2023年12月10日日曜日

失敗からの飛躍、教育の新しいアプローチ


 

教育において失敗を受け入れるマインドセットの重要性に着目した参考となる一冊の本を紹介します。

 

  Jo BoalerLimitless Mind: Learn, Lead and Live Without Barriers

 

算数・数学の授業では特に間違いを避ける傾向がありますが、スタンフォード大学の数学教授、ジョー・ボアラー氏の著作は、間違いを歓迎する学習を提唱しています。

 

学びのプロセスでは、間違いが歓迎されるべきである一方で、実際には誰もが間違いを犯したくないと感じています。特に、クラスの前での失敗はさらに恐れられがちです。間違いを受け入れる文化をどうやって生徒たちが理解し、浸透していくか、教師にとっての大きな課題です。

 

多くの教室では、生徒がほぼ間違えないように、また失敗しないように教えることに最大限の配慮がされています。しかし、生徒の成長には、理解の限界に挑戦し、間違いと向き合う環境が必要とされます。この本は、そうした学習環境の構築についての洞察を提供してくれます。

 

この本の第3章では、間違いが脳の成長と学習にどのように寄与するかを解説してくれます。神経科学の進歩により、間違いや葛藤が学習プロセスや脳の発達に良い影響を与えるというエビデンスが増えてきています。

 

 

 

1 間違いは脳を成長させる

 

ジェイソン・モーザーらの研究によると、間違いをした際の脳の反応をMRIで観察した結果、間違いがある方が脳の活性化と成長を促すことが明らかになりました。また、アンダース・エリクソンの研究は、専門家が約1万時間の練習を積むことで高いレベルに達することを示しています。これは「10000時間の法則」としても知られていますが、重要なのは単に努力することではなく、正しい方法で努力することなのです。効果的な練習とは、自分の理解の限界に挑戦し、間違いを犯し、それを修正し、さらに努力することを含みます。

 

例えば、学習科学者のエリザベスとロバート・ビョークは、テストを通じて情報を引き出すことが学習に効果的だとしています。このアプローチでは、学習者が自己テストを行い、間違いを犯し、それを修正することで、より深い理解と記憶の強化が促されるのです。

 

また、日本や中国の教育事例も紹介されていました。これらの国では、生徒が深く考え、基本的な概念に挑戦することに重点を置いており、この方法が高い成績につながっています。アメリカと比較して、日本や中国では問題を深く掘り下げ、生徒が難しい課題に直面し、それを克服することで深い学習が促されています。OECDPISAテストの結果をみると、日本のレジリエンスが高いのは、このような教育方法が一因かもしれません。

 

 

2 困難に立ち向かう価値を教える「もがくことの重要性」

 

ジェニファー先生は、生徒たちに「もがきのステップ」という図を用いて、困難に直面することの価値を教えています。彼女は生徒たちが「学習の落とし穴」に陥った際にそれを祝福し、彼らが自力で解決策を見つける手助けをしています。このアプローチは、学生が困難を乗り越えることによって、学習効果と脳の成長が促されるということを示されています。

 




この方法は、困難や葛藤を通じて学ぶことの価値を示し、教師がこのプロセスをどのようにサポートするべきかについて示唆を与えています。

 

 

 

3 失敗を成長のチャンスと捉える「失敗に対する新しい視点」

 

失敗や困難な状況をポジティブに捉え、それを成長と学習の機会として活用することの重要性を強調しています。脳科学に基づいた新しい学習法を採用する教育者の一例として、カレン・ゴーティエの事例が紹介されていました。彼女はかつて自信を失い、失敗を恐れる傾向がありましたが、失敗を成長のチャンスとして捉えるようになり、この考え方を教室にも取り入れました。彼女自身も新しい挑戦を受け入れ、新しい役職にも応募するようになりました。

 

失敗を恐れずに挑戦を受け入れる「成長マインドセット」の重要性を説明し、困難や挑戦的な状況に直面した時にそれを乗り越えることで、脳の成長や学習が促進されると指摘しています。カレンの例のように、失敗や挑戦をチャンスと捉えることができる人は、困難に直面してもポジティブなサインとして捉え、真の能力を発揮することができると述べられています。

 

 

 

 

困難や失敗を成長の機会として捉える「成長マインドセット」の価値が明らかになりました。教育現場では、このマインドセットを生徒たちに伝え、彼らが自信を持って挑戦する環境を整えていけるといいです。失敗を恐れずに新たな挑戦を受け入れることで、生徒は自己の限界を超え、真の能力を発揮することが可能となります。このアプローチは、教育の現場での新たな学習法として、今後もさらに注目されることでしょう。

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