2024年12月29日日曜日

私たち(育てる/見守る側)の意識改革

私は校内で教務担当という仕事を任されています。校内には一人。ほとんどの学校がそうかと思います。様々な学校の教務担当者は、普段の仕事を管理職と自分の判断で悩みながらこなしているというのが実情です。定期的に同じ地区の学校の教務担当者が集まり、各学校の悩みや情報を共有しています。

今年度、その担当者会で「教務担当として困っていることはなんですか?」というアンケート調査が行われました。その結果、「人材不足による補強の手配」や「時間割・教科担任編成」が上位に入りました。人材不足は深刻で、補強の手配はなかなか難しく、教務担当が入ることが多いです。時間割編成は教科担任制が導入されてからというもの、さらに難しさを増しています。学校ごとに実態が異なり、教育委員会が示した例通りにはもちろんうまくいかず、毎年度末から頭を悩ませることの一つです。

そのような項目が並ぶ中、私が目を引いたのは、その次に多く入った「若手教員の育成」という項目です。担当者会の中でもよく初任者の校内指導についての話題が挙がります。

「初任者教諭用のテキストをどのように話せば内容を伝えることができるか。」

「校内研修は基本的に教務担当者が全て行わなければならないのか。」

「日々の業務に追われ、指導を行っている時間がとれない。」

 私はそんな話を聞く度、もったいないなぁという思いに駆られます。確かに若手教員の育成や初任者教諭の指導は教務担当者の役割の一つです。でも、本当に業務として役割として考えて行うことなのでしょうか…。

 私はどうしても人員が足りなく、補強に入らなければならない日以外は、毎日全クラスの様子を見回るようにしています。各クラスの子どもの実態や先生方の様子を見回ることで、何か起きた際の対応に組織的に対応できるようにすることや先生方の困り感に寄り添って共に解決策を考え、決定していく必要が大切だと思うからです。その見回りの中で感じる初任者や若手の先生方の試行錯誤している姿や子どもたちと生き生きと真剣に向き合っている姿を見ると「何か力になりたい」と自然と思います。折角、初任者指導としての時間が確保されているのだから、その時間を使わない手はない! 私はそう思い、以下のポイントに気をつけながら計画を立てています。

① 初任者の先生がどんな先生になりたいのかを理解する。

初任者と言え、一人の先生です。どんな先生になりたいのか理想や目標があるはずです。自分と同じ訳ではない。なのに、自分の教育観やものさしで関わってしまっても本当の意味でその先生のためにはなりません。最初の研修の時間にまずはその先生のことを知るという時間を設けます。その先生の教育観や目指す教師像に合わせて、課題は何なのか、どんな手立てを打っていったらよいかを共に考えるようにします。決めるのは初任者自身ですが、経験が多い分、手立ての例や考える際の視点については提供したり、問いの形で投げかけて気が付かせたりするようにしています。そんなやりとりの中で、初任者教諭と一緒に独自に立てている年間計画も自然とたち、それに対しての振り返りとフィードバックを繰り返していきながら、成長点やよかった点についてひたすらに日々見取り、認めていく。そんな関係づくりに日々取り組んでいます。

② なるべく多くの先生と初任者を関わらせるようにする。

 初任者の担当は教務である私たちであることが主流です。しかし、その担当者だけが初任者と関わりを築いていくだけでは、広い視野や引き出しの数を増やせません。学校組織として初任者を育てるという環境づくりが非常に重要になってくると思います。その道のスペシャリストやそれぞれの先生方の得意を知り、それぞれの先生方から学んでもらえるようにする。その人員配置の計画やそのためのコミュニケーションが実は大切なのです。全てを教務担当がやろうとする時点で、初任者にとっては貴重な時間を送れないことになる。年度当初は様々な事務仕事でてんやわんやではありますが、最初の関係づくりも兼ねて、多くの先生方とコミュニケーションを図りながら、組織的な校内指導計画を立てて人員配置を行っていくことがその後の成長に大きく関わってくると私は思います。

③ メンターメンティーチームの醸成

 私はこれまで3年間、この仕事を行ってきました。毎回3学期に入ってから初任者の先生に「今年1年で大変だったことや困ったことは来年入る新しい先生方に還元してほしい」ということを伝えています。初任者の1年を過ごして2年目を迎えた若手の先生方や少しずつ「先生の仕事」が分かってきた3年目~5年目の若手の先生方を中心にメンターチームを組むことができるようにします。そのチームを中心に普段、なかなか相談できない課題や悩みを共有できる環境づくりをすることが非常に大切です。そういった場があるかないかだけでも働きやすさは変わってきます。その一員に来年はなるということを意識しながら残りの3学期を過ごしてもらうことで、

「来年の初任者の先生にはこれを話そう! こんなことを一緒に考えよう!」

と言った自主的な研修の計画や進行を行うことが可能になります。実際、本校では学期に1回、メンターチームが主催の研修が行われ、時に真剣に、時に笑いながらとてもよい雰囲気の中、研修を行っています。教務担当である私が行うのは、素敵な研修内の一人ひとりの役割を認め、それぞれとフィードバックを行うことだけ。計画・実践(司会・進行)・振り返り・次回の検討等は全てメンターチームが主導で行います。この仕組みは初任者のためだけにとどまらず、若手教員の先生方にとっても自然と学校組織の一翼を担っているという自覚が芽生えるよいきっかけとなっています。

 初任者の時代に不安だった先生が、今、生き生きと子どもたちと向き合ってある程度の自信をもって日々の教育活動を行っている。そんな成長を見守るのは、まさに学級担任となんら変わりないなと今、私は思います。であるとするならば、「初任者がすぐにやめてしまう」「なかなか若手が育たない」といった最近よく聞かれる悩み解消の一手は私たち見守る側の意識改革、手立ての見直しにあるのではないでしょうか?

 「教室と職員室は入れ子構造である」と思う私はこれからも先生方との向き合い方、共によりよい教育を目指すための学び方を試行錯誤していくことで、輝く子どもたちの育成につながると信じて今日も実践を積み重ねます。

以上は、8月18日、9月21日、10月6日、11月17日、12月15日と続いている、埼玉で教務主任/初任者校内指導教諭をしている田所昂先生の第6弾です。

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