スポーツジムに通い始めて10年近くになります。やっているのは、FightDo(ファイドー)という格闘技系のエクササイズのみです。音楽に合わせて、パンチ、キックを繰り出す。それだけです。運動の強度やリズムが、合ったのでしょうか、すぐに脱落するだろうと思っていましたが、予想を超えて続いています。人間ドックの結果も、毎年改善を続けていて、今では要注意マークがほぼなくなりました。
自分の健康面だけでなく、当初から感じていたのは、インストラクターのプロフェッショナリズムでした。もちろん、会員数の維持のために、営業的な面が見えないわけではないですが、以前から、その姿勢には大いに学ぶことがありました。
例えば、単純なことなのですが、レッスン終了後に、必ず出口に待機していて、参加者一人ひとりに声をかけてくれます。彼ら、彼女らにとっては、当然のことなのでしょうが、我々は教室で、そのような姿勢をもっていただろうかと、自問することになりました。マリリー・スプレンガーさんの『感情と社会性を育む学び(SEL) ー子どもの、今と将来が変わる』には、教師と生徒の関係を築くために「教室の入口で生徒に挨拶をする」や「朝の挨拶と帰りの挨拶」(p.16-19)をしようというアイデアが紹介されています。★1
ジムの方針として、基本的に全員が実行しようという約束事はあるようですが、レッスンの質そのものは、インストラクターによって様々です。経験あるインストラクターと新人インストラクターの比較も、私にとっては、興味深い学びの対象でした。
昨日、6年前に県外に転勤していたインストラクターが、ジムのマネージャーになって帰ってきました。昨夜、久しぶりの登場ということで、顔見せで、若手インストラクターのレッスンの一部を担当したのです。
プロのインストラクターの圧巻の指導を実感できました。どこが若手インストラクターと違っていたのでしょうか。
1 負荷をかけるタイミングが絶妙
「ここはちょっとしんどいぞ!」と思い始めると、そのタイミングで、ほんの少し負荷を上げる働きかけをするのです。「さあ、ここで手を後1センチ伸ばして!」といったアドバイスがくるのです。そこが絶妙なので、心拍数も維持され、さらには、少し上がり、汗も気持ちよくかける。一方で、新米インストラクターは、ただただ決まった動きをくり返すだけで精一杯という感じでした。
よく参加者を観察しているし、見極める力(評価)が抜群なんだと思いました。
2 説明が簡潔
若い新人インストラクターの順番になりました。彼は長々と説明していると、「全部説明するの!さあ、いきましょう」と静止して、曲を流し始めてしまいました。ちょっと強引な感じでしたが、参加者のことを思って、我慢できなかったのではないかと思います。実際、説明を聞いていた我々は、心拍数が落ち、汗もひき始めていました。参加者が、そう感じ始めたタイミングでの声がけだったと思います。
自分の動きに自信のない人は、やたら長々と説明します。プロのインストラクターは、モデルを示しながら、ポイントをずばり一言で言える、そのような傾向があると思いました。
3 やっていることの意味を説明し、理解させている
後半、参加者も汗だく、大いに盛り上がっているタイミングで、「わたしは、どんどんあおってますけど、故障がある人や自信のない方は、自分のペース良いのですよ。あおって、みなさんを乗せるのが私の仕事なのですから」と言いました。タイミングよく、全員が気合が入るように「あおってくる」のです。乗せるのがうまいとでもいうのでしょうか。
ただ、単に「あおっている」ではなく、そうすることで、多くの参加者が、集中し、夢中になれる。最大のパフォーマンスを発揮できる。そのために、「あおっている」のだと。参加者の「気持ちが乗るかどうか」は大きな要素なのですから。新人インストラクターは、大きな声を出したり、盛り上げようと努めてはいますけど、参加者の心に響くメッセージはなかなか出せないようです。
4 みんなが好きなことを知っている
参加者が、とても盛り上がる曲、盛り上がる動き(快適な突きと蹴りのコンビネーションなど)があります。私は、若い頃よく聞いた洋楽などが出てくると、たとえ疲れ切っていても、もう一度パワーが湧いてくるような気がします。心と体は一体なんだと感じます。
プロのインストラクターは、みんなが好きで、盛り上がるところを、確実に押さえていて、うまいタイミングでそれらを使うのです。
プロのインストラクターと新人インストラクターの違いを見てきました。分野は違えど、いろいろなところに、学ぶチャンスや素材はあるんだなあと思います。
★1 マリリー・スプレンガー(2022)『感情と社会性を育む学び(SEL) ー子どもの、今と将来が変わる』新評論.
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