこそ、この時期に大切にしたいのは、無理を重ねることではなく、日々の授業を少しずつ豊かにしていくことです。毎日の積み重ねの中で、子どもたちの学びが深まっていくような土台をつくっていきたいところ。

その土台として欠かせないのが、「ききあう」という営みです。子どもたち同士が互いの考えに耳を傾け、受け取り、言葉を返していく。そのやりとりの積み重ねが、関係を育て、学びをより深いものにしていきます。教室の安定や成長は、こうした日々の小さな関わりの中から生まれてくるのだと思うのです。

子ども同士の対話を考えるとき、東京大学准教授の一柳智紀さんから学んだ「発表的会話」と「探索的会話」という二つの見方が参考になります★。発表的会話は、考えを整理して分かりやすく伝えるやりとりです。まずは、よくある「教える/教わる」関係になりやすい例を見てみましょう

Aさん「この計算、よくわからないんだけど…(2517を示しながら)」

Bさん「2517を足すだけだよ。まず5712になるでしょ。そして、2を書いて1をくり上げる。簡単じゃん!」

Aさん「うん

Bさん「次に2114になるから答えは42。こうやればできるはず」

Aさん「そう、そうなんだ(じつはまだよくわからない)」

「できた人が説明する」という場面は、まさにこれにあたります。考えをまとめる力や伝える力を育てるうえでは、とても大切な時間です。ただ、このやりとりだけに偏ってしまうと、「正しい答えを発表する場」になりやすく、考えの途中にいる子どもたちの思考が表に出にくくなってしまいます。

それに対して、探索的会話は、まだまとまりきっていない考えを出し合いながら、少しずつ理解をつくっていくやりとりです。

Aさん「この計算、よくわからないんだけど2517を示しながら)」

Bさん「じゃあ、一緒に考えよう。2517を足すんだよね。まず、どこからたすんだっけ?」

Aさん「うーん、57から? だから12、かな」

Bさん「うんうん、12だね。5712。それで、次にどうするんだっけ?」

Aさん「2を答えに書くでしょ。繰り上がりどうするんだっけ?」

Bさん「うーんと、1をくり上げるんだったよね。で、残りは十の位の21

Aさん「くり上がりがあるから、211で、4になるの?」

Bさん「そうそう!そうだね。4になる。だから答えは…」

Aさん「あぁ!42だ。自分でも少しわかってきた!」

「うーん、こうかな」「ちょっと違うかも」といった迷いや試行錯誤を含んだ言葉が行き交います。結論を急ぐのではなく、過程を共有しながら、一緒に考えをつくっていく時間です。子どもたちの思考が本当に動いているのは、こうした場面だと感じることが多いのではないでしょうか。

ここで一つ考えてみたいのが「良い聞き手」とは何かということです。たとえば、分からない問題に出会ったAさんに対して、Bさんが「じゃあ一緒に考えよう」と声をかけ、少しずつ考えを引き出していく場面があります。Bさんは答えを教えるのではなく、「次はどうするんだっけ?」と問いかけながら、Aさんの理解を支えています。

こうした姿を見ると「Bさんのような聞き方を育てたい」と思うのは自然なことです。しかし、ここで見落としてはいけないのは、そもそもAさんが「よく分からない」と言えていることです。この一言があるからこそ、対話が始まり、学びが動き出します。

もし、分からないことを言いにくい教室だったらどうでしょうか。

まちがいを避けたり、できているふりをしたりする中では、このようなやりとりは生まれません。だからこそ、本当に大切なのは「良い聴き手を育てること」だけではなく、「分からないと言っても大丈夫だと思える教室をつくること」です。

人とちがう考えでもいい。途中の考えでもいい。はっきり分からなくてもいい。そうした思いをそのまま出せる安心感があるとき、子どもたちは少しずつ言葉を出し始めます。そして、その声に応じて周りの子どもたちが関わることで、探索的に対話が自然と深まっていきます。

そのために、まずできることはとてもシンプルです。小さな声でもきちんと届く「(音として)聞く」教室をつくることです。静かにしてから話し始めるという基本を大切にし、一人ひとりの声を丁寧に受け止めていくこと。そして何より、教師自身が子どもたちの言葉を受け止めて「(受容的に)聴く」姿を見せていくことです。

新学期で忙しい日々が続く中ではありますが、授業づくりを考えるとき、こうした「ききあい」を少しずつ練習し、積み重ねていくことが、結果的に教室全体の学びを支えていきます。焦らず、一歩ずつ取り組んでいければと思います。教室の中に、あたたかな「ききあい」の文化が育っていくことを願っています。

子ども同士の対話の質を問い直す「発表的会話」と「探索的会話」

https://projectbetterschool.blogspot.com/2025/09/blog-post_14.html

2026年4月5日日曜日

ジャーナリングを始めませんか

新年度が始まりました。あれもやりたい、これにもトライしたい。とてもポジティブな空気に満ちているでしょうか。それとも、新しいスタートに強い不安を抱えて、おしつぶされそうになっているでしょうか。

一喜一憂しても仕方がないと思いつつも、日々起こりうる出来事、多様な子どもたち、難しい保護者への対応などなど、数多くの物事に出会い、意思決定をし、前に進んでいく。教職という仕事は、実に幅が広く、人間的で、複雑。もちろん、そこに他の仕事では得られない、達成感やよろこびもあるのですが。

様々な思いの中でスタートしたであろう新年度。この一年間を、より良いものにするために、ジャーナリングに取り組んでみませんか。★1

なぜ、ジャーナリングをお勧めするかというと、多忙な日常の中で、気づけなかったこと、見逃していたこと、新しい発見などをもたらしてくれる、とても良い方法だからです。

私の2025年12月のジャーナルのエントリーです。

「この授業も3サイクル目に入りました。昨年、大改革を行った後半戦です。今年はさらに内容を精選して、よくなったと感じています。いや、むしろ、自分自身の「肩の力が抜けた」ことで、学生諸君がエンパワーされたと言った方が良いのかもしれません。学生MC(その日の授業リーダー)を4名毎回置いているのですが、彼ら彼女らの最後のリポートには本当に感心します。「おー、こんなことに気づいているのか」と思うことは一度や二度ではありません。長らく教員やってきて、ほぼ終着点が近づいたところで、気づくのですね。」

続けて、2026年1月。

「昨年も繰り返し書きましたが、捨てることで、内容が充実していくということ。Less is moreという言葉がありますが、まさにそれ。無駄を削ぎ落とすことで、本質的なところが充実してくるということ。色々な角度から見てもらいたいと思って、事例をたくさん用意して、これまでは、それらを見せていた。でも、少し「くどい」気がしていた。

今年は、それらを毎回削ぎ落としていった。毎回、一瞬、逡巡する。せっかく、集めた事例やモデルなのに!と。しかし、削ぎ落とすことで、伝えたいことが焦点化できていったような気がする。教師が必要だと思うこととと、それを全て受け入れられるかどうかということは、別物のようです。」

さらに、2026年2月。

「僕自身が関与を下げたことによる、学生たちの主体的な動きの実現。主体性、エイジェンシーなど、学習者に学びの権限を委譲することについて、理屈では分かっていて、その大切さを、ことあるごとに語っていたに、自分自身が満足にできていなかったことを悟った。どうしても、手放す勇気がなかったのかもしれないですね。いやむしろ、自分自身が主役でいたかったのかもしれません。」


学習者に学びの権限を委譲することの大切さについては、ずっと前から気づいていたし、認識はしていたんだけど、実際、教室の中では、それが真に実現できていたとは言えなかった。

そして、それは長年の私自身の問題意識でもありました。そのような問題意識を、ずっと持ち続け、ジャーナルの中で、自問し、行動を変えることで、やっと、自分の描いていたものに近づいていった実感があった。

これは日々流れている、実践や思考、感情を少しづつでも、書き留めていったことによって、もたらされた気づきではないかと思います。

私が取り組んできたジャーナリングの進め方を紹介しておきます。2015年に、7−8名のグループで、ブログを使ったジャーナリングを始めました。Googleのフリーのサービスである、Bloggerを使って、各自が個人のBlogをもち、そこに日々の授業実践について、ジャーナルを書いていきます。学習者の固有名を使った方が、生き生きと語りやすいということで、非公開のブログにしています。

特に、記入する内容や形式は定めていないので、各自が書きやすい方法で、自由に書くようにしています。形式や報告よりも、自分の経験や振り返りを書くことを重視したいからです。

私は、[Procedure]としてその日の流れを数行で記し、その後に[Reflection]として、感じたこと、気づいたことを書くようにしています。その際、できるだけ、学生たちの様子が分かるように(自分が後から思い起こせるように)、写真やビデオを掲載するようにしています。

ジャーナルを書くことの意義については、メンタルヘルスのため、思考の整理・生産性の向上、自己理解・自己成長、生活の質の向上、振り返りと今後の計画などが挙げられています。

私は、ジャーナルを書くために、立ち止まって、考える。その時間を取れることが最大のメリットだと感じています。通常であれば、やり過ごしたり、流れていくだけの出来事について、じっくりと向き合うことになる。向き合い、考えをめぐらさなければ、書けませんから。

なお、このブログは、メンバーのみが閲覧可能で、お互いがジャーナルを読み合い、コメントを記入し合うようにしています。当初は、ピア・メンター的な役割をお互いに果たし合おうと話していたのですが、そこはうまくいきませんでした。メンターやコーチとして、仲間に関わる余裕も知識もなかったことが原因だろうと思います。

しかし、一言でも、反応があることは、重要でした。もちろん、返信を期待して書いているわけではありませんが、自分のエントリーに対して、何らかの反応があることは、このような取り組みが継続されるためには、とても重要な意味を持つと思います。

10年以上続けてきて実感することは、これらの思索が、蓄積され、いつでも読み返せるということです。「時間をかけて蓄積してきたジャーナルを読み返すことで、その中に何らかのパターンのようなものがあることに気づき始めました。折に触れて、読み返すことで、読み返すプロセスこそが、ジャーナルを書くことそのものよりも重要であると気づいたのです。」★2

私たちのジャーナリングの実践では、ジャーナリングの蓄積を振り返りにつなげる工夫をしています。月に1回、1ヶ月間のジャーナリングを振り返る、全員の集約版ブログを準備しています。メンバーは、1ヶ月分のジャーナルを読み返し、次の質問に対する自分なりの、振り返りを書きます。

---Blog Journaling 毎月の振り返り質問---
1.この間、心が動いたことは? 嬉しかったこと、悲しかったことは? 人に伝えたいことは?

2. 実践のハイライトは何でしたか? 特に、よかったことや成功したことです。  うまくいった要因は何だと思いますか?

3. うまくいかなったことはどのようなことでしたか。児童・生徒が動かなかった時や自分らしさを発揮できなかった時です。  それらに共通することは考えられますか? パターン/傾向のようなものです。

その他、何でも気づいたこと、思ったことは
----

日々のジャーナルは、気軽に書いたとしても、月に一回の、この振り返りの質問に答えるときに、いつも筆が止まる(立ち止まる)と皆さん言います。

日記をつけたり、マメに手紙を書いたりするわけではない私ですが、書き続けることで、実に多くの学びも気づきも生まれたと思っています。

多忙な、学校の仕事の中で、バーンアウトしてしまっている人も多いと思います。でも、それを超えるには、一歩踏み出して、自分に良い負荷をかけるしかない。その一つの方法がジャーナルを書くことだと思います。

まずは、しばらく続けてみませんか?

★1 吉田新一郎(2006)『「学び」で組織は成長する』光文社新書,pp31-42 などに紹介されています。

★2.Thomas Farrell(2013)Reflective Writing for Language Teachers, equinox, p.85から。

2026年3月29日日曜日

なぜ研修は役立たないのか? では、何が本当に効果を生むのか?

  『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーさんが、つい先日、上記のタイトルの論考を書いていたので紹介します。

   *****

忘れてしまう研修と、教師を変える(成長させる)研修を分けるのは、たった三つの要因です。

ある研修で、教師が私の方へ身を寄せて小声で言いました。「明日すぐに使えることを一つだけでいいから知りたいです」。この思いは、ここ20年ずっと聞き続けてきたものです。そしてこれは、多くの研究が示している事実とも一致しています。多くの研修が効果を発揮しないのは、教師に意欲や好奇心がないからではなく、対象のことを考えずに設計されているからです。

教師の学びに関する900以上の研究をまとめた大規模メタ分析では、効果的な研修は「焦点が明確で、継続的で、教師の目の前のニーズに直接関係している」ことが示されています(Darling-Hammond ほか, 2017)。しかし実際の研修の多くはその逆で、短時間に内容を詰め込みすぎ、成果が不明確で、情報を受け取る教師たちの感情面や認知面への配慮がほとんどなく、フォローアップもありません。

研修をうまく機能させるには、もっと早い段階から取り組み、まず対象に焦点を当てる必要があります。

1. 対象を知ること

研修をどのように計画しているかを担当者に尋ねると、多くはまず「扱うべき内容」を挙げます。教育現場のプレッシャーを考えれば理解できる反応ですが、生産的な出発点ではありません。本来の最初の問いはこうです。「今日、目の前にいる学び手は誰で、彼らが今もっとも必要としているものは何か?」

これは「曖昧で非科学的な話」ではなく、認知科学に根ざした考え方です。Malcolm Knowles1984)や Patricia Cranton2006)といった成人学習の理論家たちは、何十年にもわたり、大人は「尊重され、感情的に安心し、扱われる内容とつながりを感じられるとき」に最もよく学ぶことを示してきました。神経科学もこれを裏づけており、ストレスや過負荷、情緒の乱れは新しい情報を取り入れる脳の働きを弱めます。場にいる人々を理解しないまま内容に飛び込むと、学びが始まる前にその土台を損なってしまっています。

「対象を知る」ことを怠ると、いくつかの予測可能な問題が生じます。

  • 認知的過負荷:参加者の事前知識や心の準備状態を把握しないまま進めるため、内容が詰め込みすぎになる。
  • 学習目標の不明確さ:教師が何を最も必要としているかが見えないため、すべてを扱おうとして結局どれも定着しない。
  • 関連性の低さ:どれほど優れた方法でも、教師が自分の文脈や学年・教科等の現実と結びつけられなければ効果が出ない。

解決策はシンプルです。関連を見いだすことから始めるのです。

3〜5分ほどの短いチェックインをするだけで、学びの場は大きく変わります。たとえば、今どんな気持ちでこの場に来ているかを一言で表してもらったり、この研修に「参加してよかった」と感じられるために必要なことを挙げてもらったりするのです。経験値を把握するために、ペアでの短い共有や挙手を求めてもよいでしょう。大事なのは形式ではなく、「そこで得た情報に応じて応える姿勢」です。★

 

2. 焦点を絞る

次に大切な要因は、驚くほどシンプルです。学習到達目標を一つだけ決めることです。そう、たった一つです。

時間が足りず、プレッシャーの大きい教育現場では直感に反するように感じられるかもしれません。しかし、しかし、広く浅くよりも、狭く深く掘るほうが力になるのです。私は『教師のためのアート・オブ・コーチング』の後に書いた『The PD Book: 7 Habits that Transform Professional Development』のなかで、教師が研修後に「一つのアイディア」——一つのプロトコル、一つのルーティン、生徒作品の見方の一つ——を覚え、実践できることのほうが、20のアイディアを聞いて何も定着しないよりはるかに変革的だと強調しています。

目標を一つに絞ると、すべてが良い方向にゆっくりと進みます。ファシリテーターの目的が明確になり、参加者の認知的負荷が減ります。情報を整理し、質問し、練習するための余裕が生まれます。そして教師は「持ち帰って使えるもの」を確実に得られます。

私は研修担当者や管理職と仕事をするとき、計画を始める前に次の文を埋めてもらうことが多いです。「この研修の終わりまでに、教師は__ができるようになる。」もしこの文が長く、複雑で、接続詞だらけになるなら、目標がまだ明確でない証拠です。

3.研修中に「実践」を組み込む

研修が感情面でも認知面でもうまく受講者の教師に届いたとしても、それが教室での実践につながらないことがよくあります。その理由はシンプルです。学んだことを実際に使ってみる時間がないまま、教師が研修を終えてしまうからです。

Learning Policy Institute の研究では、練習・計画・フィードバックのための時間をしっかり確保した研修は、新しい学びの実践度を大きく高めることを示しています(Darling-Hammond ほか, 2017)。学習科学もこれを支持しており、「実践」は記憶を定着させ、不安を軽減し、習慣形成の条件を整えます。

実践のために複雑な仕組みは必要ありません。教師は翌朝使える5分間のルーティンを書き出してみたり、新しい視点で生徒の作品を分析したり、ペアになって会話プロトコルをリハーサルしたり、学んだ方法を使って授業の一部を短く計画したりすることができます。意図的な10分間の実践だけでも、新しい学びが定着する可能性は大きく高まります。★★

 

教師の人間性を尊重する

教師には、人間性と専門性を大切にする研修が必要です。教師の専門性を尊重し、時間を大事にし、授業改善につながる研修は、一つの基本から始まります。それは「対象を知る」ことです。その場にいる人をきちんと理解しようと立ち止まることで、焦点が定まり、大人の学びの現実に根ざした、人にやさしい学びを設計できます★★★。到達目標を一つに絞り、実践の時間を組み込むことで★★、行動が変わる条件が整うのです。

 

出典:https://www.ascd.org/el/articles/why-most-pd-doesnt-work-and-what-actually-does

★私が教員研修に関わり始めた頃、オーストラリアから招いた講師がしっかりこれをやっていたのを思い出しました。

ちなみにこのことは、当然のことながら、生徒対象の授業でも同じです! あなたは、診断的評価、形成的評価、総括的評価の理想的なウェートづけはどのくらいずつだとお考えですか? このこと(=学ぶ対象に焦点を当てて築く学び方・教え方)について書かれているのが、『学びの中心はやっぱり生徒だ!』ですので参考にしてください。先ほどと逆で、これはそのまま教員研修に応用できます!

★★しかし、https://projectbetterschool.blogspot.com/2015/11/blog-post_29.htmlの二つ目の表を見ると分かるように、実践=練習を研修会でするだけでは、残念ながら、ほとんどの参加者は学校に戻っても、それがやれないことはすでに1984年ぐらいの段階で明らかにされています。何が必要かというと、研修後のフォローアップ(=継続的なサポート)です。それが、この文章の執筆者であるエリーナさんがやり続けているコーチングの柱と言えます。一度きりのイベントとしての研修会でいくら努力をしても、参加者の教室や学校レベルの実践が変わることはほとんど期待できません。研修会で関心をもってくれたことを学びのサイクルとして回し続ける形で(https://note.com/coachingletter/n/n6718ea3f0f29?magazine_key=ma24c24afc5bdを参照)、自分のものにしてもらう仕組みが大切です。それを助けるのがコーチです。

★★★『教師のためのアート・オブ・コーチング』のなかには、実践を変える6つのレンズが紹介されており、その一つが「大人の学び」=成人学習のレンズなので、ぜひ参照してください。

2026年3月22日日曜日

教育現場で好奇心を育む3つのコツ

 https://note.com/coachingletter/m/ma24c24afc5bdの3月18日号で書いたことの続編的な位置づけです。

 「社員の意欲が下がっているときこそ、リーダーが好奇心を後押しし、認めることで、イノベーションや仕事の意味を生み出すチャンスになる」という記事(https://www.smartbrief.com/original/3-tips-to-replace-employee-stagnation-with-curiosity-in-2026)を見つけました。まさに、いまの日本の学校が一番必要としていることではないでしょうか?

 その記事の全訳はしませんが(興味をもたれた方は、ぜひご自分でトライしてください)、ここではCopilotとのやり取りの一部を紹介します。

  *****

1 好奇心を伝染させる文化をつくる

🔍 原文の本質

  • インスピレーションは「スピーチ」ではなく「問い」から始まる
  • 好奇心は、成果を生むための「戦略的スキル」
  • 質問傾聴探究の連鎖がチームを変える

🏫 教育への置き換え

教師も生徒も、日常の中で「問いを立てる力」★が学びの質を決めます。学校でこれを実現するには:

  • 授業で「今日の学びを面白くする質問」を生徒が一つ書く★
  • 教師同士で「最近、子どもたちの学びの変化で気づいたことは?」を共有
  • 管理職が「結果」ではなく「気づき」を問う文化をつくる

例:「どんな小さな変化が子どもの学びに影響していると感じますか?」

例:「今、私たちがまだ問えていない問いは何でしょう?」

“Did you hit your numbers(結果は出しましたか)?” “What are you noticing(どんな変化・成長・学びを気づきましたか)?” に置き換えるだけで、学校は「指示待ち」から「探究する組織」に変わります。

 

2 つながりのための余白をつくる

🔍 原文の本質

  • 人が離れるのは「努力しないから」ではなく「見てもらえていないから」
  • つながりは大きなイベントではなく、日常の小さな存在の確認から生まれる

🏫 教育への置き換え

学校でも、生徒も教師も「見られている」「大切にされている」と感じると、学びや仕事へのエネルギーが大きく変わります。

  • 朝の会で「最近どう?」を形式ではなく本気で尋ねる
  • 教師同士で「今日のあなたの良かったところ」を一つ伝え合う
  • 管理職が廊下で立ち止まり、教師の小さな工夫を言語化して称賛する
  • 生徒の小さな努力(提出物の改善、友達への声かけ)をその場で認める

つながりは、学級(学校)経営の土台であり、教師のエンゲージメントの源泉です。

 

3 結果だけでなく好奇心そのものを評価する

🔍 原文の本質

  • 結果だけを評価すると、挑戦や問いが減る
  • 好奇心を認めると、結果はむしろよくなる
  • プロセス(質問・試行・リスクテイク)を価値づけることが鍵

🏫 教育への置き換え

学校では「結果評価」が強くなりがちですが、探究・学びの本質はプロセスにあります。

  • ルーブリックに「問いの質」「試行回数」「仮説の更新」を入れる
  • 生徒の振り返りに「今日の初めては何?」を追加
  • 教員研修で「今年挑戦した新しい実践トップ3」を共有
  • 管理職が結果よりプロセスを称賛する文化をつくる

例:授業改善のための小さな試行を指摘・紹介する

例:失敗した試みからの学びを共有する場をつくる

好奇心を評価(賞賛)すると、挑戦が増え、結果も自然と伸びるというパラドックスが教育でも成立します。

 

 以上を整理すると、次の表のようになります。

 3つすべてを一度に、というよりも、これらの中の一つでも取り組めそうなのはあるでしょうか?

 ちなみに、Copilotが提供したURLをうまく読み込めない段階では、次のような表をつくり出してくれていました。原文にはない内容(?)を生成AIが勝手に考え、解釈して提供してくれていた情報ではありますが、大事な点を押さえていたので驚くと同時に、感心もしたので、参考までに紹介します。

 なお、3つのコツは別物というよりは、相互にかなり深く関連し合っている気がします。どれから入っても、すべてを押さえられるような関係というか・・・なので、取り組みやすい(挑戦しやすい)項目からはじめてください。いずれにしても、表に描かれている環境にならない限りは、教師は元気になれ(自立でき)ないし、いい授業を生徒に提供できないし、結果的に生徒たちもいい学びを体験できないままが続くことが約束されています。それほど、大事なことです。

 

★一つどころか、たくさんみんなで出し合う方法が、『「おさるのジョージ」を教室で実現 ~ 好奇心を呼び起こせ!』の第5章「質問することを支援する」のなかでは「100個の質問をする」をはじめ生徒が質問をするための方法がいくつか紹介されています(もちろん、『たった一つを変えるだけ』で紹介されている方法も含めて!)。

 

2026年3月15日日曜日

「深い学び」についてのインタビュー動画

 https://www.edutopia.org/video/deep-learning-interview-elena-aguilarの画面の「設定」を少し操作すると、自動翻訳を「日本語」に設定して字幕を日本語で読めるようにできます。(あるいは、Transcriptがついているので、それを翻訳するという手もあります。)

このインタビュー★の主なポイントを要約すると、次のようになります。

*****

従来の「50分授業+教科書+講義」中心の学び方は、多くの子ども、とくに社会経済的に不利な立場の生徒には効果的ではない。学力格差を縮めるためにも、教科横断的で体験をベースにした多様な学び方を取り入れる必要がある。研究も、教科をブツ切りにした学習ではなく、統合的学習が最も効果的であることを示している。

ただし、教科横断的なユニットを計画するには、他教科の基準を把握し、どこで結びつけられるかを丁寧に検討する時間と労力が必要である。他教科の教師と相談し、必要な標準を補強する方法を探り、綿密な計画を立てることが欠かせない。また、インターネットや書籍、人脈を活用し、積極的に情報を求める姿勢も重要である。

単元設計では、到達目標と評価方法を事前に明確にし、生徒にも共有する。学習の途中では形成的評価を行い、理解が不十分なら教え方を調整する。ASCEND School (この学校についてはhttps://projectbetterschool.blogspot.com/2026/02/blog-post_22.html を参照)では、歴史・英語と数学・理科の4教科を組み合わせ、現実世界と結びついた探究型学習★★(expeditionary learning2015年にEL Educationに名称を変更)を実践し、基準を満たしながら生徒の関心にも応えた(具体的な様子は、https://www.edutopia.org/video/students-learn-make-difference  を参照)。

新任教師には、小さな一歩から始めることが勧められる。月に一度詩を取り入れる、年に一度ゲストを教室に呼ぶなど無理のない目標を立て、徐々に教室運営や基準理解を整えながら、短い教科横断的ユニットに挑戦していけばよい。長期的視点で少しずつ広げていくことが鍵となる。★★★

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 自分に割り当てられた(どこの誰が、誰に向かって書いたのやらよくわからない)教科書を忠実にカバーしていくのではなく、目の前にいる生徒たちがよりよく学べる方法を常に探究し続けるのが教師という仕事ではないでしょうか?

 

★このインタビューは、2008年当時すでにコーチの職にあった、5年後の2013年に『教師のためのアート・オブ・コーチング』を出版することになるエリーナ・アギラ―に対して行われたものです。この本を書いた著者が、どのような考えをもっていたり、どのような実践に共感していたりする人なのかは、成果物の一つであるその著作と大いに関わっています。それは、個人レベルで言えることですが、同じように教師集団レベルでも言えることだと思います。「教科書をカバーしてテストをする」ことを学力向上の最善の方法と錯覚している日本の教育界においては、残念ながら、教師を中心に教育関係者に与えられている選択肢はないも同然です! ちなみに、何年か前に文科省は「深い学び」を数年間唱えましたが、言い始めた人たちは、それが「教科書をカバーする授業」とは相容れないものとは気づいていないようでした(ひょっとしたら、気づいていて、あえて言っていたのかもしれません!?)。同じレベルで「主体的で協働的な学び」も教科書との相性が極めて悪いです。教科書内容を「主体的」に取り組める生徒(や教師も!)は、いったい何%いるでしょうか? 「主体的」に取り組めないものを、いったいどうやって「協働的」に取り組めるというのでしょうか?

 以上の問題への回避策は、『教科書をハックする』や『ほんものの学びに夢中になる』などを参照ください。

★★この教え方を小学生段階で実践した記録が、『子どもの誇りに灯をともす』ロン・バーガー著、英治出版、2023年です。著者のロン・バーガーは、本の執筆以降はexpeditionary learningEL Educationのアドバイザーを中心に活動しています。

★★★間違っても、毎年同じことを繰り返さないということです。無理のない範囲で学びながら、毎年確実に成長していくことこそが、教師に求められている(もっとも大切な!?)あり方ではないでしょうか? その際に大事なのは、単に考え続けるレベルではなく、実際に試してみるレベルで臨み続けることです。考え/学び続けることはもちろん大切ですが、残念ながら安全圏にとどまってしまうのに対して、実際に試してみることで小さなリスクを引き受けながら価値のある気づきや改善を得て、教師の成長が生まれるからです。

 日本の学校の内外で行われている研修は、このことがどれだけ意識されて行われているでしょうか? 研修を実施することと参加教師の成長とは、どのような関係にあるでしょうか? 成長を加速させられればいいに越したことはありませんが、まずは確実に毎年一人ひとりの教師が成長していることを実感できる制度を再構築することが必要です。残念ながら、いま行われている校内や校外の教員研修では、自分が成長し続け(その結果として、生徒たちの学びの質と量が向上し)ていると実感できている教師はあまりいませんから。この再構築を可能にする情報は、これまで日本にはあまりに少なすぎました(つまり、選択肢がほとんど提供されていませんでした)。動画に登場していたエリーナ・アギラーさんの『教師のためのアート・オブ・コーチング』や、3月10日に出たばかりのジム・ナイトさんの『インストラクショナル・コーチング』などは確実に選択肢を提供してくれていますので、ぜひ参考にしてください。(また、それら異なるコーチングのアプローチを含めて、コーチング関連情報を提供している「コーチング便り」https://note.com/coachingletter/m/ma24c24afc5bdもご覧ください!)