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2020年4月25日土曜日

オンライン授業のスタート

現在、新型コロナウイルス感染症対策で、引き続き多くの自治体の小・中学校は休校措置になっています。自宅での学習ができるようにタブレットを利用したりして、工夫されている学校もあると思いますが、自宅のネット環境や機器の関係でうまくいっていないところも多いと思います。 
私の勤務する大学もオンライン授業が始まりましたが、3か月前は誰もこのような事態を想定していませんでした。私たちも試行錯誤で準備に当たり、現在もその仕事が進行中です。 
そのような準備を進めていく中で、頭に浮かんだのは以前このブログでも紹介した『教育のプロが進めるイノベーション』(新評論・2019)の文章です。 

「教育におけるもっとも重要な三つの言葉は、関係、関係、関係です。それがなければ、私たちは何もできません。」(同書80ページ)

  今回これまでやっていなかったことを始めるわけですから、その準備にあたるメンバーを初めに招集して、授業のガイドラインなどを作成しました。その過程で、メンバー間のやり取りなどをみていて、人と人との「関係性」の大切さを再確認しました。このようなときに普段からリーダーがメンバーたちとどのような関係性を築いているかが問われるのだと思います。

 「人々は、新しいことを試すことに価値があり、安心してできると知ってさえいれば、新しくてよりよい何かに向かって努力する可能性があります。」(同書118ページ)

 私の職場を見ていても、今回は自分たちが望んでというよりも、緊急事態によってやらざるを得ないというところ仕事が始まったわけですが、それでも「新しいことを試すことに価値がある」とそのプロセスの中で多くの先生方が気付いたので、オンライン授業が動き出したという実感があります。

これまで、テレビ会議などをやった経験がない先生方も、実際にやってみて、その便利さを実感したことで、初回よりも2回目、2回目よりも3回目という具合にスムーズに会議を進めることができ、会議の時間も対面時よりも短縮することができて、その可能性を多くのメンバーが理解したのだと思います。

「オンライン授業」という学びの過程を教師自らが経験することで、ICTが学生にもたらす機会をより深く理解することができたのです。『教育のプロがすすめるイノベーション』の104ページに書かれていることが実感できた瞬間でした。

2019年12月28日土曜日

イノベーションを起こせる組織とは

    イノベーションを起こせる組織とはどのようなものか。山口周さんによるとその要因の一つは「人材の多様性」であると言います[1]。この人材の多様性は、「考え方の多様性」「意見の多様性」につながるものです。また、ただ人材の多様性が確保されていればよいかと言うとそうでもなくて、大切なことは「多様な意見」を促す組織運営に関するリーダーシップです。このようなマネジメントはますます学校という組織で求められていくものだと思います。

『次世代スクールリーダーのための「校長の専門職基準」』という本があります[2]。このなかに「基準1」として次のように書かれています。 

「学校の共有ビジョンの形成と具現化」小項目1「情報の収集と現状の把握」
校長は様々な方法を用いて学校の実態(児童生徒の学習・生活、教職員の資質・能力や職務の実態、保護者・地域からの期待、地域社会の環境、これまでの経緯など)に関する情報を収集し、現状を把握する。 

実態の把握、現状分析はまずマネジメントの出発点で重要な要素です。そのために、自ら求めて、様々な立場の人とコミュニケーションを図り、日頃から学校内外の情報を取りに行かなくてはなりません。それを校長室で待っているだけではご機嫌伺の部下からの耳触りの良い情報しか入ってこないのです。それでは、校長として学校経営の大切な場面で、判断や指示を誤ることになります。人には残念ながら二面性があり、自分の利益を優先する姿を表面的には隠していたり、相手への嫌悪感や嫉妬などを笑顔の下に隠したりしているものです。それを見抜くことは難しいことですが、絶えずその二面性を意識しながら話を聞くという心構えがリーダーには求められるのではないでしょうか。 

また、最近出版された『先生、この「問題」教えられますか?[3]では、高校の職員会議の様子を再現するということで、次のように紹介しています。議題は「新学習指導要領による2022年以降の高校のカリキュラムをどうするか」とのことです。そこに描かれた会議の冒頭のあいさつと最後の締めくくりとしての校長の発言は以下のようなものです。 

「今日は、2022年以降から実施される高校の新学習指導要領について皆様の意見をお聞きしたい。生徒たちにとって大変重要なものであると認識しているので、しっかりと議論をしたうえで、本校の独自性が感じられる内容にしていきたいと考えている。」
「今日は、活発な議論をありがとうございました。カリキュラム改訂は、「学校」としては教育の根幹を担う重要なものと考えておりますので、今後も皆様のご意見を聞きながら検討していきたいと思います。」 

これを読まれてどのように感じられましたか。
この類の話は学校ではよく聞く話かもしれません。しかし、考えてみれば、このような話では、校長が学習指導要領の改訂をどう受け止めているかわかりませんし、この学校でそれをどう展開したいのかが全くわかりません。学校の現状を踏まえたうえで、学習指導要領が求めているような生徒を育てていくためには、「何を」「どうやって」いけばいいのか、具現化するための道すじを示す必要があります。その過程で、職員の多様な意見を拾いながら、活かせるものは提案として活かしつつ、具体的な方針を示すことで、学校が組織として動き出すことになります。
結局、このようなマネジメントが行われないために、ただ表面上「やっているふり」をするだけの状態が続くことになるのです。これでは、いくら学習指導要領で次世代の教育方針を示したところで、学校現場で効果をあげることは難しいと思います。

本来、校長会、教頭会はチャレンジ精神のある会員をサポートする役割を担うべき組織のはずですが、これもまた年間の様々なイベントをこなすだけの組織になってしまっています。米国にも校長で構成する職能団体がありますが、ここには学校経営に役立つ情報やサポートがふんだんにあります。
この彼我の差を埋めるための情報提供もこのブログの目的の一つです。ぜひ、『教育のプロがすすめるイノベーション』(新評論2019)をまだお読みでない先生方には手に取っていただきたいと思います。改革のための道すじがはっきりと見えてきます。学校にはICT教育など取り組まなければならないことが山ほどありますが、それを仕方なく、「やらされているという意識」で取り組むのと、自ら主体として取り組むのとでは天地ほどの差があります。 
今年一年このブログの記事をお読みいただき、ありがとうございました。
また、年明けからも引き続き、皆さんとともに、「学びの共同体」づくりを考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

[1]山口 周『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』光文社新書/2013
[2]日本教育経営学会実践推進委員会編『次世代スクールリーダーのための「校長の専門職基準」』花書院/2015
[3]石川一郎・矢萩邦彦『先生、この「問題」教えられますか?』洋泉社/2019

2019年6月30日日曜日

多忙な現場を敬遠

先月、文部科学省が2018年度の全国の公立小学校の教員採用試験の倍率が3.2倍で過去最低になったことを公表しました。510日付の毎日新聞の記事によると、その原因について次の3点が主な要因であると紹介しています。

・「団塊ジュニア」世代の小学校入学に備えて80年代に大量採用した教員が退職期を迎えていることによる小学校教員採用の増加
・民間企業の採用が活発化していること
・小学校教員の免許取得のカリキュラムを組む大学が限られていること

 この分析に対して、帝京科学大学の剱持教授は「学校現場が『ブラック』だと知られてきた影響ではないか」と指摘しています。さらにこうも付け加えています。
「働き方改革を進め、処遇の改善を図ると同時に、若手が教員の魅力を新卒に伝えられるようにしなければ、倍率は今後も低下するだろう」

 この記事の最後の部分で、働き方改革と処遇の改善は政治や行政にお願いするとして、後半の「教員の魅力」はぜひ多くの現場の教師のみなさんに考えていただきたいことです。
それでは、その魅力をどのようにして伝えていけばよいのでしょうか。

★授業に熱中する
「コンプライアンス=従順さ」ばかりが要求される学校では面白くない、わくわくしないのです。教師だってそうですから、子どもはなおさらです。
それを学ぶことは面白いことばかりではないなどと分かったようなことを言う人もいますが、基本は本物の学びなら面白いはずです。今まで、考えもしなかったことに気づかされたり、そんなこともあるのかという驚きや発見、そんな場面に出会ったりしたら、わくわくしないはずがありません。そんな授業をつくるのが教師の仕事の中心のはずです。そのために、できることはなんでもやる。ネットワークを利用して、多くの人の知恵を集める。何といっても、今はSNSの時代です。このような取組を続けていくことが新卒の教師に「教師の魅力」を伝えることになると思います。

★「選ぶやってみる振り返る」
 最近、大学での自分の授業や時折参観する小学校での授業などを見るにつけ、「選べる」ことの大切さに気付かされます。
『教育のプロが進める選択する学び』(マイク・エンダーソン/新評論2019)28ページに次のような一節があります。

学習する際に選択肢を提供された生徒は、より高いレベルで学習に取り組めるという理由がいくつか明らかになっています。一つには、生徒がより楽しんで取り組むときには、彼らの脳は円滑に学んでいることをよりよく処理することができますし、それをより効率的に、長期間にわたって記憶できるようになります。

つまり、選択肢を与えることによって、児童生徒はより深く豊かな学びに取り組むことができるというわけです。当然、これまで以上に課題に集中して取り組むこともできるようになるわけです。全員に同じ課題を与えて、指導計画に定められた学習内容を「教科書」というたった一つの資料だけに依拠して「カバーする」授業を続けていては21世紀の学びは実現しないということです。

★学び続ける
やはり何と言っても、自分自身が学び続けることが大切です。そのために、本を読むことは避けて通れません。もし、一人で読み続けることが難しいならば、ぜひ何人かのグループでブック・クラブ形式によって行うと案外続けられるものです。一人では途中で挫折しそうな本もこれなら続けられたという経験は私自身何度もありました。
 また、少人数でもよいですから、共に学ぶグループ・仲間がいると良いと思います。私も中学校の現場を離れて6年たちますが、今でも少人数の勉強会を月に1回のペースで行っています。話し合いの中身は、それぞれが持ち寄った実践事例などですが、一人では気づけない別な角度からの「ものの見方」を教えてくれる貴重な機会になっています。

一人ではできないことも仲間の助けがあれば続けられるでしょうし、一人では気づかない新たな視点からのものの見方にたどり着くこともできます。気の合う仲間を自分の近くで探して、まず話し合う機会をつくりましょう。そこが、学校改善と自己変革の第一歩です。

2017年6月23日金曜日

職場の環境はどうですか


最近、学生の教育実習に合わせて、小学校を訪問する機会が何度かありました。
いつも学校を訪問すると感じることは、学校ごとに職員室の様子が異なるということです。

 明らかに雰囲気が暗い学校もあります。そんな学校では、教師間の連携も上手くいっていないことが多いようです。自分のことさえやっていればいいというタコツボ状態になっていれば、「チーム学校」など絵に描いた餅です。

仕事のストレスが溜まっているのに、聴いてもらえる相手がいない、そんな状況もあるようです。中学校などでは、特に実技教科の教員が1名しか配置されていない学校もありますから、教科の内容について相談したくても相談する相手がいないこともあります。

そのように孤立したり、一緒に勉強したくても近くにその相手もいなかったりする先生方は現実に決して少なくないようです。そこで、必要なものは一緒に学べる仲間です。今はWEBという方法があります。近くに仲間がいない人は、このWEBの力を借りて、学びの機会を作りましょう。(サークル活動や研究会の情報を提供してくれるサイトもあります)

また、自分が主体になって仲間を作ることもできるでしょう。私は20代後半の頃、校内で仲間を募って勉強会をやりました。それぞれの学級経営の実践記録を持ち寄ったり、定期テストの問題作りを一緒にやってみたりしました。そして、勉強ばかりでなく、そのころの学校はまだ余裕がありましたから、地区の同好会などでハイキングに出かけたり、温泉に泊まりに行ったりと、仲間で過ごす時間がたくさんありました。そのようなふれあいの中で、互いの生き方から学ぶことがありました。それらが当然、教師としての仕事にも反映したと思いますし、人としての幅を広げることにも役立ったと感じます。
     

「意志あるところに道あり」です。

「こんなことをしてみたい」「このことについてもっと探究してみたい」と思い続けていると、不思議にそれに関連することが向こうからやってくるものです。そのときに見過ごすことなく、しっかりとつかまえれば、道が開けるのではないでしょうか。
     

AIがさらに進化して、学校も大きく変化すると思われる時代がすぐそこまで来ています。しかし、人間教師が学校という場で、顔をお互いに見合いながら「授業」を通して子供たちと学ぶのも、人としての「意志」の力を子供たちに伝えていくためにあると言ったら言い過ぎでしょうか。

 そのためには、私たちはコミュニケーションを大切にして、仲間づくりをやりながら、それぞれの力を磨き合っていく、そんな地味な努力の上にこそ、これからも教育と言う営みは成り立つのではないでしょうか。私たちは一人ではありません。常に私たちを支えてくれる人たちが周りにたくさんいるはずです。そのような力を結集して、この国の民主主義を担う子供たちを育てていきましょう。

2017年3月25日土曜日

イノベーターになる


Innovator's MindsetGeorge Couros/ Dave Burgess Consulting , Inc. (2015)という本の一節に次のような文があります。

Savvy leaders understand the need for innovation and, as a result, constantly reinvent their organizations. Starbucks, for example, started off as a business that focused solely on selling coffee beans. Today, it is the best-known "coffee shop" in the world. 

(有能なリーダーはイノベーションに対する必要性を理解しており、結果として、いつも組織が作り変えられる。たとえば、スターバックスはただコーヒー豆を売ることに特化したビジネスで始まった。今日、それが世界中で最もよく知られたコーヒーショップである。)

Innovationに対する理解が組織改革につながり、結果的に成功につながるということです。

最近、野球評論家の野村克也さんの『暗黒の巨人軍論』(角川新書2017)を読んだのですが、あの9連覇を成し遂げた川上哲治監督は、一見すると保守的と思われがちだけれども、実は「改革者」だったという話が紹介されていました。(同書p.83)今日では投手の分業制は当たり前ですが、「リリーフ専門」の投手を置いたのも川上さんが最初だそうです。

 
それから、話は少し脱線しますが、最近私の勤務先で「2020東京五輪応援企画」というイベントがあり、リオ五輪7階級メダル獲得の男子柔道監督・井上康生さんの話を聞く機会がありました。リオの前のロンドン五輪では史上初めて金メダルゼロという屈辱を味わい、そこから日本柔道復活の大役を任されたのが井上康生さんです。どんな指導をしたのか興味があったので、話を聞きに行きました。

そこで、わかったことは井上康生さんも実はイノベーターの一人だったことです。

井上監督は柔軟な発想の持ち主で、それまでの柔道界ではあまり顧みられてこなかった体力トレーニングに専門家を入れたり、科学的なデータ分析(対戦相手のそれまでの試合での映像分析なども含む)を取り入れたりして、組織改革を大胆に行ったそうです。

「柔道」も「JUDO」となり、「JUDO」には世界各地の民族格闘技(たとえば、ロシアのサンボやモンゴル相撲など)が流れ込んできており、もはやこれまでの柔道とは全く違ったものになってきているとのことでした。そういった新しい流れに対応していくためにも、これまでのやり方とは異なる「革新」が必要だというお話でした。

そうした革新の視点で見ると、学校はまだまだ旧態依然としているところがあるのではないでしょうか。小学校の英語教育、プログラミング教育等々、新しいものがどんどん教室へ入り込もうとしているのですが、肝心の教育活動や授業の根っこの部分がどうなのだろうと思ってしまいます。

 
たとえば、「変化を嫌うこと」「前年踏襲主義」、学校行事一つとっても、日付と担当者名だけが変わるだけで、昨年のものと全く同じ内容の行事があると思います。一人ひとりが、それぞれの仕事の中で、イノベーターとなって取り組んでいく、それこそが今求められているものの一つであると思います。

 
集団に埋没して、自分の目の前の仕事さえこなしていればよいという職場が企業においても決して少なくないようです。日本の企業はこれまで社員の勤勉さやチームワークという企業文化を売り物に、優れた製品を世界に送り出していました。ところが、その企業文化が足かせとなり、今や労働生産性や競争力において他国の後塵を拝する状態です。ある専門家によると、この苦境を脱するには結局は社員一人ひとりの「分化」によるしかないとのことです。(『なぜ日本企業は勝てなくなったのか』太田 肇・新潮選書2017)

子供たちを変えていくためには、まず教師が変わる必要があります。

それには、集団に埋没したり、群れたりするのではなく、一人の人間として自立し、子供たちのためにイノベーターとなって挑戦する教師であってほしいと思います。

4月からの新年度において、ぜひ校内のイノベーターになってみたらどうでしょうか。

2016年10月30日日曜日

魅力ある職場をつくるには


魅力のある職場を作るには
     

学校を訪問して、職員室に入るとだいたいその学校の組織の雰囲気がわかると言われます。今でもときどき学生の教育実習の際に小学校を訪問することがあります。特に、放課後に訪問すると、とても活気のある職員室もあれば、多くの職員が下を向いて黙々と仕事をしているところもあります。

活気のない職場は、お互いがたこつぼに入って、あまり他人に関わりたくないという感情に支配されているケースが多いようです。あるいは人のことに口出しして、余計なトラブルに巻き込まれたくない、そんな気持ちもあるのでしょうか。

 
    組織開発・人材開発に携わる高橋克徳氏によると、「今、日本の職場の五割は明らかな問題を抱えており、七割の職場が活力のないものになっています。」とその著書(『ワクワクする職場をつくる』実業之日本社2015)の中で述べていますが、その数字の妥当性はともかくとして、学校に限らず、かなりの職場が「いきいき」とした状況にはないようです。

さきほどふれたように、「たこつぼ」型の職場は、「言われたことだけやればいい」「余計なことをしてミスして、責任を取らされたら損だ」という雰囲気が蔓延している職場です。

最近はコンプライアンスや個人情報保護など、気をつけなければならないことが以前よりも多くなり、また成果主義が求められるようにもなってきていることもその大きな要因だろうと思います。

 
このブログのタイトルでもある「学びの共同体」というフレーズは、教育関係の書籍や雑誌等にも紹介されることが以前よりも増えていますが、「言うは易く」です。

この国の教育界では、「理想的な美辞麗句」が様々なところで用いられていますが、その現実との落差には目を覆いたくなるものがあります。
     

さて、今回「魅力のある職場」を取り上げるにあたって、「人が働く理由」「モチベーションとは何か」などについてもしばらく考えてみました。

「人は何のために働くのか」

実に古くからの課題であり、様々な人々によって繰り返し語られてきたことです。

「お金のため」「名誉のため」その理由は人それぞれですが、やはり「だれかのために役立ちたい」ということが最終目標でしょうか。学校教育であれば、「子供たちのために」です。

 次世代の社会をつくると言えば大げさですが、教師にとっては「子供たちとのかかわり」が「生きている自分を実感できる」からではないでしょうか。

 そのように個々の教師がイキイキと活動できるためにも、学校という組織もイキイキとする必要があります。そこには、管理職やミドルリーダーのリー―シップが必要ですし、部下職員の立場からはそのリーダーシップについていく「フォロワーシップ」が大切なのだと思います。
   
 これまでも教育の内容を改善しようとして、具体的な仕組みを変えていくことがしばしば行われますが、仕組みだけではその中にいる人間の行動は変わりません。やはり、危機感や思いをもった人たちがどうにかしたいという思いを共有して、動き出すのが一番です。

 先週の『一人ひとりが「変化の担い手」にある方法』も参考になります。もう一度読み返してみてください。
     
また、参考図書として『効果10倍の(学び)の技法 シンプルな方法で学校が変わる! (吉田新一郎・岩瀬直樹PHP新書2007)を具体的に動き出す際のヒントにされるとよいでしょう。

 
※この原稿を書いていた27日に、文科省の2015年度「問題行動調査」の結果が公表されました。それによると「いじめ」の学校による認知件数は過去最高の224,540件とのこと。

28日の毎日新聞の記事に、森田洋司・鳴門教育大特任教授による「自殺などの深刻な事態に発展するケースは教員同士の情報共有がうまくいっていない場合が多い。何か問題を見つけても、教員は責任感から1人で解決しようと考えがちだが、素早く組織的な対応をすることが苦しんでいる子供を救うことにつながる」という発言が掲載されています。

まさに「情報共有」「組織的対応」は、「いじめ」だけでなく、「魅力ある職場づくり」の基礎となる項目です。

2016年7月24日日曜日

教員研修について


2週前の話題は「教員研修」でした。最近、かつての仕事仲間の先輩と話す機会があり、そこでも「教員研修、校内研修」が話題になりました。その先輩も指導主事経験者であり、私もそうでした。その二人の一致した結論は、「教育委員会等の主催する教員研修は役に立たない」です。なぜ役に立たないかはこのブログでも再三話題になっているので、繰り返しませんが、2週前の記事にある通りなのです。

4. 教師の学びの場は、学校である。』http://projectbetterschool.blogspot.jp/2016/07/blog-post_10.html

 
    そこで、校内研修が必要不可欠なのですが、現状はさびしい限りです。

さきほどの先輩は校長退職後、何年にも渡って「初任者指導教員」を務めました。

その結果わかったことは「驚くほど、先輩教師が後輩に指導できていない」ことだそうです。ですから、「学びの共同体」などといっても、学び合える環境などほとんどない学校が現実には大半を占めているのではないでしょうか。確かに、校内研修はやっているかもしれませんが、それは「アリバイづくり」程度の中身に過ぎないように思います。

そこで、次の点が重要になってくるのです。
     

6. 学校のリーダーは、学校の中で教職員がプロとして学び続けられる文化をつくり、維持する責任がある。』

まったくその通りなのですが、それができている管理職は何%いるでしょうか? ちなみに、「リーダー」は管理職のみを指しておらず、教務主任や学年や教科等のリーダーなど学校のミドル・リーダーも含んでいます。

 
これもまさにその通りです。悲しいことに、校長が授業内容等について指導できない、それだけの力量がない人が少なからずいるという厳然たる事実があります。

それでは全く救いはないのか、と言うとその解決策はまず次の一文にあります。

 
7. 学びや学校を変える単位は、個人ではなく、チームである。』

 
自分だけで自分の学びを変えられるような人はほとんどいません。サポートし合う仲間がいることが何よりも大切なのです。校内でそのようなチームを作り、授業や教材や生徒指導のことなどについて、気楽に話し合えるそんな仲間がいることが大切だと思います。

さらに今はネットの時代ですから、SNSを利用した仲間作りもよいと思います。米国では、Pinterestという写真中心の投稿サイトがありますが、教師同士の授業や教材づくりに関する交流の場にもなっているようです。

 そして、最後には次の点が重要です。

 
9. 個々の教師が改善・成長・学びを実現するために、必要なサポートが何かを明らかにする必要がある。』

 
その場限りの「イベント的な」学びではなく、継続的にサポートすることのできる体制づくりです。校内だけでなく、国内のあちこちにこのようなセンターがあるといいですが。

この点も、米国の様々な地域の民間サポート団体のあり様を学べないものかと常々思います。

 
無いものねだりで嘆いていても始まりません。

やってみようと思った人間がまず動いてみる、そこからしか物事は始まりません。

このブログがそういった方々の支えの一つになれればと思います。

 

 

2013年6月30日日曜日

教師塾について


最近、ある大学生と話をしたとき、「○○教師塾」の話題になりました。その学生も大学からの推薦を受けて、○○教師塾に行っているのですが、「先生、あの○○教師塾をどう思いますか?」と聞かれました。

 私は、「基本的に私の考えている方向性とは真逆だね」と答えました。
 

 ○○教師塾は近年、自治体の教育委員会が自分たちの管轄する学校に優秀な教師を送り込むために、大学などの養成機関とは別に自前である程度教育しようとするねらいのもとに始められた施策のようです。結構、あちこちでこのような教師塾が作られています。

(早い話が、優秀な学生の青田刈りでしょう。)

 

 ですから、自分たちがイメージする優秀な教師という型にはめようとするやり方がどうしても目立ちます。

 質問してきた学生も、どうも教委のそのあたりの意図が透けて見える点を良く思っていないようでした。現場の教員からの反応も決して芳しいものではないようです。

 その自治体についてさらに言えば、この10年間に繰り出してきた様々な施策がことごとく学校を管理の論理で動かそうとするものばかりでした。その結果、どうなったのか。
 

 このブログでも話題になった、「職場内のコミュニケーションの欠如」です。管理職と一般教員の間にできた壁です。本来、組織として協働すべき教職員が、一体感を感じられない組織になってしまったのです。

 

 自民党の教育再生実行会議でも、大学での教員養成について、「教職の使命感」を植え付けるような教育がまず行われるべきものだという方向に動いているようです。教師の専門性などは二の次のようです。

 

 勤勉で、文句も言わずに働く労働者を作り出すことだけがこの国の将来にとっていいことなのでしょうか。現実は、もうこれまでのやり方では立ちいかないことをあらゆる分野で示しているにもかかわらずです。

 

 多くの企業がこれまでの成功体験から抜け出すことができず、相変わらずのやり方に固執しており、学校もまさにそうです。
 この状況を突破するのは、やはり若い力だと思うのですが。
 
 

2012年12月2日日曜日

多忙感の解消


教育現場で「多忙感」が語られてしばらく経つ。

 先日読んだある雑誌に次のように書かれていた。
 

「一般に、教師は授業や子どもとの関わりが多忙であっても、あまり苦痛は感じない。それは教師のいわば本来的な仕事であり、教職に対する魅力でもある。これに対して、保護者対応や校務分掌などの諸活動が多忙になるほど、教師はストレスや疲労感を感じやすく、しかも本来の仕事に十分な時間をかける余裕が減少する。」
 

(「学校運営におけるリーダーシップとは」渕上克義「児童心理201211月号」金子書房)

 

 この文章に書かれていることは、現在、教職にある者の大多数が肯定する内容であろう。

そこで、「保護者対応や校務分掌などの諸活動」とある中の、「校務分掌」について考えてみたい。
 

ちなみに本校の校務分掌一覧表を見ると、全体が8つの部に分かれている。

教務部、学習指導部、特別活動部、生徒指導部、キャリア教育部、施設管理部、事務部、渉外部である。特別活動部やキャリア教育部を学習指導に入れたり、事務部と渉外部を合体させたりするという学校もある。

さらにまとめれば、教務、学習指導、生徒指導、事務・施設管理の4つになるのだろうか。肝心なことは、それぞれの部や係の中で、活動の精選が図られ、スリム化が実現されているかどうかということだ。

 

「選択と集中」とは、最近あちらこちらで聞く言葉である。これは校務分掌のなかでの優先順位にも使える考え方である。この仕事は学校全体として重要だと考えるから、特に手間をかけてやるというものがある一方で、書類が整っているレベルでよいというものもある。
そのあたりの仕事の順位付けは管理職がやるべきことである。

ただ、それによって減らすことのできる仕事量は当然限られている。残ったものは、やらなければならない。

 

次に問題なのは、それをどうやるかである。

先ほど引用した渕上さんの論文のなかに「集団効力感」という言葉が出てくる。

これは、簡単に言えば「自分たちで力を合わせて問題を解決できる感覚」ということである。

組織の中にお互いの信頼関係ができ、開放的な雰囲気が生まれると、互いに支え、支えられるという「互恵的な関係」が育まれるということだ。
 

渕上さんはこれをさらに次のように分析している。

「教師が自らの職場における互恵的な関係を認識するようになると、仕事に対する充実感だけでなく、心身共に余裕やゆとりを感じるに違いない。」(前掲書・p.103)

 

「多忙感の解消」は多くの教育委員会や学校の今日的課題の一つとなっているが、解決のヒントはこのあたりにありそうである。

渕上さんの論文の冒頭にある、次の一節も参考になるものだと思う。

 

「保護者対応や校務分掌に対する教師集団のまとまりが形成されている学校ほど、教師の仕事に対する誇りや満足感が高まる傾向にあることが見いだされている。」(前掲書p.99)

 

単なる仲間意識や教科指導におけるまとまりだけではだめなのだという研究結果が出ているそうである。やはり、保護者対応とか校務分掌という、どちらかと言えば精神的なエネルギーをより多く消費する問題に、組織として協力して立ち向かっていけるという雰囲気が充実感や満足感につながっていくようである。

 

このように見てくると、多忙感の解消のためには、組織のなかに「互恵的な関係」を築くことが必須である。それには、職員相互の信頼関係の構築である。そのためには、校長自らがその先頭に立つ気概をもち、率先垂範することである。
 
職員のなかには、性格的に問題があったり、仕事を遂行する能力が低かったりと、対応の難しい人もいるのが現実である。とかく、そういう人には「排除の論理」で接してしまいがちであるが、そうではなくて、組織の一員として遇することにより、最後には「互恵的な関係」が生まれるのである。これは、自分自身の経験からも頷くことができる事実である。

 

「リーダーシップ」という言葉を聞くと、リーダーがその組織の成員をある方向に引っ張っていくというイメージが一般的に強い。
 
しかし、今回取り上げた「多忙感の解消」には、その反対に成員がリーダーについていこうと思えるような組織、すなわちそのなかの人間関係を「互恵的な関係」に育てていくことに苦心するのが今日的なリーダーの役割の一つだと言うこともできるだろう。。