先月、文部科学省が2018年度の全国の公立小学校の教員採用試験の倍率が3.2倍で過去最低になったことを公表しました。5月10日付の毎日新聞の記事によると、その原因について次の3点が主な要因であると紹介しています。
・「団塊ジュニア」世代の小学校入学に備えて80年代に大量採用した教員が退職期を迎えていることによる小学校教員採用の増加
・民間企業の採用が活発化していること
・小学校教員の免許取得のカリキュラムを組む大学が限られていること
この分析に対して、帝京科学大学の剱持教授は「学校現場が『ブラック』だと知られてきた影響ではないか」と指摘しています。さらにこうも付け加えています。
「働き方改革を進め、処遇の改善を図ると同時に、若手が教員の魅力を新卒に伝えられるようにしなければ、倍率は今後も低下するだろう」
この記事の最後の部分で、働き方改革と処遇の改善は政治や行政にお願いするとして、後半の「教員の魅力」はぜひ多くの現場の教師のみなさんに考えていただきたいことです。
それでは、その魅力をどのようにして伝えていけばよいのでしょうか。
★授業に熱中する
「コンプライアンス=従順さ」ばかりが要求される学校では面白くない、わくわくしないのです。教師だってそうですから、子どもはなおさらです。
それを学ぶことは面白いことばかりではないなどと分かったようなことを言う人もいますが、基本は本物の学びなら面白いはずです。今まで、考えもしなかったことに気づかされたり、そんなこともあるのかという驚きや発見、そんな場面に出会ったりしたら、わくわくしないはずがありません。そんな授業をつくるのが教師の仕事の中心のはずです。そのために、できることはなんでもやる。ネットワークを利用して、多くの人の知恵を集める。何といっても、今はSNSの時代です。このような取組を続けていくことが新卒の教師に「教師の魅力」を伝えることになると思います。
★「選ぶ—やってみる—振り返る」
最近、大学での自分の授業や時折参観する小学校での授業などを見るにつけ、「選べる」ことの大切さに気付かされます。
『教育のプロが進める選択する学び』(マイク・エンダーソン/新評論2019)の28ページに次のような一節があります。
学習する際に選択肢を提供された生徒は、より高いレベルで学習に取り組めるという理由がいくつか明らかになっています。一つには、生徒がより楽しんで取り組むときには、彼らの脳は円滑に学んでいることをよりよく処理することができますし、それをより効率的に、長期間にわたって記憶できるようになります。
つまり、選択肢を与えることによって、児童生徒はより深く豊かな学びに取り組むことができるというわけです。当然、これまで以上に課題に集中して取り組むこともできるようになるわけです。全員に同じ課題を与えて、指導計画に定められた学習内容を「教科書」というたった一つの資料だけに依拠して「カバーする」授業を続けていては21世紀の学びは実現しないということです。
★学び続ける
やはり何と言っても、自分自身が学び続けることが大切です。そのために、本を読むことは避けて通れません。もし、一人で読み続けることが難しいならば、ぜひ何人かのグループでブック・クラブ形式によって行うと案外続けられるものです。一人では途中で挫折しそうな本もこれなら続けられたという経験は私自身何度もありました。
また、少人数でもよいですから、共に学ぶグループ・仲間がいると良いと思います。私も中学校の現場を離れて6年たちますが、今でも少人数の勉強会を月に1回のペースで行っています。話し合いの中身は、それぞれが持ち寄った実践事例などですが、一人では気づけない別な角度からの「ものの見方」を教えてくれる貴重な機会になっています。
一人ではできないことも仲間の助けがあれば続けられるでしょうし、一人では気づかない新たな視点からのものの見方にたどり着くこともできます。気の合う仲間を自分の近くで探して、まず話し合う機会をつくりましょう。そこが、学校改善と自己変革の第一歩です。
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