イノベーションを起こせる組織とはどのようなものか。山口周さんによるとその要因の一つは「人材の多様性」であると言います[*1]。この人材の多様性は、「考え方の多様性」「意見の多様性」につながるものです。また、ただ人材の多様性が確保されていればよいかと言うとそうでもなくて、大切なことは「多様な意見」を促す組織運営に関するリーダーシップです。このようなマネジメントはますます学校という組織で求められていくものだと思います。
『次世代スクールリーダーのための「校長の専門職基準」』という本があります[*2]。このなかに「基準1」として次のように書かれています。
「今日は、2022年以降から実施される高校の新学習指導要領について皆様の意見をお聞きしたい。生徒たちにとって大変重要なものであると認識しているので、しっかりと議論をしたうえで、本校の独自性が感じられる内容にしていきたいと考えている。」
「今日は、活発な議論をありがとうございました。カリキュラム改訂は、「学校」としては教育の根幹を担う重要なものと考えておりますので、今後も皆様のご意見を聞きながら検討していきたいと思います。」
[*1]山口 周『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』光文社新書/2013
[*2]日本教育経営学会実践推進委員会編『次世代スクールリーダーのための「校長の専門職基準」』花書院/2015
[*3]石川一郎・矢萩邦彦『先生、この「問題」教えられますか?』洋泉社/2019
『次世代スクールリーダーのための「校長の専門職基準」』という本があります[*2]。このなかに「基準1」として次のように書かれています。
「学校の共有ビジョンの形成と具現化」小項目1「情報の収集と現状の把握」
校長は様々な方法を用いて学校の実態(児童生徒の学習・生活、教職員の資質・能力や職務の実態、保護者・地域からの期待、地域社会の環境、これまでの経緯など)に関する情報を収集し、現状を把握する。
実態の把握、現状分析はまずマネジメントの出発点で重要な要素です。そのために、自ら求めて、様々な立場の人とコミュニケーションを図り、日頃から学校内外の情報を取りに行かなくてはなりません。それを校長室で待っているだけではご機嫌伺の部下からの耳触りの良い情報しか入ってこないのです。それでは、校長として学校経営の大切な場面で、判断や指示を誤ることになります。人には残念ながら二面性があり、自分の利益を優先する姿を表面的には隠していたり、相手への嫌悪感や嫉妬などを笑顔の下に隠したりしているものです。それを見抜くことは難しいことですが、絶えずその二面性を意識しながら話を聞くという心構えがリーダーには求められるのではないでしょうか。
また、最近出版された『先生、この「問題」教えられますか?』[*3]では、高校の職員会議の様子を再現するということで、次のように紹介しています。議題は「新学習指導要領による2022年以降の高校のカリキュラムをどうするか」とのことです。そこに描かれた会議の冒頭のあいさつと最後の締めくくりとしての校長の発言は以下のようなものです。
「今日は、活発な議論をありがとうございました。カリキュラム改訂は、「学校」としては教育の根幹を担う重要なものと考えておりますので、今後も皆様のご意見を聞きながら検討していきたいと思います。」
これを読まれてどのように感じられましたか。
この類の話は学校ではよく聞く話かもしれません。しかし、考えてみれば、このような話では、校長が学習指導要領の改訂をどう受け止めているかわかりませんし、この学校でそれをどう展開したいのかが全くわかりません。学校の現状を踏まえたうえで、学習指導要領が求めているような生徒を育てていくためには、「何を」「どうやって」いけばいいのか、具現化するための道すじを示す必要があります。その過程で、職員の多様な意見を拾いながら、活かせるものは提案として活かしつつ、具体的な方針を示すことで、学校が組織として動き出すことになります。
結局、このようなマネジメントが行われないために、ただ表面上「やっているふり」をするだけの状態が続くことになるのです。これでは、いくら学習指導要領で次世代の教育方針を示したところで、学校現場で効果をあげることは難しいと思います。
本来、校長会、教頭会はチャレンジ精神のある会員をサポートする役割を担うべき組織のはずですが、これもまた年間の様々なイベントをこなすだけの組織になってしまっています。米国にも校長で構成する職能団体がありますが、ここには学校経営に役立つ情報やサポートがふんだんにあります。
この彼我の差を埋めるための情報提供もこのブログの目的の一つです。ぜひ、『教育のプロがすすめるイノベーション』(新評論2019)をまだお読みでない先生方には手に取っていただきたいと思います。改革のための道すじがはっきりと見えてきます。学校にはICT教育など取り組まなければならないことが山ほどありますが、それを仕方なく、「やらされているという意識」で取り組むのと、自ら主体として取り組むのとでは天地ほどの差があります。
今年一年このブログの記事をお読みいただき、ありがとうございました。
また、年明けからも引き続き、皆さんとともに、「学びの共同体」づくりを考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
[*2]日本教育経営学会実践推進委員会編『次世代スクールリーダーのための「校長の専門職基準」』花書院/2015
[*3]石川一郎・矢萩邦彦『先生、この「問題」教えられますか?』洋泉社/2019
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