学校では新年度が始まり、一月が過ぎました。エネルギーも底が尽き、先生だけではなく子どもたちにも疲れが抜けず、上手くいかないことも出てくる頃ではないでしょうか。
できれば失敗しないで、上手くやりたい。けれども、私たちは人間。やっぱりちょっとした失敗を犯してしまうし、その度に落ち込んでしまうこともあります。大人ならば、居酒屋で愚痴を聞いてもらうこともできるでしょうが、この緊急事態宣言のご時世、それもままなりません。子どもたちにとっては、教室内のソーシャル・ディスタンスをとらなければならないので、そもそも人と親密にかかわり話を聴き合う機会そのものもが損なわれてしまい、悩みやストレスのはけ口を見つけられない子もいます。
こんなときこそ、お互いケアする気持ちが求められます。教室でぜひ読み聞かせにオススメの本があります。それが文:スーザン・ヴェルデ、絵:ピーター・レイノルズ、訳:島津やよい『ぼくは にんげん おもいやりってだいじだね』です。★
この絵本には次のようなフレーズがあります。
“にんげんだからこそ
まちがってしまう
かんぺきなひとなんて いない
ぼくのことばや こうどうで
きずつくひとがいる
ぎゃくに だまっていたせいで
おこらせることもある
もちろん ぼくのほうがきずつくこともある”
間違ってしまい、落ち込んでもいい。完璧な人なんていないから。クラスのある子が「みんなの前で自分の意見を言いたい。けれども、恥ずかしくて上手く言えません。このまえはみんなの前で固まってしまいました」とジャーナル★★に書いてきた子がいました。もちろん頭では「失敗してもいい、できないことは恥ずかしいことではない」ことも分かっています。けれども、やっぱり体もこわばり、汗が出てきて緊張してしまう。そんな気持ちを打ち明けてくれたこと、そしてその挑戦したい気持ち受け止められることは、大切にしたいことです。
また一方で「ちゃんと失敗することから逃げてしまう」こともあります。なんでもかんでもやってみて失敗はするものの、「えへへ。失敗しちゃった。また次やればいっかぁ」と、失敗を安易なものにはしたくない。ちゃんとできなかったことを受け止めて、素直に残念がり落ち込めることも、大切にしていきたいものです。
上手くやろうとしてもやれないとき、失敗と正直に向き合えないとき、少し疲れているときにこそ、必要なこと、それが思いやりです。
“人間にまちがいはつきものです。でも、まちがったらあやまって、ただしい道をえらびなおすことができるのも、人間ならではの力です。あやまちからまなび、未来を変えていきましょう。くるしいときこそ、たがいをおもいやりましょう。いつでも愛とおもいやりから出発して、どんな人にもそなわっている「人間らしさ」をたいせつにしましょう。”本書のあとがきより
この本は、先生から子どもたちへ「さいこうのぼくになるため」の励ましのメッセージがちりばめられています。ぜひ読み聞かせをして、クラスのエピソードを結び合わせながら、失敗することとは、思いやりとは、考え直して、自分たちなりの意味づけをしてみてください。教室で「人間」について哲学するのにもってこいの本です。
この絵本の最後に著者スーザン・ヴェルデより、思いやりを育みリラックス効果を高めるマインドフルネスが紹介されています。それは「愛とおもいやりの瞑想」よばれ、以下のステップで進みます。
① 大好きな人を目の前に思い浮かべ、鼻でしっかりと呼吸します。瞑想中に次の4つのフレーズを繰り返し唱えます。
・ あなたがすこやかでありますように
・ あなたがしあわせでありますように
・ あなたがくるしみから解放されますように
・ あなたが心やすらかでありますように
② どうしても仲良くできない人を思い浮かべて、上のフレーズを繰り返し唱えます。
③ この地球上に暮らしている見知らぬ人たちを思い浮かべ、上のフレーズを繰り返し唱えます。
④ 最後に、自分への愛で心を満たすため、下のフレーズを繰り返し唱えます。
・ すこやかでいよう
・ しあわせでいよう
・ くるしみから解放されよう
・ 心やすらかでいよう
失敗の不安や悲しみ、怒りや憎しみを沈め、思いやりの心の感じとる、このゆったりとした時間を絵本を通して体験してみませんか。
★
2020年6月21日(日)のPLC便りに紹介されています。
新刊案内『ぼくは にんげん』
https://projectbetterschool.blogspot.com/2020/06/blog-post_21.html
『まちがいなんてないよ』も併せてオススメです。
★★
吉田新一郎・岩瀬直樹著『シンプルな方法で学校は変わる』みくに出版の「ジャーナルのすばらしさ」P29〜P.35に紹介されています。
0 件のコメント:
コメントを投稿