深刻な教員不足が大きな問題となっています。志願者の大幅な減少、早期退職者の増加。解決する気配の見えない働き方改革など、日本の教育の衰退の序章ではないかと思えるほどです。今、手を打たないと大変なことになる。
国や地方教育委員会なども手をこまねいてるわけではなく、様々な施策や提言を出してきています。例えば、東京都教育委員会は、2024年2月「教員確保策の充実について」というプレスリリースを出しています。★1 そこでは、応募人員の増加策(増やす)、教員支援体制の充実(減らさない)、教員の負担軽減の3つの領域について、新規の取り組みやこれまでやってきた事業の拡充策などがリストアップされています。
このうち、2つ目の、教員を減らさないため一連の支援策に注目しました。
◆教員支援体制の充実(減らさない)
○ アウトリーチ型相談事業の実施
○ 「先生たちのほっとLINE」を開設
○ 新規採用教員メンターの導入
○ 「若手教員等とのコミュニケーションの手引」の作成
○ 教育用語集の作成
○ アウトリーチ型相談事業の実施
○ 「先生たちのほっとLINE」を開設
○ 新規採用教員メンターの導入
○ 「若手教員等とのコミュニケーションの手引」の作成
○ 教育用語集の作成
「新規採用教員メンターの導入」では、「メンターに対しより良いコミュニケーション手法の研修を実施」することが謳われています。また、 「若手教員等とのコミュニケーションの手引の作成」では、「若手教員を取り巻く教員が配慮すべき点などをまとめた手引を作成」するとしています。
近年、日々多忙な業務に追いまくられている教員を、エンパワーするコミュニケーションが、著しく減少しているのではないかとの危機感の現れでしょう。現職の教員とやりとりをしても、意欲を失ったり、やる気を削がれてしまうような機会が多いと言います。
待遇面などの改善や業務上の負担の軽減のような、いわば、仕事の量的・物理的な改善も重要ですが、教員のメンタル面へのサポートは不可欠であろうと思います。むしろ、こちらの充実がなければ、他の対策が形式だけのもので終わってしまう危険性すらあると思えます。
これらの問題に対する処方箋として、大きな可能性をもっているのが、インストラクショナル・コーチングの導入です。東京都が導入しようとしているメンター制度や若手教員とのコミュニケーションの改善などにとっても、すでに実績を積んでいるインストラクショナル・コーチングが参考になるはずです。
「インストラクショナル・コーチは、生徒が学校で成果をあげられるように、教え方や学び方の改善を、教師のパートナーとして支援します。そのために、コーチは教師と協働して、現状の的確な把握、目標設定、目標達成のための教え方の選定、進捗の管理、目標達成までの課題解決などを行います。一言で言えば、インストラクショナル・コーチの役割は、生徒の学びが最大限になるように、教師の仕事を後押しすることと言えます。」★2
教員のメンタル面のサポートに限らず、教職の業務全般に対するサポートを行うことが目的であることが分かります。
『インストラクショナル・コーチング』の著者ジム・ナイト氏は、コーチにとってのコミュニケーション・スキルの重要性を説いた章で次のように記しています:
「最も優れた質問は、知識を育てるための肥料のようなものです。それはより多くのアイディアやより深い考えを生み出し、答えることに知的な楽しさをもたらします。バーガーは、優れた質問とは、「回答しがいがあるほどに難しく(そして面白く)、実際に答えられる程度にはやさしい質問のことである」と述べています。」
最も優れた質問は短く明確であり、質問者ではなく共に成長する教師に焦点を当てています。優れた質問はコーチの聡明さをひけらかすものではなく、相手が深く考える助けとなります。また、教師を肯定し、希望を育み、自分の強みと成功に目を向けるよう促します。質問はうまくいっていないことを深く掘り下げるのではなく、ポジティブな未来を想起させます。素晴らしい質問は敬意を伝えるものであり、それは「なぜあなたは生徒にもっとフィードバックを与えないのですか?」というような暗に批判を含むものではありません。コーチングの専門家であるジュリー・スターが述べているように、「素晴らしい質問は、誰かに自分は間違っていると思わせないものです」」
教員を元気にし、学校を、学び合える、ポジティブな空気の充満したコミュニティーに変えてくれる。そのような可能性をインストラクショナル・コーチングはもっていると思います。
日本の学校教育が、大きな危機に瀕している今、寄って立てる重要な考え方だと思うのですが、皆さんはどう思われますか?
★1 教員確保策の充実について
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2024/release20240201_05.html
★2 インストラクショナル・コーチの役割
ICG(インストラクショナル・コーチング・グループ)ホームページより https://www.instructionalcoaching.com
★3『インストラクショナル・コーチング』(ジム・ナイト著、図書文化、2024)まもなく発刊予定です。
★1 教員確保策の充実について
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2024/release20240201_05.html
★2 インストラクショナル・コーチの役割
ICG(インストラクショナル・コーチング・グループ)ホームページより https://www.instructionalcoaching.com
★3『インストラクショナル・コーチング』(ジム・ナイト著、図書文化、2024)まもなく発刊予定です。
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