あとしばらくしたら新年度の授業が始まります。準備はできていますか?
欧米では「いいクラスの授業はどんなふうか」の研究★①が、少なくとも50年ぐらい続いています。先週に引き続き、その一つを紹介します。
それが小学3年生の国語の授業であろうと、8年生(アメリカの高校は4年制なので、日本の中学校の最終学年に相当)の数学の授業であろうと、効果的な授業★①を行っている教師の特性には共通点があります。ここでは、11個の特性を紹介します。
あなたは、どの特性はすでにもっていますか? 来年度、どの特性を獲得するのに挑戦しますか?
1)学びを促進する授業のルーティーンと進め方:毎日のすべての授業時間を使いこなせるように、円滑な進め方になるよう、そして教師の指示がなくても生徒は何をすればいいか分かっている状態になっている★②。少しの練習/反復を通じて、すべての生徒が何をいつ、そしてどうすべきかを知っている。年度の最初の週は(アンケート等を取ることで)生徒のことを知り、関係を構築し、一年間の明確な期待を確立するために費やしている★②。
2)継続的なフィードバック:生徒が何はうまくやっているか、何は修正が必要か、そしてどのように改善できるかの情報を提供することで、絶えず生徒の向上を可能にしている★③。その際、個々のニーズに合わせた具体的で実行可能なフィードバックを提供することが大切。
3)変化を大切にしている:座席の配置、グループの構成、インセンティブ、音楽、プロジェクトなど、定期的に変更して新鮮味を大事にし、全員が夢中で取り組めるようにしている。
4)明確さ:教師自身のモデルを含めた具体的な事例、明確な評価基準、フィッシュボウル(金魚鉢)などを通して、高い期待を確立している。生徒が学び・成長できるという信念を常に表現し続けている。
5)目的を明確にしたうえでの計画:すべての時間を有効に活用し、授業が始まる瞬間から終わる瞬間まで生徒をどのように夢中で取り組ませるかを考えている。生徒の理解を常に把握し★④、次の日の学習に対する好奇心を刺激する。
6)一人ひとりの生徒をいかす指導★⑤:異なる学び方や学ぶスピード等をもった生徒が確実に成功できるように計画している。異なるレベルの質問、生徒一人ひとりがいきるグループ活動、個々の生徒のニーズに合わせた異なる宿題や評価オプションを作成するために時間を費やしている。
7)生徒と学習との関連づけ:単にその日の学習目標を述べるのではなく、学習内容を生徒の暮らしや興味関心に関連づけて提示できるようにしている。関連づけることで、生徒の注意を喚起し、より夢中で取り組めるようになる。
8)生徒を見取り続ける:授業中に常に生徒の理解度を確認している。これは、理解を示すために親指の方向(上、横、下)で理解度を示してもらったり、一人で考えて-ペアで共有し-全体に紹介する活動、あるいは授業で理解したことを概念図として描くことなどで行うことでできる★⑥。授業の中盤にそれをすることで、調整が必要な箇所がわかり、すべての生徒が授業の終わりまでに理解できるようにすることが可能になる。
9)肯定的に認める:言葉による励まし、ハイファイブ、ステッカーなどを通じて、生徒の努力を褒め称える。生徒のやりきる力(根気)と努力を認めることが、モチベーションと成長マインドセットを育み、さらに成人期に向けての回復力を育成する★⑦。
10)家族とのコミュニケーション:年度開始早々に、家族とのコミュニケーションを開始し、電子メール、メッセージ、ニュースレター、ブログ等を通じて定期的に情報を発信することはもちろん、可能な限り双方向のやり取りを図る。問題が起こった時だけコンタクトを取るのではなく、いい情報のやり取りがあるからこそ緊急時の問題解決が容易になることを忘れてはならない。
11)教える情熱と学習内容の知識を磨き続けている:教えることへの情熱と熱意を注ぐことで、生徒の興奮と学びを引き起こすことができる。生徒が夢中で取り組みたくなり、深い探究を可能にする高次の思考をもたらす質問をする★⑧。教師と生徒のこのダイナミックな相互作用★⑨は、私たちが授業でもっと頻繁に見たいことの一つ。
子どもが教師(や教科書)の指示に従う学び手ではなく、自立した学び手になる教室環境をつくり出したり、教師が教え方を身につけたりすることは、教師のやる気さえあればできることです。その際のポイントは、生徒のニーズに応えるために考え方を変えたり、方向転換する必要があるかもしれません★⑩。しかし、その教師の決断によって得られる成果や成長は計り知れません。それは、教師にとっても、そして生徒にとっても、です。
以上、出典はhttps://www.edutopia.org/article/creating-welcoming-classroomでした。ちなみに、ChatGPTで「effective teacher」の要素を尋ねたら、若干異なる要素を回答してくれました★⑪。興味のある方は、比較してみてください。
★① 「highly effective classrooms 」ないし「highly effective teachers」の研究は、少なくとも欧米では1970年代ぐらいから、50年ぐらいは継続して行われています。なお、The Highly Effective Teacher: 7 Classroom-Tested Practices That
Foster Student Successは、『あなたの授業力はどのくらい? ~ デキる教師の7つの指標』として出版されています。日本には、このような研究(および実践)は存在するでしょうか?
★②これを実現している授業が、自立した書き手・読み手・学び手を育てることを目的にした『作家の時間』や『読書家の時間』や『イン・ザ・ミドル』等で見られます。
★③ 教師がいいフィードバックのモデルを示すことと、練習によって、生徒たち同士でも効果的なフィードバックを提供し合えるようになります。そのやり方は、https://projectbetterschool.blogspot.com/2012/08/blog-post_19.htmlと『ピア・フィードバック』を参照ください。
★④ この点については、8)を参照してください。これを可能にするには、1)や2)が実現していることを意味し、教師一人ががんばり続ける一斉授業とは極めて相性も悪いです。
★⑤ これを実現するのに役立つ資料は、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』『一斉授業をハックする』『質問・発問をハックする』『宿題をハックする』『一人ひとりをいかす評価』などがあります。
★⑥ 事例として紹介されているのは、形成的評価として行うことができる50~60はある方法の3つです。形成的評価の多様な方法は、「check for understanding strategies」か「formative
assessment strategies」で検索してください。
★⑦ 学びにおける成長マインドセットは、とても大切です。詳しくは、https://projectbetterschool.blogspot.com/2020/06/blog-post_21.html のなかで紹介されている『オープニングマインド』ともう一冊の本が参考になります。
★⑧ ブルームの思考の6段階をご存じですか? 一般的に、低次の思考は、暗記と理解。高次の思考は応用、分析、評価、統合(創造)と言われています。実際の授業の発問の9割以上は、低次の質問となっており、それをいかに高次の質問(生徒が学びがいを感じられる問い)に転換していくのかが大きな課題です。このことは、★⑨とも大いに関係します。
★⑨ 教師と生徒のダイナミックな関係を可能にする教え方として、https://docs.google.com/spreadsheets/d/1KXuWtBc4kl6jRr2KGwnqPAH1vSryYkM7qNXd0ArKpYU/edit#gid=1042705275 で紹介されている本や、『プロジェクト学習とは』や『PBL~学びの可能性をひらく授業づくり』などの探究学習関連の本がおすすめです。https://projectbetterschool.blogspot.com/2023/07/blog-post_16.html も参考にしてください。
★⑩ 生徒のニーズは、クラス全体のニーズという側面と、より大切な一人ひとりの生徒にとっての異なるニーズがあります。ここで言わんとしていることは、前者のニーズよりも後者の一人ひとりの異なるニーズに応えることです。そのベースになるのが「発達の最近接領域(Zone of Proximal Development=ZPD)や「学習ゾーン」ですhttps://projectbetterschool.blogspot.com/search?q=ZPD。当然のごとく、一人ひとりの生徒は異なるZPDや学習ゾーンをもっています。教師を含めた大人も、です。それが同じ内容を同じペースで扱っても、異なる学びや結果が個々の受講者や参加者によって得られることです(大人の場合の幅は、ほぼ0%~100%。子どもの場合は扱う内容にもよりますが、10%~90%ぐらいの幅でしょうか? なお上限は、テーマ等によっては100%を超えている場合さえあります。教師/講師よりも、生徒/受講者の方が知っていることもあり得ますから。)。
★⑪ すでに情報は、地球上に存在しています。なので、それを探そうとするか否かにかかっています。残念ながら翻訳ソフトやChat GPTは100%のレベルでは変換してくれませんが、70~90%にはなりつつあります。その、10~30%は結構大事な部分なのですが・・・ぜひ、その部分を補いつつ情報ギャップを少しでも埋めてください。なお、Chat GPTに日本語で依頼する時も、同じようなギャップはまだ存在していますので、鵜呑みにしないでください。役所の文章と同じで、分かったような文章を打ち出してくれますが、心に引っかかりずらいものが少なくない気がしています。
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