教師は、ほんの少しわがままになってみてはどうか。
誤解をしないでほしいのですが、教職にあるものは、大前提として、子どもたちファーストと考えていることは、疑いのないことだと思います。子どもたちを人質にとって、好き放題やっている人も一部にはいるかもしれませんが、一般的に、大多数の教師は、真面目で、誠実で、正直で、子どもたちのために、全力を尽くそうとします。
しかし、今、学校現場で働いる教師たちは、行きすぎた自己犠牲の精神によって、背中は縮こまり、目は曇り、言葉に力がなくなっているようにも見えます。夜遅くまで働き、休日も学校に出て仕事。部活顧問は当たり前。それでも、生徒たちのためならと、時に無理をしてでも、情熱を燃やす。
そのような中で、多くの教師は、自身のケアを後回しにしている。
「教師のウエルビーイング」という言葉を時々目にするようになりました。★1 教師ウエルビーイングとは、「個人それぞれの権利・自己実現が保障されながら、身体的にも、精神的にも、社会的にも良好である状態を指します。」と定義されています。★2 同書では、「いい感じで過ごしていること」「うまくいっている状態」「幸福な状態」「充実した状態」と、とても分かりやすい言葉で言い換えられています。
この筆者らは、教師が自身のウエルビーイング向上を目指すことは、職務の一つであると考えるべきだとして、公的な職業訓練の一環として実施されるべきであるとの考えを表明しています。教員研修にウエルビーイングを組み込め!というのは、注目に値する提言だと思います。
セリグマンという人は、ウエルビーイングの構成領域を提唱しています。
1 ポジティブ感情(前向きで明るい感情、愛、喜び、感謝、安らぎ、希望、誇りなど)
2 エンゲージメント、没頭、夢中(何かに集中している状態、フローやゾーンとも言われる)
3 よい人間関係(信頼され、愛されている良好な人間関係)
4 人生の意味や意義の自覚(やりがい、自分自身を豊かにする人生の意味の追求)
5 達成感(何かを達成する感覚、熟練していく感覚)
6 バイタリティ(活力、生命力、睡眠、食事、運動など)
2 エンゲージメント、没頭、夢中(何かに集中している状態、フローやゾーンとも言われる)
3 よい人間関係(信頼され、愛されている良好な人間関係)
4 人生の意味や意義の自覚(やりがい、自分自身を豊かにする人生の意味の追求)
5 達成感(何かを達成する感覚、熟練していく感覚)
6 バイタリティ(活力、生命力、睡眠、食事、運動など)
今後は、教師のウェルビーイングの向上や維持を目的とした、学びの場がますます必要になっていくように思えてなりません。それは、日々の授業や仕事の中で、あるいは、仲間や同僚との学びの場で、意図的に取り上げていくべきことだと思います。
生徒のウェルビーイング、すなわち、生徒たちが幸福で充実した学校生活を送ることができるようになり、目を輝かせて、生き生きと学べるようになるには、教師のウェルビーイングが前提となるはずです。★3
教師として、息苦しい毎日を送っていませんか?まずは手始めに、無茶な自己犠牲の精神を捨て去り、ほんの少しだけ、自分の楽しみや生きがいにかけてみる。
そんな小さなわがままから再スタートしてみてはどうでしょうか。
★1 「生徒のウエルビーイング」については、令和3年の中教審答申「令和の日本型学校教育」の構築を目指して」に初めて登場するようです。OECD の「PISA2015 年調査国際結果報告書」は、「生徒のウエルビーイング」とは、「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な,心理的,認知的,社会的,身体的な働き( functioning )と潜在能力( capabilities )である」と定義されています。
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号) 【令和3年4月22日更新】https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm
★2 加藤聡子・山下尚子(2021)『英語教師のための自律学習者育成ガイドブック』神田外語大学出版局, pp. 83-86.
*「自律」と「自立」は全く別物です。学習者の主体的学びと言った場合には「自立」の方を使う方が相応しいかもしれません。
★3 教師の充実した働き方、自分を活かす生き方を取り上げた本が最近出版されています。
アンバー・ハーパーアンバー (著)飯村寧史 /吉田新一郎(翻訳) (2022)『教師の生き方、今こそチェック!-あなたが変われば学校が変わる』新評論.
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