リーダーシップは、学校にとって常に重要なテーマでした。
変わらない学校からの脱却を目指す学校リーダーへの提案として、2021年、『学校のリーダーシップをハックする』という翻訳書が出版されています。同書の訳者まえがきには、「あなたが原動力となり、リーダーシップをとる気概さえあれば、学校は変わります。校長や教頭、教師一人ひとりがイノベーションを起こせる存在なのです。」★1 リーダーの存在は、学校をいかなる組織にも変えうるものとも言えます。
教育現場を経験した人であれば、誰でも、学校におけるリーダーのあり方について、何らかの意見や見解をもっていることと思います。さまざまなタイプのリーダーがいます。強烈な個性と情熱をもったリーダーもいれば、沈着冷静で揺るがないビジョンを示し続けるリーダーもいます。時には、大きな疑問符がつくようなリーダーに出会ったこともあるのではないでしょうか。誰しも、経験に基づいた、何らかのリーダー像をもっているとはずです。
『インストラクショナル・コーチング』の著者ジム・ナイト氏は、「効果的なリーダーは感情的な知性があり、人間関係構築のスキルを駆使して、チームを共有された目標に向かわせることに秀でています。また、彼らは優れた聴き手であり、部下たちを本当に気にかけています。彼らのエゴよりも、彼らの行動を駆り立てる大きな目的の方が重要なのです。彼らは組織文化を理解し、それぞれの相手を個別に扱います。そして、効果的なリーダーは偽善者ではなく、有言実行の人なのです。」と述べています。
特に興味深いのが、効果的なリーダーであるための条件の一つとして、「熱意と謙虚さのバランスが取れていること」をあげている点です。
氏が収集したコーチングの事例では、対象となる教員にうまく働きかけたとしても、あまり強く押し付けず、控えめな姿勢を取り続けた場合、あまり期待するような成果があげられていません。あまりに謙虚で、控えめ過ぎて、秘めたる熱意が届かなかったのでしょうか。
一方で、「教師たちと協力的なアプローチをとりながらも、同時に変革に導くために意欲的で、計画的で、目標志向的」だった場合、その学校は目覚ましい変容を遂げたといいいます。
「個人としての謙虚さ」と「職業人としての意志の強さ」という一見矛盾したようにみえる組み合わせをバランスよく両立させているところに、人を動かす極意があるのかもしれません。
★1 ジョー・サンフォリポ&トニー・シナシス (2021) 『学校のリーダーシップをハックするー変えるのはあなた』新評論.
★2『インストラクショナル・コーチング』(ジム・ナイト著、図書文化、2024)まもなく発刊予定です。
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