時代とともに教師の役割は変わる。
教師の役割が、一方的に知識を伝授することが中心であった時代は、教師が教室の中で果たす役割は限られていた。生徒たちが学ぼうが、学んでいまいが、用意していた内容を朗々と語ることで事が足りたのだから。
今は、教師がどのように教えるかだけでなく、生徒たちがどのように学んでいるか(あるいはつまづいているか)が、大切にされるようになってきた。教師は、教室の中で、自分自身の実践や生徒の学びを、観察し、振り返りながら、必要に応じて、後戻りをしたり、修正を加えたりする。
教師の果たすべき役割の変化や多様さを考えてもらうために、外国語指導助手(日本の小中学校で英語を教える補助的役割をしている外国青年)の研修会で、教師(teacher)の同意語(synonym)を思いつく限り出してもらった事があった。
出てきた言葉を、大まかに分類すると次のようになった。実に多くの言葉があるの事に驚かされるが、同時に、教師にも多様な役割がある事が確認できる。
・教える人: instructor, lecturer, preacher, professor, trainer
・サポートする人、助言者:tutor, adviser, chaperon, coach, consultant, counselor, helper, mentor, facilitator
・モデルとなる人: example, expert, ideal, model, standard
・リードする人:advocate, captain, director, guru, inspiration, leader, master, pilot, pioneer, governor
・情報提供をする人: guide, informant
・管理する人: authority, conductor, controller, disciplinarian, enforcer, sergeant, counsel
・評価、判断する人:judge, lawyer, monitor, referee, solicitor
・友人、仲間:friend, partner
これらに加えて、外国語教育関係の本に次のような役割が記載されていたので紹介しておきたい(⭐︎)。 先のリストと重複する部分もあるが、これからの教師が担うべき役割について貴重なヒントを与えてくれるのではないだろうか。
◉証拠を集める人(Evidence Gatherer):コミュニケーション活動などをしている時に、生徒のパフォーマンスを観察して、何ができているか、できていないかの情報を
収集する役割
◉フィードバックを提供する人(Feedback Provider):集めた証拠に基づいた、フィードバックを提供する役割
◉プロンプター(Prompter):舞台などで俳優にセリフを教える役割のことをプロンプターというが、この場合は、今やっていることを継続するよう奨励したり、次に何をすれば良いかを提案する役割を指している。背中を教えてあげる役回りということだろうか。
◉編集者(Editor):作文や発表に対して、変更や改善を提案する役割。誤りの修正ではなく、生徒たちがより良く書け、話せるように提案をする事が主目的。
◉活動設定者(Task-setter):生徒が行う活動を設計したり、やり方を説明したりする役割。
教師がこのような役割を担う教室では、学習指導案の位置付けも変わるだろう。前掲書では、学習指導案は「奴隷的に従うための設計図ではなく、行動のための提案(as a 'proposal for action' rather than as a blueprint to be slavishly followed)」としている。
教師が自立して考え、決断していく。そのような教室の姿が想起される。日本の教室もそうなっていくのだろうか。
[文献]
⭐︎Jeremy Harmer (2015) The Practice of English Language Teaching, Pearson. pp.115-117(ジェレミー・ハーマー『英語教育の実践』ピアソン).
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