立命館守山中学・高等学校(国語科)の犬飼龍馬先生が、『一人一台で授業をパワーアップ! 教育の質を飛躍的に向上させるICT活用実践ガイド』(ダイアナ・ニービー&ジェン・ロバーツ著、学文社)の紹介文を書いてくれました。
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社会は凄まじいスピードで変化していきます。現代では人工知能(AI)が小説を書き、車が高速道路を自動で運転し、ビッグデータがマーケティングを支配しています。これらはわずかこの数年間の変化だというのに、私たちはもう数年前の生活に戻ることができません。
10年前はどんな社会だったのでしょう? 30年前は? 例えば30年前、私たちはお気に入りの音楽をカセットテープにダビングし、友達にプレゼントをしていましたね。隔世の感があります。これが100年前ともなれば、社会は今とは全く異なるものだったに違いありません。
社会は大きく変わりました。しかし、学校の授業だけが、100年前と同じやり方をしています。数十人の生徒を一つの教室に押し込み、全員に前を向かせ、教師が黒板に書いた文字を生徒がノートに写す。これでいいのでしょうか?
Society5.0の社会において、子どもたちは情報を自ら選び、活用していくことが求められます。教師が全生徒に同じ情報を与えているだけでは、子どもたちの情報選択・活用の力を育てることはできません。ICTはその力を育てるのに有効なツールです。子どもたちがそれぞれに選択した情報を活用して、建設的に議論し、協働をする。そのトレーニングは学校でしかできないのです。教育にICTを導入することは今や急務といえそうです。
本書をおすすめするポイント
ICTの利活用に関し、どの段階にある先生方にも充実した学びがあることが、本書をおすすめする大きなポイントです。
まだICT導入前の学校に務めておられる先生は、本書によって、学校にICTを導入することにまつわる様々な心配を和らげることができるでしょう。
ICT導入したての先生は、学校にICTを使った教育を根付かせるための様々な工夫を学ぶことができます。
ICTの利活用を一通り成し得た先生は、その利活用の方法を更新し、さらにパワーアップした教育活動を始めるきっかけを得ることができるでしょう。
本書の著者であるニービーとロバーツは、この新しい教育方法に期待し、挑戦し、悩み、乗り越えていきます。著者たちの(そしてもちろん子どもたちの)ICTにまつわる様々な出来事は、彼らの息遣いまで聞える鮮明さで示されます。この本はICTの理想だけではなく、現実も示されます。そして彼らは、その解決策も懸命に語ってくれるのです。
私の印象に最も残っているのは、ニービーとダイアン・メインのエピソードです。ニ―ビーのメンターであるダイアン・メインは、ニ―ビーのクラスが初めて一人一台端末に移行したとき、「不快な状況に慣れることが必要だ」と言いました。メインは、新しく取り組もうとしている方法が、うまくいくかどうかわからないことを認めているのです。ニービーはそんなメインを信頼します。ニ―ビーは、メインが不確実性を心地よく感じ、リスクを冒して教える方法を変え、成功した姿を目にします。ニービーはそこから、一人一台端末の教え方と学び方に伴う曖昧さを受け入れる覚悟をかためたのです(57ページから)。
ICT導入以前の先生も、もうベテランの域に達した先生も、本書を手に取り、ニービーとロバーツ、そして生徒たちの勇気と挑戦に触れ、ICT利活用の具体的なスキルを更新するとともに、明日の教育活動に挑戦する勇気を掴みましょう。
●本書の章立て
第1章 一人一台の端末の準備ができた。さて、どうする?
第2章 コミュニケーションとワークフロー
第3章 エンゲージメント
第4章 コラボレーション(協働)
第5章 オーディエンス(発表の対象)
第6章 一人ひとりをいかす
第7章 フィードバックと評価
第8章 創造性とイノベーション
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