今回は「さらなる探究活動」ということで、「科学者の訪問」を考えます。
『だれもが<科学者>になれる!』(新評論・2020年)では、第8章「さらなる探究活動」のなかに、「科学者の訪問」というトピックがあります。(同書179ページ)その冒頭の紹介です。
かつて県立科学館に勤務しているときに、年に3回開催していた企画展を計画するときは知り合いの大学教員や学生時代の友人のつてをたどって、そうした専門家を探しました。大切なことはそうしてできた人間関係を1回きりで終わらせるのではなく、その後も定期的にコンタクトを取ることです。そうすると面白いことにネットワークが広がっていきます。するとまた新しい出会いがあり、そのネットワークがさらに広がります。結果として、新しい会合やイベントが増え、面白いことがますます増えていきます。「忙しいのに何を酔狂なことを」と考えるのはなく、忙しいからこそ、ワクワクすることを求めていくのです。
「教員の働き方改革」により、さまざまな取り組みが各地で行われていますが、依然として、教員の多忙感は現場の感覚では、それほど解消されていないようです。もちろん働き方改革は今後も進めていく必要がありますが、それと同時に、仕事に「やりがいを感じられる」という視点もぜひ忘れてもらいたくないものです。
また、ネットワークを広げる方法の一つとして、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)理数学習推進部が主体になっている「JST理数大好きNEWS」で、理数に関するイベントやプログラムの紹介などの情報を得ることもよいでしょう。その下部組織である日本科学未来館はわが国有数の科学館ですが、みなさんの住む近くにある科学館・博物館も理科に関する資料や模型、実験器具の宝庫です。これも私がかつて勤務した科学館での経験ですが、企画展などで製作した大型の実験器具・道具や解説パネルなどはイベント終了後に倉庫のなかに眠っていることが多いのです。ですから、学校ではなかなか手に入らない大型実験器具などはそうした施設に相談すると、うまくいけば借りることもできると思います。
最初の話に戻りますが、授業で専門家の助けを借りたいときは、これまで述べてきたような方法で、直接アプローチしてみることが大切です。専門家の方々は仕事の都合と時間さえ合えば、多くの場合協力してもらえると思います。また、直接出向くことは無理だとしても、オンラインで登場してもらうことも可能でしょう。ただ、校内において、自分一人でそうしたことを進めていくのは大変ですから、校内の仲間の力を借りることがとても大切だと思います。そうした仲間とまずは校内のネットワークを作ってみる。それがこうした専門家との連携を図った授業のスタートであると言えるかもしれません。特に、こうした人間関係づくりは若手・中堅の先生方に積極的に取り組んでもらえることを期待したいものです。それが子どもたちのよいモデルになります。関係づくりの苦手な子どもが増えていると思いますので、口先だけの指導ではなく、教師が自らモデルになって行動で示すこと、これが校内のさまざまな場面で求められているように思います。
★「国民の研究活動・科学技術への興味や関心を高め、かつ国民との双方向的な対話を通じて国民のニーズを研究者が共有するため、研究者自身が国民一般に対して行う双方向的なコミュニケーション活動」のことです。(文部科学省・「科学技術・学術審議会」学術分科会・学術研究推進部会(第10回)平成17年6月7日資料より)
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