今週末に出る予定の『学びは、すべてSEL』(ナンシー・フレイほか著、新評論)の下訳段階の原稿を去年の夏の間に読んでくれていた私立かえつ有明中・高等学校の大木理恵子先生(国語)が、書評を書いてくれましたので紹介します。
SEL(感情と社会性の学習)が生徒にとって大切なもので、教室の中にその実践を取り入れたいと思ってはいるものの、そのための特別な時間を捻出することはできない、と足踏みをされている先生方も多いのではないでしょうか。この本は教科の指導とSELの取り組みは別枠で取り組むべきと思い込んでいた私に目からウロコの視点を与えてくれました。
本書を読むと教科指導にこそSEL の土台づくりが必要だということがよくわかります。生徒たちが本当に「よく学ぶ」ためには、彼らのエージェンシー(主体性)が必須です。そのマインドセット(無意識の思考・行動パターン)が出発点となって、真に意義ある学びの世界の扉が彼らの前に開かれます。生徒たちが自らの感情に意識を向け、そして上手に扱えるようになること、また社会性を育み、共に生きる他者との良好な関係性を結ぶことで、生徒にとって安心安全の場がつくられ、自らの学びを豊かに広げていける環境は整っていきます。SELを単独で扱うのではなく、教科の学びのベースとして組み入れていくことが、生徒の学びをより充実したものにしていくだけでなく、豊かな成長を促すという相乗効果が期待できるという点でも、非常に重要なアプローチだと思います。本書は、教科の中でどのようにSELを扱うのか、豊富な実践例が紹介されています。
さらに本書は、生徒の成長マインドセットを育む機会は日常の何気ないシーンの中に転がっていることを教えてくれます。生徒からの些細なサインや私たちにとって好ましくないような行動にこそ、彼らのマインドセットをより良い方向へ変えていくチャンスがあります。彼らの一番身近にいる大人である私たち教員が、彼らのサインを見落としたり、目を背けたりせず、丁寧に受け止め、豊かな学びの世界に招き入れるためにも、SELのスキルや知識を理解し実践していくことが大切です。そのための指南書として、本書は多くの先生方に手にとっていただきたい一冊です。
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