2024年10月6日日曜日

私は何のためにこの職についたのか

埼玉県の公立小学校で教務主任/初任者校内指導教諭をしている田所昂先生の第3弾です。

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 「私は何のためにこの職についたのか。」

 最近、このことについてよく考えます。あこがれていたこの職についたものの、担任として子どもたちと関わったのはわずか9年。もちろん、その間に様々な経験をした上で、ステキな子どもたちにも恵まれてきました。

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「私は何のためにこの職についたのか。」

 初めてこのことを考えたのはこの職について3年目のときでした。子どもたちとの関係で、はじめて大きな躓きを経験しました。もともと打たれ弱いガラスのハートの私は、どうにかなってしまいそうで…。でも、その時周りにいた同じ学年の先生や生徒指導主任、管理職に助けられました。

「どうしてこの職についたの?」「これからどうしていきたいの?」「一緒にそうなれるようにがんばろう。」

ある時の何気ない会話から自分自身を見直し、どうにかその状況から立ち直ることができたと思います。子どもたちと全力で向き合うためには職場の環境や先生たちの関係性が大切なのだと思いました。

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「私は何のためにこの職についたのか。」

 ある年、私は初めて研究主任という立場を任されました。教育委員会からの委嘱も受けている研究を2年目から引き継ぐ形でなりました。そこから3年間学校の研究の中心に身をおくこととなり、子どもたちの様々な変容を感じることができました。私としてはたくさんの学びになったのです。

 でも、この3年の間に先生方の様々な意見や考えの違い、子どもたちへの向き合い方の違いに悩まされました。「私の普通はみんなの普通ではない」ということが当時の私にはものすごく高い壁のように感じ、子どもと向き合うことと同じように先生方とも向き合っていくことの重要さと大変さに気が付きました。もう一度、この職についた意味と自分が子どもたちのために何ができるのか。そのことと向き合うためにもう一度学ばなければと大学院へと足を向けました。

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「私は何のためにこの職についたのか。」

 私は大学院にもともと興味のあった小学校の英語教育がもつ可能性について追究することを目的に行きました。実際、大学院に行かなければ得ることのできない経験や学びを得ることができ、行く前よりも自信をもって小学校英語教育において大切なことや、その可能性について考えをもつことができました。

しかし、それ以上に私は多くのことを大学院で学びます。1つは様々な教育に携わっているそしてこれから携わろうとしている人々と多くの意見交換をする機会を得たということです。自分の見方だけでは考え付かないことも様々な人と協働するとよりいいものが生み出せる経験をたくさん積むことができました。

他には学校を組織として見て考える経験をたくさん積みました。実際に当時の教頭先生にシャドーイングをさせてもらい、1日はりつきながら管理職の仕事とはどのようなものかを考えました。また、様々な都道府県の管理職を目指す先生方と学校を組織としてまとめていくために大切なこととは何かを考え、若手育成のための研修のあり方についても考えました。

加えて、新たな教育の形にも触れました。IB教育の実態や実際の指導法を学び、資格をとりました。そこから現場に戻った際にすぐにでも活用できることは何か。近い将来、変えていける学びの形はどんなものかを考えることもできました。

「この多くの学びを早く現場に戻って活かしたい。」

ただただその思いで修了証を受け取り、現場へと戻りました。

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「私は何のためにこの職についたのか。」

 

大学院から戻ると今のポジションに収まります。担任外。先生方のことが一望できる席。初めてその席についたとき、正直、こんなはずじゃ…と思いました(笑)初めてのその場所は、本当に転職したかのよう。仕事の内容がガラリと変わり、子どもと関わる以上に先生方との関わりが大きく増えました。私と同じように初めてこの職につく初任者の先生がその年もいて、日々悪戦苦闘する姿は、私と同じ。

 「どうしてこの職についたの?」はじめて会話したその日から、ぜひその先生にこの職の魅力をもっともっと感じてもらいたい。そう思いました。そのためには多くの先生たちと関わりをもって、自分が学びたい人や学びたいことを見つける必要があると考えました。それまで初任者研修の校内研修は基本的に校内指導教員が計画を組み、示範授業以外はマンツーマンでテキストをもとに講義形式で行っていました。それを私は、

 「○○先生のこの実践をもとにお話をしていただきたい。」

 「先生にお話いただければ初任者は本当に勉強になる。」

といったことをこれまでの経験を活かして、それぞれの先生一人ひとりにお願いしてまわりました。そして実際に研修を行っていただいたあとにも

 「お忙しい中、ありがとうございました!」

「初任者があのお話が勉強になったと言っていました。他にはどんな実践があるんですか?」

とお礼も兼ねたコミュニケーションを図るようにしたのです。

本当に他愛もない会話ですがこのおかげで、私が担当するはずだった講義のものが半分以上、ちがった先生のものとなり、ただの講義がリアルな現場の話や実践例、そしてともに自分の学級だったらどうするかと検討等に形が変わっていきました。本音で相談したり、考えを共有したりすることで、初任者は様々な先生方の考えに触れることができ、研修以外の時間でも他の先生方との会話が増えている様子が伝わってきました。

 初任者だけでなく、私自身にも、お願いや事後の会話をしにいったことで、他の場面でその先生方から

「先生、聞いてくださいよ~。」「実は相談があって…」と多くの先生方が話しかけてくれるようになりました。

学年に所属していない孤職はなかなかコミュニケーションを取る機会がなく、関係づくりが難しいなと感じていました。しかし、一つのやり方を変えただけで、少しずつ自分が、「どの学年にも所属している」という感覚に変わってきたのです。

 それから私は広い目でそして、耳をダンボにして先生方の様子や会話をキャッチするようにしました。機会を逃さず、先生方に寄り添い、そしてコミュニケーションを図る。まずは自分が中心・仲介となって、職員室の雰囲気を良くして、様々な先生方をつなぎ、考え方の理解を図れる場所にしたいと思うようになったのです。

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「私は何のためにこの職についたのか。」

 先日も隣に座る教頭先生とこの話になりました。子どもの笑顔がみたい。子どもと関わりたい。子どもの人生の中の一部分に関わることができるから。今も昔もそういった理由に変化はありません。

 でも、今は子どもの笑顔の先には必ず先生の笑顔がある。先生の笑顔の先には職員室の笑顔がある。そう考えるようになっています。私は少しでもその様々な笑顔を作り出すためにできることをコツコツと少しずつ実践したい。今日もそんな答えを自分自身に述べながら、先生方の様子をじっくりと見つめています。

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