2012年5月6日日曜日

教育課程を考える

全日本中学校長会という組織があります。ふつう、略称で「全日中」と言います。
 これは全国の中学校の校長で組織しているものです。そこで毎年発行している報告書があります。ここ数年は「新学習指導要領の全面実施に向けた取組に関する調査」が出されています。23年度の調査研究報告書のなかから、いくつかのデータを紹介してみます。
 まず、「校内研修の時間確保について」という設問があります。
 回答の選択肢は次のとおりです。

 ア 特に考えていない
 イ 一日の時程を工夫して確保する
 ウ 土曜授業により時数を確保する
 エ 長期休業日の短縮により確保する
 オ 特別活動や職員会議の時間を削る
 カ 校内研修を縮減する
 キ 検討中である
 ク その他

回答結果は上位3つが「イ」43.9%、「キ」23.9%、「ア」11.4%です。
 この調査の期間は23106日から114日でした。また、調査対象は全国すべての都道府県から5~6校を抽出して行われ、回答校数は280校です。

 ここで、ちょっと驚くのは「ア」の「特に考えていない」が11.4%もあることです。
 翌年の4月から授業時間数が増えるのはわかっているのですから、もう10月あたりから「校内研修の時間」をどう生み出したらいいのかを管理職なら考え始めるはずです。  
これまで通りにはいかないことは明白ですから「考えていない」では済まされない問題です。たぶん年が明けてから周りの学校の様子を聞いてあわてて対策を考え始めるか、あるいはそのまま「特に何の対策も講じること」なく新年度を迎えたのではないでしょうか。そんな学校ではどんな「校内研修」が行われているのか、「推して知るべし」かも知れません。

 次に人材育成に関して、次のような設問があります。
「教員の人材育成について、教育委員会主催の悉皆研修や任意参加の研修等に教員が参加することで十分に対応できていますか」
 回答の選択肢は次の通りです。

 ア 十分に対応できている
 イ おおむね対応できている
 ウ 十分に対応できていない
 
 回答の第一位は「イ おおむね対応できている」が50.4%、第二位が「ウ 十分に対応できていない」33.9%でした。
全体の半数の学校が「おおむね対応できている」と回答していることは、ちょっと楽観視しすぎているという感じです。以前にもこの問題にはふれましたが、学校の外での研修はほとんど役に立っていません。これは吉田さんもその著書で指摘されているように「今の自分の仕事につながることがほとんどない」からです。また、教委主催の研修で学校代表を一人ずつ集めて行う研修も、所詮一人では何も変えられないから無駄に終わってしまいます。
だからこそ、校内での研修が資質向上につながる大切な機会なのです。

33.9%の学校は「十分に対応できていない」と回答しているわけで、その分、校内での研修で何とかしようと考えているとも受け取れます。そのためには、次年度の教育課程を組み始めるころから、時間をどうやって生み出そうかを考えなくてはならないのです。
したがって、「特に考えていない」では決して済まされないということがこのデータからもわかることになります。
校長は次年度のカリキュラムをどうするかを、決して教務主任などの担当者任せにしてはならないのです。でも、古いタイプの校長は案外このあたりがいい加減なのだと思います。学校改革はつまるところ「校長養成の問題」であると言ったら言い過ぎでしょうか。

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