「エージェンシー」という言葉は最近よく耳にします。子どもたちは興味や情熱、さらにはもっと知りたいという好奇心をもって学校にやってきます。私にとって、生徒がエージェンシーをもつ教室とは、「生徒が自らの学びにおいて選択し、決定し、行動する力をもつ教室」です。しかし、私たちが提供する学習機会を通して生徒のエージェンシーを育むとは、具体的にどういうことなのでしょうか?
以下に、効果の高い五つのアイディアと、それらに取り組む際に参考になる本を紹介します。
1つながりと帰属意識の構築
生徒たちがエージェンシーをもっている教室の基盤には、教師と生徒の関係があります。これにより、生徒が自立的に学ぶための実践を発展させる土台が提供されます。 ~『「居場所」のある学級・学校づくり』『好奇心のパワー』
子どもたちが話すときは深く耳を傾け、学校外での彼らの生活について学びましょう。問題が大きいか小さいかに関わらず、発生した際には話し合う時間をもつ準備をしましょう。「わからない」と、子どもたちが自信をもって言えるようにしましょう。 ~「子どものための哲学」や「哲学対話」関連の本、『最高の授業』『生徒指導をハックする』
2意図的に生徒のスキルを育む
生徒がメタ認知的な学習者になるよう教えましょう。さまざまな学び方を試す機会を与えるのです。たとえば、ある生徒は創造的な方法で学ぶことを好むかもしれませんが、別の生徒はもっと支援/足場が必要かもしれません。彼らの好みは、取り組む内容や課題によって異なることがあります。生徒は異なるアプローチを探る必要があり、自分の学びに何を適用するかを決定する際に備えることができます。学びの計画を立てたり、振り返ったりする方法を直接教え、モデルを示しましょう(教師が自分では使わないような、市販の振り返りは選択肢に入らないはずです)。その後、振り返るための機会を頻繁に提供し、生徒が自分にとって最適な学びを実現する要素を特定できるようにします。 ~『「考える力」はこうしてつける』『「学びの責任」は誰にあるのか』『教育のプロがすすめる選択する学び』『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』『一斉授業をハックする』
メタ認知的な実践を埋め込み、生徒のエージェンシーを育むために、自分が得意とする教科で始めましょう。(その際、一つの概念やスキルに対して異なるいくつかの学習活動を設計してみるのは出発点かもしれません。たとえば、生徒はペア作業、個別の探究、小グループでの協同/協働活動など、同じ学習目標を達成することができます。 ~たとえば国語なら、https://x.gd/Y9zuJ
一つの教科で練習を積んだら、日常全体や教科を統合する形で広げていきましょう。~上の国語の応用として、他教科では『だれもが「科学者」になれる!』『社会科ワークショップ』(いま『数学者の時間』を執筆中!)、教科横断のアプローチでは『あなたの授業が子どもと世界を変える』『プロジェクト学習とは』『PBL~学びの可能性をひらく従業づくり』『子どもの誇りに灯をともす』
3壁を使って思考と学びを可視化する
教室や廊下の壁のスペースを使って生徒の思考や学びを展示することで、生徒のエージェンシーを重視した実践が強化されます。生徒は自分たちの成果を視覚的に見ることができ、教室全体が学びに満ちた活気ある環境になります。その際は、生徒を自分たちの学びの展示に参加させ、あらゆる場所にその成果を示すよう促しましょう。
これは、成果物を生徒がつくり出す学びとも言え、従来のテストが最終目的であった学び方を卒業して、終わりのないサイクル型の学びへの移行を意味します。というのは、暫定的には壁に貼り出したものが成果物ではあるのですが、それにクラスメイトや校内・校外の他の人たちからのフィードバック(付箋)がつくと、探究が新たなサイクルを回し始めるきっかけになるからです。なお、今の時代は一人一台端末を持っているので、壁スペースを使った展示は、オンラインで校外の人も対象にしたサイトなどをつくる活動へと発展させることは容易です。 ~『一人一台で授業をパワーアップ!』
4生徒を専門家として位置づける
生徒は他の生徒と共有できる専門知識をもっています。ディジタル・リテラシーのスキルなどは、生徒が専門家となることができる分野の一例です。生徒同士で授業やワークショップを開催し、スキルを共有し合うことで、互いにサポートし合いましょう。生徒たちは自分が講師役を務めることに喜びを感じ、教師であるあなたも参加したくなるかもしれません。
また、学校の広いコミュニティー(関係者)を活用して特定の内容についての教えてもらう機会をつくることも大切です。保護者や地域のエキスパートや上級生(クラスメイトでさえ!)は素晴らしい専門家となり、あなたとは異なる視点を学びにもたらしてくれます。生徒たちは、教師(や教科書)以外の専門家から学ぶことで成長し、学びを深めるでしょう。これは、教科の学びとSELの統合にもなります。 ~『国語の未来は「本づくり」』(やhttps://x.gd/Y9zuJのほとんど!)『学びは、すべてSEL』
5イノベーションのモデルを示し、生徒が創造的になれるように促す
学習者が遊び、探究し、問題解決する機会をもつことで、エージェンシーが育まれます。ユニットの終わりには、生徒が自分の理解を固め、応用し、自分のアイディアを創造するための時間を提供しましょう。 ~『たった一つを変えるだけ』『あなたの授業が子どもと世界を変える』『プロジェクト学習とは』『「おさるのジョージ」を教室で実現』『退屈な授業をぶっ飛ばせ!』『教育のプロがすすめるイノベーション』、そしてhttps://x.gd/v1ufG
早速のコメントをいただきました。
返信削除哲学対話についてです。「効果的な方法ではありますが、進行役(ファシリテーター)の存在をできるだけ薄めないと、エイジェンシーは育つのかな、と疑問に思います」というものでした。まったくその通りだと思います。生徒たちが自分たちから進んでやれるようにしないと、いけないと思います。いつまでも、進行役である教師が音頭を取らないと始まらないようでは、単なる「活動」でしかありませんから。