2012年12月2日日曜日

多忙感の解消


教育現場で「多忙感」が語られてしばらく経つ。

 先日読んだある雑誌に次のように書かれていた。
 

「一般に、教師は授業や子どもとの関わりが多忙であっても、あまり苦痛は感じない。それは教師のいわば本来的な仕事であり、教職に対する魅力でもある。これに対して、保護者対応や校務分掌などの諸活動が多忙になるほど、教師はストレスや疲労感を感じやすく、しかも本来の仕事に十分な時間をかける余裕が減少する。」
 

(「学校運営におけるリーダーシップとは」渕上克義「児童心理201211月号」金子書房)

 

 この文章に書かれていることは、現在、教職にある者の大多数が肯定する内容であろう。

そこで、「保護者対応や校務分掌などの諸活動」とある中の、「校務分掌」について考えてみたい。
 

ちなみに本校の校務分掌一覧表を見ると、全体が8つの部に分かれている。

教務部、学習指導部、特別活動部、生徒指導部、キャリア教育部、施設管理部、事務部、渉外部である。特別活動部やキャリア教育部を学習指導に入れたり、事務部と渉外部を合体させたりするという学校もある。

さらにまとめれば、教務、学習指導、生徒指導、事務・施設管理の4つになるのだろうか。肝心なことは、それぞれの部や係の中で、活動の精選が図られ、スリム化が実現されているかどうかということだ。

 

「選択と集中」とは、最近あちらこちらで聞く言葉である。これは校務分掌のなかでの優先順位にも使える考え方である。この仕事は学校全体として重要だと考えるから、特に手間をかけてやるというものがある一方で、書類が整っているレベルでよいというものもある。
そのあたりの仕事の順位付けは管理職がやるべきことである。

ただ、それによって減らすことのできる仕事量は当然限られている。残ったものは、やらなければならない。

 

次に問題なのは、それをどうやるかである。

先ほど引用した渕上さんの論文のなかに「集団効力感」という言葉が出てくる。

これは、簡単に言えば「自分たちで力を合わせて問題を解決できる感覚」ということである。

組織の中にお互いの信頼関係ができ、開放的な雰囲気が生まれると、互いに支え、支えられるという「互恵的な関係」が育まれるということだ。
 

渕上さんはこれをさらに次のように分析している。

「教師が自らの職場における互恵的な関係を認識するようになると、仕事に対する充実感だけでなく、心身共に余裕やゆとりを感じるに違いない。」(前掲書・p.103)

 

「多忙感の解消」は多くの教育委員会や学校の今日的課題の一つとなっているが、解決のヒントはこのあたりにありそうである。

渕上さんの論文の冒頭にある、次の一節も参考になるものだと思う。

 

「保護者対応や校務分掌に対する教師集団のまとまりが形成されている学校ほど、教師の仕事に対する誇りや満足感が高まる傾向にあることが見いだされている。」(前掲書p.99)

 

単なる仲間意識や教科指導におけるまとまりだけではだめなのだという研究結果が出ているそうである。やはり、保護者対応とか校務分掌という、どちらかと言えば精神的なエネルギーをより多く消費する問題に、組織として協力して立ち向かっていけるという雰囲気が充実感や満足感につながっていくようである。

 

このように見てくると、多忙感の解消のためには、組織のなかに「互恵的な関係」を築くことが必須である。それには、職員相互の信頼関係の構築である。そのためには、校長自らがその先頭に立つ気概をもち、率先垂範することである。
 
職員のなかには、性格的に問題があったり、仕事を遂行する能力が低かったりと、対応の難しい人もいるのが現実である。とかく、そういう人には「排除の論理」で接してしまいがちであるが、そうではなくて、組織の一員として遇することにより、最後には「互恵的な関係」が生まれるのである。これは、自分自身の経験からも頷くことができる事実である。

 

「リーダーシップ」という言葉を聞くと、リーダーがその組織の成員をある方向に引っ張っていくというイメージが一般的に強い。
 
しかし、今回取り上げた「多忙感の解消」には、その反対に成員がリーダーについていこうと思えるような組織、すなわちそのなかの人間関係を「互恵的な関係」に育てていくことに苦心するのが今日的なリーダーの役割の一つだと言うこともできるだろう。。

 

 

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