2022年11月20日日曜日

採用時に教師に求められる資質

 

 このリストは、アメリカのある公立の小中一貫校の教員採用時★に使われているチェックリストです。

このリストのどれだけが、養成課程で扱われているでしょうか?

あるいは、現職研修で?

 それとも、扱うことには無理があるのでしょうか? つまり、これらは持って生まれる(か、あるいはそうでないかの)資質ばかりで、あとから努力しても身につかないものでしょうか?

 

 一方で、これらのほとんどは、教師だけでなく、まともに機能する社会人・組織人としての特徴ではないでしょうか? (その中には、校長、副校長、教育委員会の職員、政治家等も含まれます。しかし、政治家や校長等のなかには、ギヴァーの会 The Giver: 『ギヴァー』と関連のある本 134 『にげて さがして』ヨシタケシンスケ作 (thegiverisreborn.blogspot.com) の最後の方に書かれている人たちが残念ながら少なくありません!)

 その意味では、すべての生徒(人間)にもってもらいたい資質・特徴です。

 いったい、それらはどのようにしたら身につけたり、練習したりできるのでしょうか?

 

 これらのほとんどは、知識というよりは、EQ感情と社会性のスキル(SEL、ソフトスキルないし「habits of mind(思考の習慣)」★★と言われているものです。

 

★欧米の公立学校の多くは、採用が学校単位になっています。学校理事会(保護者、地域住民、教師、そして高校では生徒も、プラス校長の約10~15人ぐらいで構成)が最高意思決定機関です。ここが、校長の人選も、カリキュラムの承認等、学校を運営する際の重要事項はすべて決定します。校長は、教師の採用を含めて、日々の学校運営の最高責任者です。会社組織でいえば、理事会が株主で、校長がCEO=社長という感じです。

いい校長は、30才ぐらいで採用され、定年までいます。理事会が居続けてほしいからです。悪い校長は、任期途中でも辞めさせられます。校長は、自分の教育方針に合った教師を集め、合わない教師は排除することになります。

上記のリストは、20年以上前にデンバー郊外の小中一貫校でもらったリストを訳したものです。実際の選考には、校長ひとりでやる学校もありますし、選考委員会に任せるところもあります。後者には理事会とは別の人たちが選出されます。いまいる教師数人だけでなく、保護者、地域住民、そして生徒まで含まれることもあります。

 それほど、教育における「アカウンタビリティー」やagency, ownership, empowermentなどを大切にしている表れです。「アカウンタビリティー」については、

https://thegiverisreborn.blogspot.com/search?q=%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BCをお読みください。

 ちなみに、上のリストは『校長先生という仕事』は2005年に出た本に掲載されています。資料収集は、2000~2002年ごろにしました。図書館で借りて読んでください。校長ではない人が読んでも参考になることが満載です。以下のアマゾン書評者が書いているように。

2005919日に日本でレビュー済み

私は、非営利の"学校"も、営利"企業"と然程変わらない「組織」、という印象が強く残りました。

ですから、この本の中に度々出てくる組織改善の具体的な手法、"チームワーク""支援型リーダーシップ"は、NPOや企業の方にも参考になると思われます。特に、役員や管理職にある方々には読んでもらいたい1冊です。

地域住民や親としては、"学校"というものを良く知ることで、より良い協働の相手となれるのではないでしょうか。

将来的には、日本の学校の現状と、海外の事例を知り、市民として声を上げていくことで、未来の子供達に良い環境を残せるのではないか。そう感じました。

(小難しすぎず、興味がつのり一気に読んでしまえる本です)

 当然のことながら、校長の採用や教育長の採用にも、同じようなものがあります。しかし、日本にはないでしょう! なにせ、人事は「ブラックボックス」化していますから。その辺のことについても、『校長先生という仕事』には書いてあります。

 

★★「思考の習慣」については、来春に出版予定のStudents at the Centerの訳本の中で詳しく紹介されています。

なんと、この本のサブタイトルはpersonalized learning with habits of mindで、いま日本で脚光を浴びている(? それとも、文科省と教育委員会だけで騒いでいる?)「パーソナライズド・ラーニング」(←これは、いったい何と訳したらいいでしょうか? 「個別最適化」でないことだけは確かだと思うのですが・・・)と「思考の習慣」を扱った内容なのです! そして、後者は学校で扱えるし、扱うべきだし、身につける最大限の努力をすべきものとして捉えられています。ある意味で、「思考の習慣」を身につけずにパーソナライズド・ラーニングをしたところで意味がないという論調です(それに対して、日本でいま言われている「個別最適化」の中でこれらの要素はどのくらい含まれているでしょうか?)

 上の「採用時に教師に求められる資質」と「思考の習慣」には、かなりのオーバーラップがあると思いませんか?

 

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