2017年3月25日土曜日

イノベーターになる


Innovator's MindsetGeorge Couros/ Dave Burgess Consulting , Inc. (2015)という本の一節に次のような文があります。

Savvy leaders understand the need for innovation and, as a result, constantly reinvent their organizations. Starbucks, for example, started off as a business that focused solely on selling coffee beans. Today, it is the best-known "coffee shop" in the world. 

(有能なリーダーはイノベーションに対する必要性を理解しており、結果として、いつも組織が作り変えられる。たとえば、スターバックスはただコーヒー豆を売ることに特化したビジネスで始まった。今日、それが世界中で最もよく知られたコーヒーショップである。)

Innovationに対する理解が組織改革につながり、結果的に成功につながるということです。

最近、野球評論家の野村克也さんの『暗黒の巨人軍論』(角川新書2017)を読んだのですが、あの9連覇を成し遂げた川上哲治監督は、一見すると保守的と思われがちだけれども、実は「改革者」だったという話が紹介されていました。(同書p.83)今日では投手の分業制は当たり前ですが、「リリーフ専門」の投手を置いたのも川上さんが最初だそうです。

 
それから、話は少し脱線しますが、最近私の勤務先で「2020東京五輪応援企画」というイベントがあり、リオ五輪7階級メダル獲得の男子柔道監督・井上康生さんの話を聞く機会がありました。リオの前のロンドン五輪では史上初めて金メダルゼロという屈辱を味わい、そこから日本柔道復活の大役を任されたのが井上康生さんです。どんな指導をしたのか興味があったので、話を聞きに行きました。

そこで、わかったことは井上康生さんも実はイノベーターの一人だったことです。

井上監督は柔軟な発想の持ち主で、それまでの柔道界ではあまり顧みられてこなかった体力トレーニングに専門家を入れたり、科学的なデータ分析(対戦相手のそれまでの試合での映像分析なども含む)を取り入れたりして、組織改革を大胆に行ったそうです。

「柔道」も「JUDO」となり、「JUDO」には世界各地の民族格闘技(たとえば、ロシアのサンボやモンゴル相撲など)が流れ込んできており、もはやこれまでの柔道とは全く違ったものになってきているとのことでした。そういった新しい流れに対応していくためにも、これまでのやり方とは異なる「革新」が必要だというお話でした。

そうした革新の視点で見ると、学校はまだまだ旧態依然としているところがあるのではないでしょうか。小学校の英語教育、プログラミング教育等々、新しいものがどんどん教室へ入り込もうとしているのですが、肝心の教育活動や授業の根っこの部分がどうなのだろうと思ってしまいます。

 
たとえば、「変化を嫌うこと」「前年踏襲主義」、学校行事一つとっても、日付と担当者名だけが変わるだけで、昨年のものと全く同じ内容の行事があると思います。一人ひとりが、それぞれの仕事の中で、イノベーターとなって取り組んでいく、それこそが今求められているものの一つであると思います。

 
集団に埋没して、自分の目の前の仕事さえこなしていればよいという職場が企業においても決して少なくないようです。日本の企業はこれまで社員の勤勉さやチームワークという企業文化を売り物に、優れた製品を世界に送り出していました。ところが、その企業文化が足かせとなり、今や労働生産性や競争力において他国の後塵を拝する状態です。ある専門家によると、この苦境を脱するには結局は社員一人ひとりの「分化」によるしかないとのことです。(『なぜ日本企業は勝てなくなったのか』太田 肇・新潮選書2017)

子供たちを変えていくためには、まず教師が変わる必要があります。

それには、集団に埋没したり、群れたりするのではなく、一人の人間として自立し、子供たちのためにイノベーターとなって挑戦する教師であってほしいと思います。

4月からの新年度において、ぜひ校内のイノベーターになってみたらどうでしょうか。

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