多くの学校がプール指導や出張、さらには研修に追われた夏期休業の前半戦の終わりもみせ、いよいよ多くの教員たちは夏休みになった頃でしょうか。初任者はまだ初任者研修が続くと聞きますが。
束の間のお盆休みを終えると、研修の後半戦がはじまります。
さて、あなたの職場の学校研修では、あなたはよりよく学べていますか? もしそうなら、どうしてでしょうか? もしそうでないのなら、なぜ学べないのでしょうか?
よく学べていると感じるのは、きっと研究主任の先生が、職員皆さんのために職場づくり、そして研究テーマの授業づくりへとバランスよく取り組めるように場作りをしてくれているのではないでしょうか。そのことをぜひ、フィードバックしてあげてください。
いかに研究主任の仕事は孤独な仕事か!そもそも、多くは誰にも歓迎されていないプラスアルファの仕事と受け取られがち。学校研究に「学びがある」と言えるのならば、主体的に参加しているあなたの力だけではなく、素晴らしい管理職や研究主任などの支えがあってのことでしょう。
一方、校内研修で「学びがない」と感じているのなら、どうしてそうなってしまったのでしょうか? 学校全体が一つにまとまって取り組んでいくはずの研修が、うまく機能していない。それぞれの学年がやっていることは見えてこなかったり、ベテランの教師から「チャンスだから」と勧められて?授業をやらされたこともあるのでは。理由はまだまだありそうですね。
人に学びが起こるには、いくつか原則があります★。人が学び始めるには、心理的な「安心感」があることは基本です。「こんな授業をしてしまったら、批判されるのでは」「こんな意見をいってしまったら、恥ずかしい」など、その不安のなかでは、のびのびと試行錯誤や失敗をしながら、教師が成長していくことができないばかりか、言われたこと、管理されたことを指示されたとおりにやっていくことが一番安全。そこでは、自分の身を守る術を学んでいくことになってしまいます。
学校研究を通して、職場内に安心の場をつくろうとしている研究主任の話を、最近、聴くことができました。
「まずは徹底的に、学校研究のハードルを下げることです。指導案もペラ1枚にして、気軽に全員、授業提案ができるようにする。そういった授業はみんなで見合うことができて、その後、気軽に話し合っています」
こういう学校では、何かのびのびと新しいことを学び始めてみようと思えるのではないでしょうか。心理的安全感がある職場ではそれぞれのパフォーマンスが発揮されます★★。このような職場では、ベテラン教師と若い教師が共に学び合えるよい環境が容易に想像できます。
しかし、多くの学校はここで失敗しています。それぞれがお互いのことを知り合ったり、それぞれの価値観をもっと知ろうともしていない。そのような職場集団で、いきなり「学力向上とは」「教科の専門性を深めるには」と研究に入るから、学びが全く発動せずに、「造詣の深い先生」の講義型の知識伝達で終わってしまうのです。その教科に長けている人だけは、イキイキしているかもしれませんが、大抵はその指導者といったところでしょうか。多くの人はついていけずに、こなすためだけの学校研究となってしまいます。
一人ひとりが学び、成長していくためには、メンバーの内に安心感といったチーム作りの要素は欠かせません。この夏の学校研修は、お互いの夏休みのことや教師として大切にしていることから、お互いを知り合うコミュニケーションの量を増やすことから初められるといいですね。
一方、職場内のコミュニケーションが円滑にいくようになってこれたら、そこに止まる必要はありません。職場内の関係性ばかり追ってしまうと、同調圧力が強くなり、それはそれでお互い自由闊達な意見交換ができなくなってしまう恐れが生まれます。仲良しチームになれたとしても、なかなかチームのパフォーマンスが上がらないということはたくさんあるからです。そこで、職場内のチーム作りに平行して、学校研究で追求する「目標を明確に」していくことが必要です。
このチームの安心感とパフォーマンスを発揮することは対立することもあり、バランスよく発揮していく必要があります★★★。学校全体がなんのために学校研究を行っているのか、明確な目標をそれぞれの案で合意形成をつくりあげていく。「どんな子どもに育ってほしいのか?」「本当に身につけてほしい力とはなんなのか?」こういったことこそ、ゆとりのある夏期休業中の校内研修でじっくりと話し合っていきたいものです。
学校研究において、明確な目標があることによって、継続したフォローアップが可能となります。何に向かっていて、どこまでができていて、何ができていないかを教員同士が支え続けるのは、明確な目標がなければできません。これはまさに形成的評価の学習モデルであり、校内研究を通して、教師自身がその職場内に支えてもらえる体験が可能となります。それによって、実際の授業においても、自分が職場の先生たちに教えてもらったように、子どもたちを支援しながら教え続けるといった学習を維持するができるのではないでしょうか。大切なことは、支援し続けること、関わり続けること、研修後のフォローアップですから。
いつまでたっても「研究授業はブロックの代表がしっかり本番の授業を一本やる」は終わりにしませんか。打ち上げ花火のような研究授業には、教師一人ひとりにとってあまり意味を見いだせません。毎日の授業こそが本番です。そのためにも、教師が教師として育っていけるような意味のあるプロセスを体験できる学校研究が望まれます。学校研究をチームづくりで終わることなく、より教師の専門性も高めるためにも、明確な学校研究の目標をもって、バランスよく学校研究をつくりあげていく。そんな夏の研修にしてみませんか?★★★★
★
PLCの評価基準表 ・その3
https://projectbetterschool.blogspot.com/2012/03/plc_18.html
★★
「効果的なチームとは何か」を知る
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/
★★★
PM理論 リーダーシップ行動論の1つ。社会心理学者、三隅二不二が1966年に提唱。リーダーシップを「目標達成能力」のパフォーマンスと「集団維持能力」のメインテナンスの2つの能力要素で構成されるとし、そのどちらも兼ね備えているリーダーシップが望ましいとした。
★★★★
この夏期休業中、様々な研修に参加することがあると思います。居心地がいいもの、一方的な知識の伝達で終わってしまうもの。それらを一度ふりかえってみて、チームづくりの集団維持能力の面と明確な目標の目標達成の二つの面で研修を捉え直してみると、自分が次にやるべきことが見えてくるのではないでしょうか。その研修の残念さも!?
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