2023年8月20日日曜日

『SELを成功に導くための五つの要素――先生と生徒のためのアクティビティー集』

 標記(ローラ・ウィーヴァー&マーク・ワイルディング著)の訳者の高見佐知さん(未来教育研究所)が紹介文を書いてくれましたので、掲載します。


SELと教科学習に統合的に取り組む必要性

日本における10代後半から39才までの死因の第一位は自殺で、先進国において特異な状況にあることが指摘されています★。また、日本の児童生徒については、幸福度や不安に課題があることが、2018年のOECD教育政策レビューで報告されました。

そのような中、「心を扱う」こと、また心の特効薬である「楽しさ」「喜び」「ワクワク」に、日常的に目を向けることが求められ、これまで以上に、非認知能力やSELSocial and Emotional Learning=社会性と感情の学習)の重要性が注目されています。SELは、もはや学力を下支えする必須条件というだけではなく、SELに取り組むことそのものが、子どもたちの今の幸せと将来の幸せに直結していることがわかってきました。子どもたちが社会に出る前に、感情を受けとめ、絶望を乗り越え、さまざまな人とつながるスキル、助けが必要なときに適切に救いを求める手立て等を、経験を通して習得する必要があります。そしてその機会を、学校教育で豊かに提供しなければなりません。

 

本書をお薦めするポイント

本書は、クラスを安心して学びあえる「学びのコミュニティー」として創りあげ、SELSocial and Emotional Learning=社会性と感情の学習)と教科の学習を統合して取り組む方法について、エンゲージ・ティーチングとして体系化され成果が証明されたアプローチを紹介しています。このアプローチには、即効性と持続性があり、豊富なエビデンスが示されています。SELは発達段階をふまえ、クラスの信頼関係の状況を見ながら見通しを立てて取り組むことが重要ですが、その具体的な方法を「SELを成功に導く5つの要素」をふまえて体系的に知ることができます。

また、本書のもう一つの画期的な特徴は、紹介されているアクティビティーの多さですが、特に、「多様な生徒のニーズに対応するために、まず教師自身が自分を深く振り返り心穏やかに健やかに日々教えることと向き合うことが必要かつ重要」として、数多くの「教師用」のアクティビティーが具体的に掲載されていることが挙げられます。SEL for Educators、または教師のためのマインドフルネスともいえるそれらの内容は、まだ日本には紹介されていない情報で大変貴重であり、これからの教育界のみならず、大人の働き方と人生の充実全般にも、大きな意識改革を起こしてくれます。

 

本書を読んでいただきたい方

本書は、教師や教職志望の学生の方には必読書としていただきたい内容ですが、教育関係者だけではなく、子どもたちの幸せ、大人の幸せ、日本に暮らすすべての人々の幸せの向上を願う、保護者、地域の方、教育政策関係者の方など、「信頼できるコミュニティーを作りたい」「人を育て、自らも成長したい」「周りの人を幸せにしたい」という想いをもつすべての方々の参考になる内容です。

「ウェルビーイング」が世界的にも注目されるようになってきました。本書は、こころ、からだ、社会とのつながり、のすべてが良好な状態である「ウェルビーイング」な状態を作り出し、相互尊重と信頼に満ちた安全安心なコミュニティーを作るための具体的な方法を提供しています。

SELについては、SELに興味をもち始めた方から、先進的な取り組みを進めておられる方まで、幅広いニーズに応えられます。SELとは何か、SELの何をいつどのような目的で実践すればよいのか、児童生徒の自己開示をどのように扱えばよいのか、SELでめざすべき全体像はどのようになっているのか等が、発達段階に応じてわかりやすく紹介されています。心豊かに関係づくりに取り組むこれだけの分量の内容を日々組み込んで実践すれば、教師も生徒も、人間関係を含めて毎日の暮らしがずっと充実したものになるはずです。取組例の多くは日本の教室でもすぐに試してみたくなる内容で、推奨される対象学年が明記されていることも取り組みやすい点です。

教職離れや教員不足が問題となっていますが、「どのようにすればよいのか」が具体的に分かれば、教職は、子どもたちの成長に日々寄り添える喜びあふれた素晴らしい仕事です。子どもたちの今の幸せのみならず、将来幸せな人生を送れるかどうかも教師の力にかかっています。子どもや保護者の不安や課題を日々受け止める教師という仕事は、大変な感情労働です。ぜひご自身の心にも優しく向き合い、おおらかに大きな見通しをもって相互尊重と信頼に満ちた関係づくりに取り組まれますよう、ぜひ本書を参考にしていただけたら幸いです。

 

●本書の章立て

1 Engaged Teaching エンゲージ・ティーチング:心から情熱と喜びをもって教えること

2 Cultivating an Open Heart おおらかで広い心を育む

3 Engaging the Self-Observer 自己を見つめる

4 Being Present 「今、ここ」に集中する

5 Establishing Respectful Boundaries お互いを尊重し合うための一線を設ける

6 Developing Emotional Capacity 感情の器を大きくする

7 The Learning Journey: Putting It All Together in the Classroom 学びの旅:教室ですべてを統合する

8 The Journey Is the Destination 旅そのものがめざす場所である

 

★『人口動態統計年報』 第8表 死因順位1)(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合2)、厚生労働省、2020

 

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